2015年10月22日

木の家スクール名古屋2015 見学会:10/17(土) 三重県尾鷲市の速水林業 報告 午前の部 

今回、木の家スクールとしては、10年以上経て、
二度目の三重県尾鷲市の速水林業さんへ
「人工林の環境管理(FSC認証林)と合理化された高品質ヒノキ育林」
の見学会でした。

10/17(土)朝6:50に、
名古屋工業大学に受講生と学生含めて約60名が集合し、
バスでの移動(一部自家用車)でした。
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尾鷲について、打ち合わせ間違いから、到着地点を間違えて、
移動に手間取りましたが、
無事に速水林業の大田賀山林に到着いたしました。
あいにく雨が降ってまいりましたが、
テント屋根の明るいセミナーハウスにて、
速水林業代表、株式会社森林再生システム代表取締役の
速水亨(はやみ とおる)氏から、
パワーポイントによる講義を頂きました。
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講義のテーマは、「日本林業と速水林業 2015」で、
日本の林業の現状から世界の林業の現状まで、
実際に海外まで視察に行かれてのお話しを伺いました。

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フランスの森林の現状についてご説明を伺いました

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黒い森で有名なドイツの森林のお話しでした
 Schwarzwald

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速水林業の森林は管理されて、保水力があり、澄んだ水が流れる
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また、速水林業は、FSC認証を受けた森林ということで、
日本の大半の人工林との違いについてのご説明を受けました。
緑色のグラフが速水林業さんの山の状態で
木材の年数が古いものから若いものまである

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また、海外においては、森がなくなることは、
遠くの森から燃料である槇を毎日運び続ける役目を
子供や女性のような弱者の役割として、
人権を奪うことにも繋がっていることであり、
生命の危機に直面しているという
実態であることを学びました。
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速水林業のヒノキは、年輪幅が一定できれいな円となっている
熱心に傾聴して聞き入る受講者でした

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奇跡的に雨もあがり、外で各自が持参したお弁当を頂き、昼の休憩です
速水さんに入れて頂いた珈琲を皆さんでいただきました
第二部は、午後からの実際の山の見学の話をリポートします

(文責 緑の列島ネットワーク 理事長 大江忍)


2015年10月11日

木の家スクール名古屋2015 第2回:6/20(土) 第2部

北海道Styleの木の家をデザインする

講師:西條 正幸 氏 (ビオプラス西條デザイン 代表)

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北海道札幌市で建築デザイン事務所を主宰する西條正幸さん。

かつては内装施工業者として店舗づくりをされていた西條さんが、天然素材を活かした『自然派住宅』の新築・リフォーム業に転身されることになったきっかけ。それは今から20年ほど前のこと。当時まだ幼かったお嬢さんのアトピーと、そのころ考えていた自宅兼事務所の新築計画でした。

当時暮らしていた家は、いわゆる新建材で包まれたもの。その建材が人の健康に害を与えるということを、自宅の計画をきっかけに知り、とても大きな衝撃を受けたと言います。そのころアトピー対策で食事制限などをしていたお嬢さんのことも重なって、「これからは安全で健康に暮らせる家をつくるお手伝いをしていこう!」と決心されました。

“安全で健康的な素材を使って家をつくること”が、同時に“環境にも優しいことである”という思いから、できるだけ身近で調達できる、環境に配慮した建材を探し、無ければ特注でつくるというのが西條流。カラマツの構造材や、道産のトドマツの繊維でつくるウッドファイバー断熱材。ホタテの殻を活用した壁塗り材をつくったり、地元の窯業者に焼かせて凍害に強いタイルをつくるなど。どれも健康と環境に優しいだけではなく、素材としての魅力があるものを集め、『自然派住宅づくり』の実践が始まりました。

西條さんのその他の取り組みは多岐にわたります。

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環境共生グッズの販売。共同菜園が有るエコビレッジの建設や、かつて大量に建てられた北方圏型規格住宅のリノベーション、「三角屋根プロジェクト」。書籍を執筆し、菜園づくりのワークショップを開いたり・・・。

穏やかで温厚なお人柄から受ける印象にあって、幅広く行動的な“住まいづくり”のお話は、とても興味深いものでした。

(文:丹羽明人)


木の家スクール名古屋2015 第2回:6/20(土) 第1部

耐震⇒温熱⇒仕上・設備 住宅リフォームの実践

講師:米谷良章(米谷良章設計工房 代表)


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大学を卒業して就職した設計事務所が『民家型構法』に取り組む現代計画研究所。地域材と地域の大工でつくる公営住宅の設計をはじめ、団地の改修計画などの仕事が建築のスタートラインでした。

住民参加型の団地改修を通して、『設計』というよりはむしろコミュニティーづくりに取り組んできたという米谷さん。住民の声を改修に活かすことに力を注ぎ、また、住みながら経済的に、かつ効果的な温熱改修をする工法を摸索するなど、団地改修の質と効率と経済性を追求する経験が、今の設計スタンス『米谷流』の基礎を培いました。

住宅が余りはじめている昨今。“高度経済成長期に大量に建てられてきた住宅と、どのように向き合っていくのか”といったことが、これからの大きなテーマの一つだと米谷さんは言います。細い柱で頼り無い構造、不十分な断熱性能といった、やや粗悪な建物をどのようにリフォームして活かしていくのか。そこで発揮できる設計事務所の職能とはどんなところにあるのかを、リフォームの事例を見ながらお話し頂きました。

リフォームで大切なことは、まずその建物を詳細に調査し、多面的に状況を把握すること。とかく住まい手はキッチンのリニューアルや壁紙の模様替えなどの、表面的なことにしか目が向いておらず、肝心な「耐震性能」や「温熱性能」、又は「機能性」が損なわれていないか、といった視点を欠いていることがほとんどです。そこで、住まい手と家を“全体的に把握”して、今、どのようなリフォームをするべきなのかを提案していきます。

『リフォームの計画』とは、

  1. 改修後の暮らし方を把握する
  2. 改修の優先順位を決める
  3. 改修後の性能目標を共有する
  4. 複数の性能向上部位を重ねる
  5. 温熱(省エネ)改修はパッシブデザインから始める

ということ。

あと何年住むつもりでいるのか。劣っている耐震性をどの程度補強して高めていくのか。また、劣化の程度はどうか。冬暖かく夏涼しく、そしてどの程度省エネを実現したいのか。そもそも、今のライフスタイルに間取りが合っているのかどうかなど、様々な角度から検証し、予算とのバランスを計りながら、より効果的なリフォームの計画を提案し、理解を得て進めていきます。

また、リフォーム後の家が計画通りの性能を発揮しているのかを確認するために、その後一年のデータ取りをしていくことも大変重要だと、米谷さんは言います。

 

経済の勢いに乗って造り放たれてきた大量の住宅も、適正に手を加えることによって、再び“世に活きるもの”になる。

リフォームの意義を再認識することができた講義でした。

(文:丹羽明人)

 

 


2015年6月3日

木の家スクール名古屋2015 第1回:5/16(土) 第2部

京町家を残すために  —不動産業からの実践—

講師:西村 孝平 氏(株式会社八清 代表取締役社長)

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いま、空家の増加が全国的な社会問題となっているが、京都でも『町家』の空家化が加速的に進んでいる。かつて有った約48000軒の町家が、この十数年で2割消失し、さらに5000軒が空家となって、災害時の安全性や防犯、衛生面などの問題は増々深刻化している。

そんな中、京都で不動産業を営む株式会社八清の西村孝平氏は、それらの“負の財産”を、ずば抜けた“先見の明”と“アイデア力”で“京の魅力”にあふれるビンテージ商品に変えた。経済を興し、町の景観を保ち、観光に繋げ、地区界隈に息を吹き込むことで、商いと社会貢献の両立を実践している。

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西村氏が古家物件に特化することになったきっかけは、平成11年に手掛けた古屋の改装販売。瞬く間に完売した経験から、「これは商売になる!」と直感した。

まだ『リノベーション』という言葉が無い当時に、ただの中古物件ではなく新築でもない全改装物件を『リストック住宅』と名付けて商標登録し、その後の『町並み100選』の奨励賞受賞を弾みに、町家の再生は本格的に動き出した。

西村氏が大切にする価値観は“経年美”。『履き古されたジーンズ』や、電波時計には敵わない精度だけど、手作り感に溢れる『機械仕掛けの腕時計』など。人の手が触れ、時間を経て深まる味わい。二つと無いものの魅力を評価するということ。

家の平均寿命が諸外国に比べて極端に短い日本。築30年で『家』の評価がゼロになってしまう不動産界にあって、“経年美”という価値感を見いだしたことはまさに画期的だ。

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『1950年以前の既存不適格物件』、『道路狭小の車侵入不可物件』、『基準法上再建築不可物件』など、既成概念では不動産的価値ゼロ。しかし、そんな物件を町家の風情を活かした貸家『京貸家』として改装したり、旅館『京宿屋』として再生し、旅館物件として、あるいは収益型のセカンドハウスとして売り出した。その他、シェアハウス『京町家だんらん』や、外国人の長期滞在型宿泊施設『京町家レジデンスイン』、月貸し貸家『京町家マンスリー』などの商品を生み出すなど、それぞれの立地や建物の規模を活かす多様な再生メニューは、どれも魅力的なものばかり。

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その物件こそが持つ“潜在的な良さ”を引き出すことで『空町家』の流通を興す大きなムーブメントは行政をも動かし、『空家条例』や『空家相談員』などをつくるに至った。また、金融界も古屋の再生物件を対象にした融資商品をつくるなど、これまでのスクラップ&ビルドとは違う、“ストック・再生”の流れを確かなものにしつつある。

 

(文:丹羽明人)


2015年5月30日

木の家スクール名古屋2015 第1回:5/16(土) 第1部

尾道式空き家再生術

講師:豊田 雅子 氏(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)

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今年は75名もの皆さんから受講申し込みがありました。初回は56名の受講生とともに、木造ストックについて考える機会を得ました。

 

尾道に生まれ育った雅子さんは、若い頃は世界に憧れ、語学が好きで、バックパッカーで世界各地へ飛び出し、ついに大阪で海外旅行の添乗員の職に付き、旅だらけの20代を過ごしました。ヨーロッパの歴史や町並み、地産地消を大事にする暮らしぶり、地元の石や土を使った建物を修復し、大切に使い続ける姿に、「日本の町づくりはおかしいよね」と思い始めたそうです。

親の看護で再び尾道に戻る事になり、25年間空き家だった通称ガウディハウスを買取り、修理の状況を毎日ブログにUPすると、空き家を求める問い合せが殺到し、空き家再生の市民団体を立ち上げることになりました。

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それからの活動が凄まじい。尾道空き家会議、空き家再生法作戦会議、再生チャリティイベントなど、各種のイベントを毎月開き、地域の人達の理解を深めていきます。その勢いはとどまるところを知らず、建物探訪、再生現場見学など、各種企画に参加するよそ者、若者の新鮮な目線に、地元の人達が「自らの町の見え方が変わった」と、言うようになったそうです。

2009年からは尾道市からの依頼があり、『尾道空き家バンク』を立ち上げることになります。汲取り便所、石段、ムカデ、蛇、蚊など、路地裏の暮らしの大変さ、不便さを受け入れる人に定住を促進し、支援をする組織です。移住希望者は800人を超え、建物提供も150件。そのうち80件の契約が成立しています。若者の仕事、お金を稼ぐ仕組みをゼロからつくり上げる空き家再生プロジェクト事務局長は、『空き家は宝の山』と言い切る!

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事務局長豊田さんのお話を伺い、移住を考え始める受講生がいるに違いないと確信しました。

(文:寺川千佳子)


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