2007年06月18日

6/16日に参加して。杉の建材

長坂 と申します。材木屋をやっています。
6月16日参加しました。

雑感:最初の西澤氏と後の宮内氏とは、対照的な感じを受けました。

 西澤氏は、伝統を守り確実な実績を選び、安全で間違いのない間取りを薦めるという。いっぽう宮内氏は、新しい試みに挑み、間取りの問題を工夫と技術で応えるという。

年上なので、年下の方を話題にします。宮内様の件で書いてみます。

1,顧客ニーズに応える為にいろいろ試行錯誤をされていますが、とくに込栓の部分で、柱ホゾはともかく、土台側が破損する部分はヒノキを使えば解決できます。わたしも杉が好きな設計士の物件を扱いましたが、担当外の大工の意見で施主が土台をヒノキに代えたことがあります。医療問題と同様、インフォームドコンセント、セカンドオピニオンを想いました。まさに宮内氏の表題のことで、今後積極的に取り組まれるべきことと感じました。

2,水中乾燥の件です。伝え聞いたことを言います。べつに裏付けをしてください。生木が水に沈むのは、珍しくありません。木部の比重1.4と言われていますから、80%も水分が有れば水の比重より上がりそうです。また、長い間水に浸けておいた木は、腐らずに何十年も品質を保つと言います。ダム湖や、富山湾の水没林がそうです。湾岸の貯木場でもかつては何年かに1度岸壁の底をさらい、引き上げた材は良材で高値で売れました。また、含水率が全体に均一になっていること、水の通りがよくなっているらしく乾燥が早い、内部応力が減っている、と聞いたことがあります。水の多い土中でも同じようです。

3,水に浸けてアクを抜くことは、一部の広葉樹、桐などではやっていますね。癖や変色が無くなりますが、油が抜けてもろくなるそうです。防腐成分もぬけるかもしれません。なお漬けておいた水のPHの低さは、その土壌に関係ないと思います。糖分が抜けて微生物が分解するとPHは、変わるのかもしれません。

4,燻煙乾燥、蒸煮処理、煮沸処理、は、今の乾燥の主流です。今の市販の杉柱は背割れが無く、十二分に乾いていて、4方に割れはなく、驚くほどきれいで技術のたまものだと感じています。上棟後も反り、ねじれはないと聞いています。ただし、曲げ強度の劣化はあると聞きます。スケジュールのポイントは、濡れた状態で全体をまんべんなく加熱すること、表はあとから冷えることです。適度な水分と熱があると、木材が若干の可塑性を持つようです。内部応力が抜けて、最後に表面が冷えて縮むことで表面の割れが閉じます。短時間の熱処理と、長時間の風乾が経済的と聞いています。

5,国産の杉材の需要を増やそうとする時、設計氏や工務店、施主の要望は不可欠ですが、それ以外に伐採から大工にわたるまでの間で、”それおかしいやろ?”を解決が必要と感じています。国産杉の伐採長さで5〜6mを増やすのはどうでしょうか。これも未確認ですが、現在の3〜4m既製品サイズは、トラックの運搬都合で決まっている、または、人と馬で切り出した時代の遺物と聞いたことがあります。実際の大工さんの経済的な理由はいかがでしょうか。歩留まりや、仕事都合で長尺材は、有利にならないでしょうか。

6,従来の910モジュールは、車いすや介護を考えると、狭くなってくると思います。これが広がって、2間+仕口がくると、4mでは足りなくなるとおもいます。また、継ぎ手が減れば、強度劣化もなく、加工数も減り、競争ができてきます。

7,米材、既製品で3,4mで競争すると勝てない。6m材では、材積計算に歩増しが生ずるが、これを見直す。そもそも、丸太の大きさは径の小さい方の寸法で体積計算をする。そこで6m超え材では、径の細い方と太い方の差分が大きくなり余分に材料が取れるから、歩増しをしようと言うことらしい。しかし、時代は変わって、梁桁の余りから採った板が売れない。だから、歩増しを廃止して長尺材が若干安価に流通する体制は取れないでしょうか。

以上、今回のセミナーで想ったことでした。