2011年12月06日

緑の列島 木の家スクール富山2011 外部研修 構造要素実験見学

緑の列島木の家スクール富山、今回は外部研修に行ってきました。今年度の外部研修は、構造要素実験の見学です。
場所は、金沢工業大学の地域防災環境科学研究所。担当していただいた講師は、同大学の教授 後藤正美先生です。
緑の列島ネットワークがお手伝いさせていただいている「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」の実験検証部会では、今年度は主に構造要素実験をいくつかの大学で分担して行っています。
後藤先生は、この実験検証部会の主査をされていて、金沢工業大学では構造要素として壁・接合部などの実験を担当。
緑の列島木の家スクール富山では、今年度の外部研修として、その実験を見学させていただいたのです。
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金沢工業大学の地域防災環境科学研究所に行きましたら、写真にありますようにこれから行われる試験体が所狭しとたくさん並べられていました。
今回見学させていただいた試験体は、板壁です。地域的には、岐阜県飛騨地方に多い板倉の木造建物(民家や倉庫)で使われている壁です。通し貫に、板を張る形式の壁。
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まず最初に見学させていただいたのは、通し貫のみの試験体1。
写真では、柱と柱の間にある水平方向の材が通し貫。それに直行して垂直方向の材が打ち付けてありますが、壁材の下地としての胴縁です。
通し貫だけですので大した耐力ではありませんが、写真を見てお分かりのように、大きな変形にも粘り強く耐えています。
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試験体1の実験終了後、試験体の解体及び損傷観察をさせていただきました。
実験の途中からも見えていましたが、通し貫が粘ることによって貫に割れが入っていますし、解体してみると柱のホゾが折れています。
通し貫が割れたのは、貫と柱の仕口の加工方法に関係しているようです。(貫部分に欠き込みを施してあったのでそこから、割裂をおこす。)
この試験体の柱は人工乾燥材でしたので、その割れ方などを見ると人工乾燥さえれた材ならではの脆い壊れ方をしていました。

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このあと研修室に移動して、後藤先生の講義。
こういう実験から、どのように壁倍率が決まるのか、そして耐力壁の考え方(足元を固定する場合と、伝統的な足場建ての場合の違い)などについての講義をしていただきました。
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また実験室に戻り、今度は試験体2を見学。
先ほどの試験体1に、板を縦張りしてある壁です。板が張られた分、どれだけ強くなるのか・・・。
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その結果としては、試験体1に比べて2の方が2倍ほどの強さとなりました。
写真は、396mm変形した状態です。

伝統的な民家の壁の実験を見れる機会は少ないですので、見学された受講生の皆さん(設計者・施工者・大工さん)は、どのように感じられたでしょか。
伝統的検討委員会のおかげもあり、こういう実験が行われるようになったことは、とても大きな意味があると思います。
これからは、環境や日本の山のことも考えた長寿命な家づくりをしていかなければなりません。
そういう意味も含めて、貴重な実験見学をさせていただきました。
後藤先生ならびに実験を担当してくれた学生の皆さん、ありがとうございました。

緑の列島木の家スクール富山事務局 草野鉄男