中大規模木造に用いる製材を利用した工法への取り組み
講師:河本 和義 氏(NPO法人 WOOD AC・代表)
皆さま、こんにちは。今年も木の家スクール名古屋が始まりました。2019年の第1回目は、河本和義さん(WOOD AC)、神谷忠弘さん(岡崎シロアリ技研)を講師に迎え、スタートです。
河本さんの講演は、「中規模木造に用いる製材を利用した工法開発への取り組み」というタイトルで、ご自身の自己紹介から始まり、高品質な木造建物を多く建設してもらうために作成した「低コストマニュアル」の紹介、集成材ではなく製材を利用した大きな柱スパン工法の紹介や開発苦労話、普段から意識している構造設計のポイントなどを分かりやすく講演頂きました。
自己紹介では、恩師である村上雅英先生や、稲山正弘先生をはじめとする諸先生方との出会い、日本の山をよみがえらせるという目標をもってWOOD ACの設立に参加したことや、村上先生の言葉「皆と同じことをすれば、競争相手が多く苦労します。木質構造は競争相手が少なく楽しい人生がおくれます。」という言葉に込められた意味などが語られ、徐々に会場が温められていきました。
低コストマニュアル事例集の紹介では、床面積が少し大きな建物を設計する際、意匠設計者が「木造化するとコストが高くなる」というイメージを強く持つことから、木材を無駄なく使う建築物とすることで低コスト化をはかり、木造の設計施工増に繋げるポイントが示されました。木造化できるか否かの一番のポイントは梁スパンのチェックであり、製材を使いたい場合は4~6m程度の梁スパンで住宅用のプレカットが使用できるため低コストとなること、6m以上は集成材やトラスで対応出来るがプレカットが使えなくなったりすることで高コストとなりやすいそうです。その他、低コストにつながる設計のポイントとして、大きな梁スパンの空間を設計する場合、スパンの中央に柱を設置することは難しくても、スパンの端っこに柱1本を設置するだけで大きな梁断面を小さくすることができ、低コスト化に繋がるなど、実務者として数多くの構造設計を経験したことによる貴重な意見を聞くことができました。
製材を利用した工法の紹介では、岐阜県木材協同組合連合会を主体として開発した木造平行弦トラスなどが紹介されました。製材を利用した12mの梁スパンを実現するため、多くの構造・防耐火実験を行ったこと、トラスを設計する上のポイントはクリープであることがわかり、2年間も継続した実験を行い、より高い安全性を確認していることが紹介されました。また、ヒノキ製材を用いた門型ラーメン工法の開発を行うなど、コストという言葉を意識した商品開発を行っていることを強く感じた講演となりました。
最後に、河本さんが日頃より感じている構造設計の考え方として、建築基準法に示されている基準とは最低限のものであり、より高い安全性を確保するためにも設計で見落としがちな検討項目をチェックする必要があること、地震に対する検討に加えて数年毎に確実に来る可能性の高い風に関する検討も積極的に行っていくことが大事であることが語られて、講演を締めくくられました。
(文責:清水)