緑の列島 木の家スクール名古屋2011
第一回
高橋昌巳氏
二コマ目は、 “分離発注 建て主直営という家づくり”のテーマで、
シティー環境建築設計の高橋昌巳さんにお話を伺いました。
家を一軒建てるには、基礎、大工、左官、瓦、水道、電気などなど、
十数種の職人の協力が必要です。
今は工務店や建設会社に頼んで家を建ててもらう方式=一括請負方式が主流ですが、
その他には、自分で建てる自力建設方式と
建て主が個々の職人に仕事を発注する分離発注方式があります。
家の建設に参加したくとも自力建設には時間も体力も知識も必要。
ならば、設計者が協力することで、住まい手も家づくりに参加できるのでは?と、
分離発注方式をはじめたとのことですが、設計者側の仕事量は相当なようです。
高橋さんが実現したい家づくりの仕組みとは、
① 見えるようにすること
:お金の流れ、材料、作業工程、職人の顔、応援体制
② 言えるようにすること
:使いたい素材、参加して欲しい職人、費用分配、工期
③ 公平に責任を負担すること
:建て主は現場確認と維持管理、設計者は安全性と景観意識、職人は使用素材と納まり
④ 時間と手間をかけられること
:ゆっくり、丁寧に、楽しみながら、記憶に残る出来事となるように、
⑤ 同じ目標に向かい
:依頼する、依頼される意識が目標を共有するチームとなり
⑥ 経験をひろげていけること
:知り合いや同業者に家づくりを公開し、完成をともに味わい、手入れを応援する
そんな家づくりをマネージする設計事務所は、各職方が見積りをし易くする為に数量の拾い出しから、残材処分費、コーキング、運搬、養生費などを誰がやり、いくらかかるかをこと細かく見積る。それでも見積り落とし部分は、設計者が自ら施工することもあると。
そこまで苦労して分離発注方式にこだわるのは、職人の知恵と技術を引き出し、新しいことにチャレンジができる環境がこの方式には残されているからだろうと、「人財産」を築き上げつづける高橋さんの満足げな顔を見て納得しました。
予告:伝統的工法は住宅瑕疵担保法には馴染まない事から、GIOとシティ設計事務所は包括3条認定を結び、伝統的仕様での納まりを可能にしたそうです。その納まり図面集を木の家スクールに提供してくださるので、HPで見られるようにします。乞うご期待。
(寺川)