2020年09月16日

木の家スクール名古屋2020 第3回:9月12日(土)②

子どもたちと木の建築

富田 玲子 氏、関 郁代 氏(象設計集団代表)

休憩を挟んで「子どもたちと木の建築」とのタイトルで富田玲子さん、関郁代さんに保育園・幼稚園・こども園の設計に関する講演を頂きました。

象設計集団は1971年から活動を始め、いろいろな地域でプロジェクトをすすめているが、近年は子供たちと木の建築が多いそうです。保育園・幼稚園・こども園の設計で大切にしていることは共通で、1.ここにしかない、2.五感に訴える、3.不思議、4.内と外、5.自然と共にある、6.いろいろな場所の6つ。これらを多くの設計事例の図面と写真で紹介して頂きました。

最初に紹介頂いた事例の美濃保育園子育て支援棟(美濃市)では「1.ここにしかない」ものとして、美濃和紙や予定地の高低差を利用して、上下階の両方が外につながっているように設計したことが紹介されました。「2.五感に訴える」では、元々生えていた木を一本も切らないという園長さん思いをくみ取り、子どもが喜ぶツリーハウスのような小さな建物の美空野保育園(鹿嶋市)の事例など。また、すべての建物にちょっとした「3.不思議」を隠しておき、後年思い起こさせることが、建築とは単なる箱ではなく居住者の思い出の鍵になれる存在に出来ることが紹介されました。「4.内と外、5.自然と共にある、6.いろいろな場所」は、半屋外空間のような連続した場をつくり、自然の移り変わりを感じながら楽しい暮らしの場とすることを意識して設計されていることを感じました。

紹介される建物のすべてが型にはまった箱形の建物ではなく、お施主さんの意図をくみ取り、何度も協議を重ねて入念に計画したことが伝わってくる事例でした。講演の中に何度か「ここちよい暮らしの場」というキーワードが出てきたことが印象的です。RC5階建てラーメン構造のうらら保育園(葛飾区)でも、路地は大切なコミュニティーの場と捉え、立体路地のような計画で、狭くて暗い場所もあえて子どもたちの環境として必要と考えるなど、園とは子どもの一生を左右すると考える思想が伝わりました。

聴講者からの質問は、独特の色使いの決定方法や、自然があまり残っていない都会での設計の工夫、単純な設計としない理由など多くの質問が寄せられました。

最後に、象設計集団の変わらないことは、変な人の集まりであること、変わったことは真面目な人が増えたこと、不思議な人があつまってOne Teamになる良さ、楽しさを信じて仕事をいつまでも続けたいとの言葉で本日の講演が終了しました。

(文:清水)