2021年2月14日

公開:記念誌「木の家スクール名古屋18年間のあゆみ」

2003 年に始まりました「木の家スクール名古屋」は、今年度(2020年度)をもって一旦終了いたします。

閉講にあたり、お世話になった講師の皆様、受講生の皆様、そしてスタッフ、学生との18年間を振り返る記念誌「緑の列島 木の家スクール名古屋の18年間のあゆみ 2003-2020」をこの度作成いたしました。

関係者の皆様全員に記念誌をお届けしたいところですが、この18年間でお世話になった方々は、のべ1000人を越えました。一人一人お届けできないことから、ここにデジタル版を公開させていただきます。お気付きの点やご感想などお寄せ頂ければ幸いです。

→ https://kinoieschool.wixsite.com/nagoya

改めて、これまでご参加いただいた皆様と、応援して下さった皆様に、心より感謝申し上げます。
(スタッフ一同)

2021年1月27日

木の家スクール名古屋2020 記念特別講演 1月23日(土)

庭園の鑑賞について -視点、方角などの差異から読み解く-

重森千靑(作庭家・庭園史研究家)

新型コロナウイルス感染症拡大が続き、木の家スクール名古屋の愛知県も緊急事態宣言下の中、重森千靑さん(作庭家・庭園史研究家)を講師に迎え「庭園の鑑賞について-視点、方角などの差異から読み解く-」と題したオンラインによる開催となりました。今回の講演に参加した人は、おそらく全員が「早く旅行に行きたい!!!」と強く感じたことでしょう。それほど、重森さんの話は魅力的な内容でした。
講演はまず、庭園が造られ始めた経緯から始まりました。庭園とは、建物を作る際に必ず付いてくる外部空間であり平安時代の公家文化による浄土式庭園、室町時代になると枯山水が登場するなど、庭園の歴史が簡単に紹介されました。そして、どの庭園でも鑑賞する際の最大のポイントは、見て楽しむことだそうです。鑑賞者の視点・方向の違いによって庭園の見え方はずいぶん違い、設計者が想定したベストの視点だけでなく、意図しない視点からもその美しさを引き出すことができるし、それが楽しいとおっしゃっていました。一方向から見ているだけでなく、左右に視線を向けたり上下させたりするのが良いと言われ、私の頭の中で庭園鑑賞のイメージトレーニングが始まりました。
視点以外にも、季節・天候、時間による変化で見え方が大きく変わること、例えば落葉樹の葉が落ちる冬などは、それまで樹木によって隠れていた山の稜線が出てくるなど、同じ視点でも変化が生じると言われ、納得です。重森さんは冬の飾りが無い庭園が好きで、全体を捉えることができるからだそうです。重森さん好きな毛越寺(岩手県)などの写真が紹介されてゆき、話題は桂離宮(京都)に移っていきました。
鑑賞するための要素をすべて網羅した庭園は桂離宮で、船から、回遊路から、建物内からの視点や、月夜の時間帯に観ても美しいなど、とっても考えられた配置だそうです。更に茶室などに入った際、周りの風景が見えなくても水音だけを聞かせ、音を楽しむという発想まであるので、是非一度訪れて欲しいとのことでした。
庭造りの最も中心的な題材は自然づくり、自然の豊かな山水風景が庭造りの大きな原動力となっているそうです。最古の造園書、作庭記には「自然の美しさに思いをはせて作りなさい」とあり、真似では無く思いをはせることが大事なのだと。最後に自分のお気に入りの庭園を訪れ、庭園というものが面白い姿を見せてくれることを見つけて欲しいという言葉で講演を終えて頂きました。本当にマスクを取って、自由に旅行に行ける日が一日でも早く戻ってきて欲しいと願わずにはいられない講演となりました。
聴講者からの質問は、建物と庭の設計ではどちらが先なのか、桂離宮の庭園設計者は誰なのか、庭園の樹木などが成長した際の建物との関係性をどうしたらよいのか、重森三玲さんのお勧め作品は何かなど多くの興味深い質問が寄せられ、重森さんが一つずつ丁寧に答えてくださいました。

(文責 清水秀丸)


2020年9月16日

木の家スクール名古屋2020 第3回:9月12日(土)②

子どもたちと木の建築

富田 玲子 氏、関 郁代 氏(象設計集団代表)

休憩を挟んで「子どもたちと木の建築」とのタイトルで富田玲子さん、関郁代さんに保育園・幼稚園・こども園の設計に関する講演を頂きました。

象設計集団は1971年から活動を始め、いろいろな地域でプロジェクトをすすめているが、近年は子供たちと木の建築が多いそうです。保育園・幼稚園・こども園の設計で大切にしていることは共通で、1.ここにしかない、2.五感に訴える、3.不思議、4.内と外、5.自然と共にある、6.いろいろな場所の6つ。これらを多くの設計事例の図面と写真で紹介して頂きました。

最初に紹介頂いた事例の美濃保育園子育て支援棟(美濃市)では「1.ここにしかない」ものとして、美濃和紙や予定地の高低差を利用して、上下階の両方が外につながっているように設計したことが紹介されました。「2.五感に訴える」では、元々生えていた木を一本も切らないという園長さん思いをくみ取り、子どもが喜ぶツリーハウスのような小さな建物の美空野保育園(鹿嶋市)の事例など。また、すべての建物にちょっとした「3.不思議」を隠しておき、後年思い起こさせることが、建築とは単なる箱ではなく居住者の思い出の鍵になれる存在に出来ることが紹介されました。「4.内と外、5.自然と共にある、6.いろいろな場所」は、半屋外空間のような連続した場をつくり、自然の移り変わりを感じながら楽しい暮らしの場とすることを意識して設計されていることを感じました。

紹介される建物のすべてが型にはまった箱形の建物ではなく、お施主さんの意図をくみ取り、何度も協議を重ねて入念に計画したことが伝わってくる事例でした。講演の中に何度か「ここちよい暮らしの場」というキーワードが出てきたことが印象的です。RC5階建てラーメン構造のうらら保育園(葛飾区)でも、路地は大切なコミュニティーの場と捉え、立体路地のような計画で、狭くて暗い場所もあえて子どもたちの環境として必要と考えるなど、園とは子どもの一生を左右すると考える思想が伝わりました。

聴講者からの質問は、独特の色使いの決定方法や、自然があまり残っていない都会での設計の工夫、単純な設計としない理由など多くの質問が寄せられました。

最後に、象設計集団の変わらないことは、変な人の集まりであること、変わったことは真面目な人が増えたこと、不思議な人があつまってOne Teamになる良さ、楽しさを信じて仕事をいつまでも続けたいとの言葉で本日の講演が終了しました。

(文:清水)


木の家スクール名古屋2020 第3回:9月12日(土)①

古建築修理を通して思うこと

鳴海 祥博 氏(文化財建造物保存修理技術者)

皆様、大変お待たせしました。いよいよ木の家スクール名古屋2020が始まりました。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、第1回、第2回は中止となりましたが、Zoomを使ってのオンライン開催に変更し、講演者の先生方、聴講者双方とも慣れない環境下で、なんとか3回目から実施できました。今回は、鳴海祥博さん(文化財建造物保存修理技術者)、富田玲子さん、関郁代さん(象設計集団代表)を講師に迎えました。

最初は、「古建築修理を通して思うこと」とのタイトルで鳴海祥博さんの講演です。鳴海さんは、和歌山を中心に多くの文化財建造物の保存修理に関わっており全国に200名ほどしかいない文化庁が承認する文化財建造物保存修理技術者です。

近年、文化財と称される建物が増えていますが技術者は増えていないことが問題であり、文化財修理の世界も変わらないといけないが、保存と修理の理念は変わらないという言葉が印象的でした。最近では、歴史的建造物という文化財には指定されていないが、歴史的景観に寄与し・造形の規範となっており、再現することが容易ではない建物も大切とする社会となってきています。この社会変化は悪くないのですが、保存、保護の概念がわからなくなってきている。例えば、「保護と保存と保全と維持と活用の違いは何か?」など、鳴海さんは言葉を大切にお仕事されていることが紹介されました。一般的な改修工事との大きな違いは、歴史を残し次世代に伝えるという意識の目標があることだが、修理の一面は「破壊」であると理解する必要があるとの説明には、気づかされることが多くありました。また、建物の各部材が「本物」であるからこそ価値があり、経年劣化も破損ではなく歴史を経た風格であるとの発言には歴史的建造物に対する熱い思いが見えました。普段まわりにある、ガラス、タイル、陶器、ペンキ、絨毯、カーテンなどごく一般的な大量生産品にも希少なものがあり、価値を見つけて欲しいとの言葉には考えさせられるものがありました。講演の後半は、近年関わってこられた歴史的建造物の修理実例が紹介されました。

Zoomのチャット機能を使った質疑では、実例写真として紹介頂いた建物の構造に関する質問や、部材を交換する際の基準などを知りたいとの声が寄せられました。鳴海さんの基本的な考えでは、歴史を守ろうと思ったら部材をすべて新材に取り替えるという選択肢はなく、可能な限り部材を直して使いたいことや、壁や塗装も剥がさずに残せるなど、修理も進化しているので、若い技術者は挑戦と思考を続けて欲しいという要望で講演は終了しました。

(文:清水)


2020年8月10日

緑の列島 木の家スクール名古屋2020【追加募集分受付終了8/24】

皆様、お元気でお過ごしでしょうか。

さて、ご連絡が大変遅くなりましたが、第3回(9/12)と記念特別公演(1/23)をオンラインで開催することといたしました。

既にお申込みいただいた方には事前にメールをいたしましたが、受講料を無料に変更させていただきましたので、改めてご連絡いたします(別途申込みは不要です)。

また、追加で20名限定(先着順)でオンライン受講生を募集いたします。

申込み方法など詳細はこちらのサイトをご覧ください。

https://kinoieschool.wixsite.com/nagoya

お申込みをお待ちしております。

文責:田中


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