2010年05月15日

2010/05/08 木の家スクール名古屋 第一回講義 1コマ目 北原昭男氏 熊本県立大学教授

〝伝統的構法による木造建築の地震被害と耐震性能〝 

講師  北原昭男氏 熊本県立大学教授

IMG_1697

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京大の防災研究室に所属していたときに、阪神淡路大震災が起こりました。

重たい屋根の建物ほど全壊率が高く、古い在来構法の建物は耐震性が低いとの印象を、構造別の被害率分布の統計データーから受けました。 

ならば伝統構法による建物は?との疑問を抱いているときに、鳥取県西部地震、芸予地震(島根県)が相次いで起きました。鳥取県西部地震の大きさは阪神大震災よりやや小さいものの、死者ゼロ、伝統構法の建物倒壊も皆無でした。 

被害が小さかった理由を考えると、構造材の寸法が大きく、質のよい材木が使用されていること。優秀な技能が育まれ、ほぞを長くするなどの耐震性に優れた工夫により、大変形をしても仕口部での抜け落ちが抑えられたこと。振動論的には、伝統構法の建物は固有振動数が低く、地震の周期とずれていたため、地震エネルギーの入力を抑えられたと考えられます。 

つまり、伝統構法による軸組みは大変形に至っても元に戻る大きな粘り(変形能力)と変形によるエネルギー吸収性能を持っていることが、大地震に倒壊しない大きな理由です。 

今後、このような特性を持つ伝統構法をこれからの住宅建設に生かす手法、さらには地震で損傷を受けた建物を修復していくための手法、現存する古民家を後世に伝えていくための補修方法の構築が必要です。

 

IMG_1691

 

 

 

 

 

 

 

 

(文責 運営委員 寺川千佳子)