「地震に強く、火にも強く、環境に優しい木造建築」
講師:安井 昇 氏
(桜設計集団代表、早稲田大学理工学研究所客員上級研究員)
木造3階建の準耐火建築物や、木製防火戸など、木造防火技術の最前線のお話は勿論の事、木材の厚さや太さを活かした火事に強い木造建築物のつくり方や、耐震と防火性能を同時に補強する改修方法など、今まで火に弱いとされてきた木造建築の本来の強さと美しさを再認識させる講義でした。
① 木造の防火技術と火災安全設計
木造住宅を設計する際に留意すべき事は、火災の広がりを遅くする事。一つは天井材をPBなどの不燃材にする事や、厚みのある板材にする事。木材は燃える事で表面に炭化層が出来るので、24㎜の厚みの木材は約30分延焼を食い止め、避難の時間をかせげる。
② 防火・耐震化改修の意義と概念
裏返し塗りの土壁や、30mm以上の板厚は十分な遮熱性を持つ。垂木間への断熱材の充填やPBを打上げる事で、木造の準耐火構造も可能になる。木製格子も熱を遮る有効な手法。
③ 木造密集市街地の耐震・防火改修隣から隣への延焼を防ぐ為には、外壁の防火性能が落ちないことが一番重要。外壁のモルタルが落ちないような対策を検討すべし。
④ 木造の今後の可能性
準防火地域で木造3階建住宅(イ準耐火建築物)は既に建築済み。通し柱は165mm角。都市で木造5階建共同住宅も建築済み。防火性能が必要なのは鉛直力を支持する部材のみ。木造3階建の学校の耐火建築物の要件の見直しも始まっている。土塗り壁・厚板壁・厚板床など木と土を用いた伝統的木造建築の準耐火構造の開発を進めている。
(文責:寺川)