2013年11月25日

木の家スクール名古屋2013 第2回:7/27(土)

 分子に刻まれた時を読む 森林からはじまる新しい持続的社会を目指して

 

第一部 講師:舩岡 正光(三重大学大学院生物資源学研究科教授)

 
21世紀はバイオの時代と言われています。18世紀までは、エネルギー源として木材を多用し、19世紀には石炭の活用で第一次産業革命が起き、さらに流体資源“石油”の発見で、現在の社会へと移行しました。しかし、資源には常に限界があります。石炭も石油も底が見えてきた現在、次の資源として着目されているのがバイオです。

 

今回の講義では、持続可能なエネルギーや資源をどのように調達できるか?すなわち、生態系のシステムを深く見直し、それを規範とする新しい社会システムをどう構築するか?という、バイオ技術の概要をお話いただきました。

 

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先生の講義を理解する為に、いくつかの言葉をネットで検索し貼付けておきます。

 

①バイオ:バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)の合成語バイオテクノロジーの略。生物の持つ様々な働きを上手に利用し、人々の暮らし、医療、健康維持増進、食糧生産、地球環境保全等に役立てる技術を指す。

 

②バイオマス:生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、一般的には「再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」をバイオマスと呼ぶ。その代表が、木材であり、廃棄される紙、食品廃棄物、下水汚泥等も資源となる。

 

③カーボン・ニュートラル:木材や農業廃棄物などはバイオマスと呼ばれるエネルギー資源であり、炭酸同化作用により太陽の光を吸収して空気中の二酸化炭素を固定する。バイオマスをエネルギーとして利用する時、燃焼などにより二酸化炭素が排出されるが、植林や農作業により再びバイオマスが大気中の二酸化炭素を吸収する。このため、バイオマスの利用により大気中の二酸化炭素が増加することはない。これをカーボン・ニュートラルと呼ぶ。バイオマスを化石燃料の代わりに利用すれば、二酸化炭素の排出を抑制できる。

 

上記の③の説明を読むと、植物系バイオマスならば、循環炭素の総量が変動しないので、生態系の撹乱には繋がらないと説明されていますが、実は、「エネルギー・機能・時間のファクターの欠如がある」と先生は指摘しています。つまり、何十年もかかって成長した木材を一瞬で燃やせば、その時点での二酸化炭素の量は増加するのです。抑制する為には、木材を構成分子資材へと転換する精密制御技術が必要とされるそうです。「木材を分子にほぐす」、そんな技術があるのでしょうか?

 

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植物系バイオマスの活用に関するプロジェクトは脱石油社会を目指して世界中で立ち上がっているそうですが、そのほとんどが炭水化物の燃焼によるエネルギーの確保に重点が置かれています。それでは、先ほど書いたように、実際には二酸化炭素は抑制できません。

 

二酸化炭素を抑制する視点から、「木材を分子にほぐす」技術を先生が開発しました。木材の95%が、リグニン、セルロース、へミセルロースで構成されています。中でも環境の変化に鋭敏なリグニンの反応を精密制御することがキーポイント。先生が提唱する技術は、常温常圧の環境で、精密な変換を達成する新しい技術、『分子変換・複合系解散システム』です。生物素材の構造を分子レベルで尊重する視点から生まれました。

 

2001年に三重大学構内に一号プラントを建設。2003年には北九州にも建設され、2011年から環境省の補助金を得て、徳島県中川において、木質バイオマス全量活用の実証実験を始めています。

先生の研究内容を詳しくお知りになりたい方は、「リグノフェノールとは」と検索してください。下記のタイトルの先生の研究説明が図解付きで出てきます。

  

  材料化を目指した天然リグニン誘導体

  リグノフェノールの高機能化

 

「21世紀の持続可能な社会とは、深く生態系に根ざした社会であり、その規範とするものは、地球と壮大な年月をかけて共存関係を保ってきた森林と、それを構成する樹木の中にあることを深く認識すべきである」と、先生は講義を結びました。 

 

(文責:寺川)