2017年3月6日

木の家スクール名古屋2016 第5回:10月29日  ②渡邉晶(建築技術史研究所所長 ) 『大工道具と建築・文明・地球環境との関係を探る』

渡邉 晶氏 (建築技術史研究所所長 )

『大工道具と建築・文明・地球環境との関係を探る』

永年にわたり、
大工道具の歴史を研究されてきた渡邉先生のお話しを伺いました。
日本の大工道具を研究するうちに、
対象は世界の大工道具の歴史へと広がっていったとのこと。
歴史の中で、文化や技術は交流しながらも、
それぞれの地域で得られる木材や素材と応答しながら、
道具はそれぞれの発展を遂げたそうです。
木の建築をつくるための道具は、洋の東西を問わず、斧にはじまりました。
石を石で打ち欠いてつくった打製石器が大工道具の起源です。
約2000~4000年前、
金属の道具として斧、鑿(ノミ)、鋸(ノコギリ)、鉋(カンナ)がはじまりました。
鉋は、約2000年前、
ユーラシア大陸の西では台鉋がはじまるのですが、
大陸の東では槍鉋の時代が長く続きました。
鋸と台鉋の押し使い・引き使いの別について、
いずれも引き使いにしているのは、日本だけのようです。
鋸を引き使いで使っているのは、
針葉樹が多い地域に多くみられるとのこと。
出土した道具や古い建物の痕跡調査など、
様々な手がかりから、道具の変遷、
進化の過程を研究されてきた研究成果を、
絵巻のように見せていただくことができました。
(文責:宇野)


木の家スクール名古屋2016 第5回:10月29日  ①上野英二(オークビレッジ代表、木造建築研究所所長 )『日本の建物』    

上野英二氏  オークヴレッジ代表取締役代表 

「日本の建物は木造だと思います。」

RCや鉄骨造の設計事務所に勤務していたのですが、
奈良や京都で古寺巡礼をし、次第に木造の良さに気付き始めました。
木造=宮大工と思い込み、西岡棟梁に憧れていました。
そんな頃に飛騨家具の展示会で稲本大造氏に出会い、
喫茶店兼住宅を頼まれ、木造の設計に転換するきっかけになりました。
どんな木造を造れば良いのかと迷い、日本各地を見て歩きました。
① 百年かかって育った木は 百年つかえるものに  →永く使えるモノ造りを目指し
② お椀から建物まで       → 暮らしの様々な場面で自然素材を活かし
③ 子供一人、どんぐり一粒    → 木を一本使ったら、木を育てよう
その三つの思いを込めて、設計、素材、技術を大事にするモノ造りをしています。
今は、石場建てで木造住宅を建てたり、
補助金が出るのを活用して、飛騨の古民家の改修工事もしています。
そのように話をされながら、次々と映し出される映像は木材比率がかなり高いのですが、
軽さと、穏やかさと、気品を備え持ち、設計力の高さに魅了されました。
欠席された受講生は、是非、USBを借りて御覧ください。


2016年10月27日

木の家スクール名古屋 第4回 9/10(土)第二部 楢崎達也氏

『地方創生における林業・木材産業~地方が採るべき戦略とは~』
講師:楢崎達也氏
(NPO法人農林業経営支援センター、大手住宅メーカーの林業コンサルタント部門所属)

毎年、山へはフィールドワークに行っている木の家スクールでしたが、
今年度は、座学にて、森林について、起こっていることを俯瞰的に学ぼうということで、
NPO法人の林業経営支援センター、
また大手住宅メーカーという立場で
林業コンサルタントとして各地域に関わっておられる楢崎さんをお招きしました。

冒頭、楢崎さんが地域に入られている十津川村での魚骨状間伐の様子
(奥山の森林資源を低コストに搬出・運搬する仕組みへのチャレンジ)など、
林業の現場の映像が流された後、森林資源と建築との距離や、
それは単に木を「木材」とひとくくりにするのではなく、
「立木、原木・素材、製材品、プレカット材」など流通で形態を変えていくという捉え方
(林業はそもそも6次産業)、
田舎のスパイラルダウンや地方がとっている戦略の誤りに
ついて日々現場で感じられている点について、ご紹介いただきました。

また、後半は、現在森林が抱えている最大の課題である、
「不在地主、山林の境界の不明化」について、
これまでご自身で作成された森林所有者であるおじいさんを
ターゲットにした啓発ビデオを見せていただきながら
(ここではご紹介しがたいですが、この中でのやりとりが、また面白い!)
お話をうかがいました。

林業の営業は大変難しいという面を笑いに変えて紹介いただきながら、
森林管理サービスの方向性について提言いただいたようにも思います。

山のフィールドワークで感じる点とは異なる山の現状に触れ、
これまでとはまた一味違う視点で山を考える機会となりました。
(文責:中川)

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2016年9月10日

木の家スクール名古屋 第4回 9/10(土)第一部 佐藤義信氏

佐藤義信
(KUU・KAN設計室主宰、㈱日建設計顧問)
  『先人の価値観を受け継ぐ京都迎賓館』

このタイトルでの予定でしたが、10/22に同じこの会場で
インテリア学会の講演にて、お話しが重なる可能性があるので
テーマを変更、どちらも聞いていただきたいといことで

今回のテーマは、
そうだったか、日本の建築

日本の歴史から愛国心とはなんだでスタート
日本の建築は、宮殿や城のような権力のための建築ではなく、
住まいを藝術の域まで高めた唯一の国
日本の建築の歴史から、屋根、柱、壁、建具、床とはどういものかということ、
マナーの話し、日本人の身長の変遷で、古墳時代は、明治時代よりも背が高かった
尺貫を変えながら税金を搾取してきた話し
唐破風は、日本独自のもので、ブルーノタウトは、間違えていたなど
興味深い建築と日本の歴史的にまつわる根本的な内容で前半はお話をされました

後半は、今まで設計されてきた京都迎賓館、身延山久遠寺、大森寺の具体例について解説がありました。
京都迎賓館については、大きなガラスを使用して、一番見えないところに工夫をされたことや、見えない地下の話やテロ対策など、設計にご苦労されたお話しを伺いました。
身延山久遠寺報恩閣では、特徴あるてり、むくり屋根のデザインをされたこと。
大森寺復興事業では、伝統的な木造建築の本堂を建て、建ててる最中は、非常に面白く関わられたとのことでした。

数多くの大規模な設計に携われた佐藤先生は、引き出し多く、
まだまだたくさん、経験談をお聞きしたいと思います。

京都迎賓館については、
10月23日(日)14:45~16:15
テーマ「現代和風の態様」
会場 1F0211室

にて、詳しく講演をされますので、入場無料ですので、是非、聴講されてはいかがでしょうか。

(文責 大江忍)

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2016年9月6日

木の家スクール名古屋2016 第3回:7/30(土)フィールドワーク 前半

【フィールドワーク】岐阜県中津川市
創建当時(120年前)の姿に復原された明治座の見学と解説

講師 川端 眞(川端建築計画 代表)

朝8時に名古屋工業大学に一部の受講生と学生、スタッフは集合して、バスで出発、現地にて、乗用車で集合した30台の受講生と合流しました。
明治座へは、木の家スクールでは二度目の訪問となりました。
今回は、創建当時と同じ屋根に復原された様子を見学です。
講師は、復原に携わった設計士である川端眞さんから主に限界耐力計算に基づいた、耐震補強をした経緯の説明とどうして、このような復原をすることになったかというお話しがされました。
明治座は、もともとは、石置き屋根でしたが、大正期にセメント瓦に葺き替えられ、昭和の40年代にも再度セメント瓦に葺き替えられていました。
今回は、あえて、創建当時の姿にもどすことにより、明治座への注目度を高めながら、地元の方々がより愛着をもって村のシンボルとして大切に受け継いでいく仕掛けとして、あえて、メンテナンスの大変な板葺を選択する経緯となりました。
屋根の板葺は、クリとサワラを使っており、これから、地元の山とのつながりを深く持ちながら、将来に渡って、地元でメンテナンスができるように、早速、屋根板の募金活動も始められておりました。
また、耐震補強というと昨今では、伝統木造に金物だらけの補強金物をつけてしまって、建物の本来の機能まで制限してしまうような姿をまのあたりにして、
そういうことだけは避けたいという村の方々の意志を尊重して、なるべく目立たないように、しかし、裏付けのある耐震補強を施工することとなり、見事にそれが実現しました。
管理人の方から、地元の熱い思いや、尾張藩の山守の子孫である内木哲朗さんからもご説明をいただきました。
傾き、足元が腐っていた明治座でしたが、今回の修理により、また寿命を100年のばすことができたと信じたいです。
講演のあと、地元のほう葉寿司をランチに頂きながら、明治座の今回の復原の経緯をまとめた記録映画の映像も時間の許すかぎり鑑賞をいたしました。
そのあと、次の見学地へと移動をしました。(文責 大江忍)
IMG_5323名工大に集合

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明治座内部見学IMG_5422

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内木哲朗氏による解説IMG_5401

川端眞氏による耐震設計の説明IMG_5393

管理人さんによる説明IMG_5360

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