2016年06月14日

木の家スクール名古屋2016 第2回:6/11(土)

土壁・漆喰壁に秘められた魅力を語る

講師:佐藤ひろゆき氏(佐藤左官工業所・京都工芸繊維大学シニア・フェロー)

木の家スクール名古屋2016 第2回では佐藤ひろゆきさん(佐藤左官工業所)を講師に迎えました。佐藤さんは、左官技術者として建設現場で活躍されるだけでなく、2008年3月に京都工芸繊維大学で学位論文「京壁の物性と機能および施工法に関する研究」を執筆し博士(学術)を授与されるなど多方面で活躍されている方です。今回の講義では、お話だけでなく実演まで披露頂きました。

まず、左官の歴史、土の歴史、漆喰の歴史など左官という職業に関する歴史と変遷を紐解くことから講演は始まりました。左官の歴史を解明することは考古学的にも大変難しく、「たぶんそうだろうな」というモノが多いといった話では、会場から笑い声が出るなど、和やかな雰囲気となりました。続いて、豊かな色合いの土が産出される関西の自然条件、土壁を良しとする貴族文化によって土壁が発達したことが紹介され、千利休による茶室の登場によって土壁は大きな転換点を迎えたことが紹介されました。なんでも、土壁には大きく3回の革命があり、第1回目は千利休によって茶室の壁に土壁が使われたことだとか。ちなみに第2回目は明治維新以後で、刀鍛冶が鏝(コテ)鍛冶に転職したことによる鏝の技術革新(鋼、焼き入れ)、第3回目は樹脂素材が開発された現代で、乾式工法の登場や野外でも使える洗い出し技術の登場などだそうです。一方、土壁に関する環境は危機的であり、少しでも環境を改善するため佐藤さんは本業のかたわら、講演活動などを行っているということです。
途中より左官の実演を交えた講義へと移りました。左官用の鏝は60種類ぐらいあり、各種類で10~15本の大きさの違う鏝があること、土壁の2回目の革命によって「中首」が登場したこと、中首が登場した理由は関東で発展した漆喰文化と深い関係があり土壁より重たい漆喰を塗る際の身体の負担軽減が主な理由であることなど、佐藤さんが現場で経験された実体験と知識が惜しげも無く披露され、会場からは「なるほど、納得した」という声が多く聞かれました。

最後に、「家は買うものではなく、造り育てるもの」、「100%満足のいく家は最初から出来ない。10年かけて自分に合わせて改善していくもの」、「お施主さんの喜ぶ顔が何より一番で、何年か経った時に良い家を建ててくれてありがとう。という一言が勲章」、「土壁在来工法は残すべきものではなく、必然的に残るべきもの」と言われたことがとても印象に残りました。

(文責 清水秀丸)

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