2018年08月15日

木の家スクール名古屋2018 第2回:7月21日(土)①

源流の木で家を作る活動と水系再生

講師:神谷 博 氏 (㈱設計計画水系デザイン研究室 代表取締役)

㈱設計計画水系デザイン研究室・代表取締役の神谷先生にお話を伺いました。

水系デザインとか、水とコミュニティーの設計と聞いても、何を設計しているのか、全く想像ができませんでしたが、お話を伺うと、自然に絡む仕事なら、どれもが水に関係しているのが判ってきます。という事は、なんでも設計をなさるということなのでしょう。

山梨県の小菅村(多摩川の源流地域)では、高齢化が進み、山の管理が出来ず、山が疲弊し森が元気をなくしているとの悩みを抱え、神谷さんに相談がきたそうです。自分は何が出来るのか?と考え、源流の木で家を作ることを提案したところ、カソリック教会から、子供寮の依頼があり、子供達の心に残る物を!と考え、木がどこで育つか子供達と一緒に山に入り、キリスト教式のお祓いをして切り出し、建物を作る最初の過程から子供達に参加して貰い、建設を進めたそうです。

その他、川の上流と下流の方たちの流域懇談会や、水の研究会、雨水の性能を認め評価する活動など、活動の幅の広さと、物事の根本まで掘り下げる深さに驚かされた講義でした。特に建築に携わる受講生に神谷先生が強く訴えられたことは、2014年に施行された「雨水の利用の推進に関する法律」や、同時に成立した「水循環基本法」とともに、日本の雨水を取り巻く状況が大きく変わったこと、そして極端気象の深刻化とともに雨に関わる災害も増えており、その有効な対策の一つが建築における雨水活用であるというお考えでした。そうした意識をもち、的確なノウハウを持った建築士の養成が喫緊の課題であるとの見解には説得力がありました。

(文責:寺川千佳子)