2018年01月05日

木の家スクール名古屋2017 第5回:11月4日(土)①

第5回 ヨーロッパの木造建築とその伝統的な工法の特色

講師:太田 邦夫 氏(太田邦夫建築設計室・主宰、東洋大学・ものつくり大学名誉教授)

太田先生は、長年ヨーロッパの木造建築の研究をされ、2015年にそれらの研究をまとめた『木のヨーロッパ‐建築とまち歩きの事典』を出版されました。その著書に掲載された貴重な資料を基に、ヨーロッパと日本における木造建築の違いや各地の木造建築の特徴などを、豊富な写真や先生の手描きによるイラストを使って解説くださいました。

ヨーロッパの建築といえば、多くの方は石の建築をイメージされるかもしれません。ところが、20世紀初頭のヨーロッパには木造建築は各地に膨大に残されており、そして今なお多くが使われているそうです。ヨーロッパの木造建築の多くは、ティンバーフレーミングやハーフティンバーでつくられますが、一部には校倉造りや生楼組(せいろうぐみ)の建物もあります。逆に、日本のように柱と梁だけで作られた建物はヨーロッパにはほとんどないとのことです。

ヨーロッパにおける木造建築の工法の分布、屋根、窓、建物形状等の地域的特徴について地図上で整理された資料を使って詳しくお話しくださいました。海に近い地域では木造建築は少なく、内陸部には木造建築が多く存在していることや、離れた地域でも同じような屋根の形状があったりするのはなぜなのか、言語の分布、気候の特徴、宗教の違いなどが各地域の建築に与える影響など大変興味深い内容でした。

また、その他のお話では、イギリスでは長く使われている建物ほど価値が上がり、古民家を大事にする文化があること、ドイツでも300年、400年前の木造建物が現在でも残っていること、フランスでは材木が採れなくなったことがコンクリートの発明に繋がったなど木造建築に関わるお国柄についても知ることが出来ました。

太田先生の著書『木のヨーロッパ‐建築とまち歩きの事典』は、日本建築学会 著作賞を2017年に受賞されました。太田先生が半世紀にわたりヨーロッパ35ヶ国を実地踏査してまとめられたものです。美しい街並みや歴史的な木造建築を効率よくめぐることが出来る12の旅のルートガイドとその資料集成となっておりおすすめです。ご講演はその資料を中心にお話しくださったので、聴き終わった後にはヨーロッパの木造建築を巡る旅に出たくなりました。(文:宇野みき)