2018年07月20日

木の家スクール名古屋2018 第1回:6月2日(土)②

伝統建築技術の継承 ~今日の民藝という視点から~

講師:佐野 春仁 氏 (京都建築専門学校 校長)

 京都建築専門学校では、学生が伝統建築町家の工事、作業を通して多くのことを学んでいる。制作の対象は町家の耐震補強、お茶室、薪小屋、ツリーハウス、イベントのインスタレーションなど幅広く、工事の内容も木工、左官、茅葺き、林業(間伐や皮むき)など多種にわたる。子ども参加、市民参加、木匠塾、お茶会でのおもてなしなどかかわり方にも工夫があって面白かった。
 「今日の民芸」という視点からも深いお話をいただいた。
柳宗悦は「すべての美しさは奉仕の心から生まれる」と書いている。佐野先生はぼろ町家にどうして惹かれるのかという話を熱く語っておられた。学生たちがかかわるぼろ町家が魅力的なのは、かつてそこにあった生活の美、用の美が、若者たちの手を通して新たな工芸の美、奉仕の美となっていくからなのかもしれない。
 学問や技術に偏重しがちな現代において、言葉以前の何かが重要で、木や土を知ることことを通して、体験を通して、自然や己を知ることになるんだというお話もされていた。ある夫婦は、「この絵は私たちの精神を豊かにしてくれるのだろうか」を基準にして、絵を購入しているという話があった。
 体験を通して感性を磨き、感性や精神を豊かにするための選択を重ねることによって、より豊かになっていくのだろう。私たちがものづくりや建築に関わってゆく中で、自分たちを豊かにしながら、そして後の時代によりよい地層を残してゆくことができればと感じる講義だった。
(文:宇野)