2011年12月13日

緑の列島 木の家スクール富山2011 第3回 省エネルギー住宅の設計法

前回は、外部研修(実験見学)に行ってきましたが、今回はまたいつもの会場で第3回の講義を開催しました。今回は、住環境に関する講義です。
環境問題や資源枯渇などの観点で省エネというキーワードは以前から言われていましたが、3・11東日本大震災以降、より省エネ・節電への意識が高まりました。
設計者・施工者も、今まで以上にそういう問題に貢献できる家づくりを考えていかなければなりません。
今回の講師は、住まいと環境社代表であり、岐阜県立森林文化アカデミー非常勤講師や自立循環型住宅研究会の主宰をしておられる野池政宏先生です。
野池先生には、省エネルギー住宅の設計法と題して講義をしていただきました。
お話しいただいた内容のテーマは、3つ。
1、温熱指標の意味を理解し、プレゼンできるようになる。
2、パッシブデザインの基礎を学ぶ。
3、省エネルギー住宅の評価を整理する。
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まずは、1つめの温熱指標。
温熱を表す値などはたくさんあるのだが、最低限知っておきたい数値について解説をしていただきました。
R値(熱貫流抵抗)・U値(熱貫流率)・Q値(熱損失係数)など。
数式だけ見るとややこしそうでも、単位を読み取ればその数値が表している意味が理解しやすくなります。
これらの数値を計算すると・・・
W数が分かれば、あとは時間を設定すれば、熱源別の消費量や金額が出せる!
U値はもちろん、Q値やμ値を計算してお金にからめたプレゼンができる!
Q値を求めれば、室温の差(快適性)もプレゼンできる!
こういう風にプレゼンできると、新築時やリフォーム時のお施主様との打合わせにとても役立つ。
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2つめは、パッシブデザイン。
パッシブデザインとは、建物の周りにある自然エネルギーを最大限に活用・調節できるようにして高質な室内環境を得ながら、省エネルギーに寄与できるよう建物を設計すること。
その対象となる設計要素としては、昼光利用・自然風利用・日射遮蔽・断熱・日射熱利用(パッシブソーラー)がある。これらをいかに定量的に徳かが重要であり、大きな課題。
昼光利用することにより、照明エネルギー・暖房エネルギーを減らす。ポイントは、建物の配置計画と多面採光を考慮する。
自然風利用で、冷房エネルギーの削減。卓越風向・ウインドウキャッチャー・立体通風を考えることがポイント。
日射遮蔽することによっても、冷房エネルギーを減らす。窓の内外で遮蔽するやり方があるが、重要なのは窓の外側で遮蔽すること。
断熱により、暖房エネルギーの削減。Q値=2を目標に断熱を考える。
パッシブソーラーで、暖房エネルギーをさらに削減し、そして快適性も向上する。ポイントは、集熱・蓄熱・断熱。問題は、その費用対効果をいかに伝えるか?
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最後の3つめは、省エネルギー住宅の評価を整理。
省エネルギー・節電を目指す住宅として、3つの柱がある。ひとつは、建物のあり方としてパッシブデザインを行う。
そして、自然エネルギー利用設備(太陽光発電など)を導入する。また、高効率の設備・家電製品を導入する。
一般的によく言われているのは太陽光発電なのだが、この3つのうちまず何からやれば良いのか?を考えてみる必要がある。
これを、長いスパン(60年)で計算してみると・・・
太陽光発電は、電気代の面でとてもお得そうに聞こえるが、やはり設備投資費が非常に高価であること。30年で取り換えるも考えておかなければいけない。
それに対して、パッシブデザインは一度行うと建物の性能がずっとそのままなので、60年(30年でも)で見ると、太陽光利用よりもパッシブデザインを行う方がお得。こういう考えに基づけば、パッシブデザインは最強!ということが分かった。
コストの面でお得という他にも、太陽光利用を取り入れても快適性にはつながらないが、パッシブデザインでは快適性も得られるので、設備投資するならまずはパッシブデザインを!
それに加えて太陽光利用もするというのは、もちろん省エネに貢献できる。
あとは、住まい方としてこう高率な設備・家電を導入したり、家族で無駄な電気を使わない工夫すること。

この辺の温熱環境に関することは、温度や湿度など身近に感じながら、データや資料が少なかったためなかなか分かりにくい分野ではありましたが、このように数値化されてきたので、これを使って快適かつ省エネな家づくりを考えるときがきたようです。
最後に、数値を考えるポイントして・・・、Q値を下げるとμ値も下げないとダメ!このバランスが重要である、とのこと。
受講生の皆さん、いつもより一生懸命にメモ書きしておられたのが印象的でした。

緑の列島木の家スクール富山事務局 草野鉄男