2018年12月26日

木の家スクール名古屋2018 第4回:10月26日(土)①

フィールドワーク①:鄙茅(ひなかや)と木の建築

講師:前田伸治(暮らし十職一級建築士事務所・所長)

10月27日、秋晴れのもと、木の家スクールのフィールドワークとして、三重県多度町の料理店「鄙茅(ひなかや)」と伊勢のおはらい町、おかげ横丁を見学に訪れました。まずは「鄙茅(ひなかや)」からご紹介します。

「鄙茅」は、宮川を見下ろす高台に位置する茅葺屋根の料理店です。道路から敷地に入ると、山々を背景として寄棟茅葺きの建物が茶畑のなかに佇んでいます。まさに、絵にかきたくなるような懐かしく、美しい風景です。これが新築で、数年前に建築されたとはにわかに信じられないようなはまりようです。設計者の前田伸治さんにご案内をいただきながら、建物を見学させていただき、レクチャーもいただきました。

 

大きくうねる宮川の絶景を望むこの場所に、江戸時代からあったかのような姿で堂々と構える「鄙茅」ですが、何年もかけて土地探しを行い、数年をかけて設計し、腕利きの職人によって一から造られるなど、大変な御苦労をされたとのことです。茅葺きのお店をつくりたいというオーナーの夢をかなえるため、都市計画区域外(茅葺きが建築可能)で、かつ景観が美しく、宮川が見え、広い土地を探すということは大変だったようです。

前田さんは、中村昌生さんに師事され、伊勢のおはらい町の建物も多く手がけられるなど、伝統的な建築手法に精通しながら、現代的な解釈と魅力にあふれた設計をされてきています。今回の鄙茅も、バランスのよい美しい寄棟茅葺のプロポーションを守りながら、さまざまなチャレンジをされています。

南側の茅葺き屋根を大胆にカットし、開口部をダイナミックにとることで、宮川と山の風景を堪能できるようになっています。また、茅葺屋根の小屋組みを、古民家に多くみられるサス形式ではなく、和小屋とし、これに細い磨き丸太を扇垂木状に掛けています。下から見あげると、小屋裏はとても軽快で美しい空間となっています。

左官の磨き仕上げをかまどやレンジフードなどに用いることで、和でありながら新鮮な雰囲気も感じられます。宮川に面して張り出してつくられた座敷も3面が開放されて気持ちのいい空間となっています。建物の宮川に面する側は盛り土として一段高くなっています。これは、宮川を望む際に、より上方から、クリアに見せる為の工夫で、見事に功を奏しています。伝統を踏襲しながら、随所に風景や空間を際立たせる工夫やユニークなアイデアが盛り込まれており、大変勉強になりました。

 

 

 

また、料理も大変手が込んでおり、季節感にあふれ、自然を感じられる大変美味しいものでした。お伊勢参りのぜひお立ち寄りください。おすすめです!


(文責:宇野勇治)