2012年11月16日

緑の列島 木の家スクール富山2012 第2回 木構造レベルアップ講座Ⅰ

緑の列島木の家スクール富山、2012年度の第2回講義を開催しました。
今回は、木構造レベルアップ講座Ⅰ。
講師は、富山大学芸術文化学部学部長の秦正徳先生。専門分野は、木質構造学(木造建築物の構造計算)です。
秦先生には、木造の構造計算の基本として、計算でどんなことをチェックしているのかなど、話をしていただきました。
具体的に書くと長くなりますので、内容のキーワードをご紹介したいと思います。

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前半の講義では。
部材つまり木材の壊れ方・・・曲げ破壊、せん断破壊、支圧応力破壊、ねじり、たわみ。
こういう壊れ方をしないように、計算で確かめる。・・・断面係数、断面2次モーメント、ヤング係数など。
床のたわみは、どうして1/300になったか?
構造物の破壊防止・・・筋交い、パネル(面材)、ラーメン(剛接合)。ただし、木造は剛接合にならない。
鉛直荷重抵抗システム・・・めりこみ、柱の座屈、構造座屈。
鉛直荷重に対しては、柱が座屈するか横架材の圧縮で終局するかを見極めるのが重要である。
水平荷重抵抗システム・・・構面の抵抗モーメント、開口部のある構面、柱脚の引き抜け。
パネル構面の耐力の足し算を成り立たせるには、それぞれの構面をきちんとつくる。
木造建築でのスパン・・・製材の横架材ならば4mスパンまで。
それより大きなスパンが要求される場合には、実験による検証結果を用いて構造設計をする。
その実例として、秦先生が構造設計された建物を紹介していただきました。
おわらで有名な八尾町にある、福島1区コミュニティセンター。
この建物では、地域に伝承された大工技術を活かすため金物を使わずに、約8mスパンの架構を実現。斜材のあるトラスではないので、見た目も伝統的な建物になじんでいる。
雪がたくさん積もった時のたわみ量は・・・計算通りだったそうです。

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後半の講義は。
近年の振動実験による限界耐力計算の話。
限界耐力計算というと、非常に難しい内容なのですが、その考え方や理論を分かりやすく解説していただきました。
今までは、弾性域での評価ばかりだったが、塑性域の部分も評価する。
限界耐力計算・・・質量の把握、減衰定数の把握、復元力特性の把握。
固有周期・・・その建物が地震でどうふるまうのか?
強さだけでなく、減衰(構造のエネルギー吸収)を見積もることにより、変形性能の高い伝統構法による木造建築物も評価できるようになった。
最後に。
木造建築の素晴らしさ・・・形態の多様性、理想循環系が作れる、長期耐用できる。
この理想循環系の部分に、木材を使う・木造にする意味、それを持続させる意味がある。

 

今回は、構造計算を普段しておられない方にとっては少し難しい部分もあったようですが、分かりやすい言葉で話をしていただいた秦先生の講義でした。

 

緑の列島木の家スクール富山事務局 草野鉄男