2015年12月17日

木の家スクール名古屋2015 第5回 11月7日(土)第2部 腰原幹雄氏

木の家スクール名古屋2015 第5回 11月7日(土)第2部

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講師: 腰原幹雄氏(東京大学生産技術研究所教授、 チーム・ティンバライズ理事長)

地産地消が叫ばれているが、木材の生産地では建築需要が少なく、一方大都会では法的規制で木材を使い切れていない現状を、どのように打破するかに目標に定めてチーム・ティンバライズを立ち上げたとの事。海外での木造建築を紹介しつつ、日本での活動の経過をお話いただきました。

まず、伝統木造と近代木造の構造の違いから説明が始まりました。

「伝統木造の代表として、法隆寺の初層の構造を振動台の上で揺らしてみると、かなり揺れ
て変形しても架構は壊れない。が、現代建築はサッシなどが入っているので、変形すれば問
題が出てくる。ならば、開口部に構造用合板を入れると、剛体になり変形は防げるが、ロッ
キングが始まり浮き上がるので、足元を固める必要が出てくる。現代の構造工学を目指すな
らば、判りやすいシステムが大事で、構造要素を合板だけにする事で、判りやすい構造計画
が出来る。『判りやすい構造計画』とは、弱点を明確にして壊れる順番を把握し、ここが壊
れなければ良いと、構造計画がたてられている。そういう構造工学のもとで伝統木造を捉え
ようとするのは難しく、伝統木造と現代木造では、構造の価値観が違うものではないか?
と思い始めた」との事。

チーム・ティンバライズ結成
「伝統や慣習にとらわれること無く、木・木造の新しい可能性を模索する為に、ティンバライズという組織をつくった。建築需要がある都市部で木造が建てられるようティンバー(木材)に人が手を加えて、新しい木材として都市木造を考えるのがティンバライズの目指すこと。地産地消ではなく、都市で木造を建てる事を考え始めた。その時代の生活スタイルと社会システムに適応させるどんな木造を作れば良いのかを探り始めた。」

大断面集成材、架構計算ができる防耐火建築
「1987年に大断面集成材(エンジニアリングウッド)が作られたのが転機となり、木造も構造計算が出来るようになり、2000年に性能規定化で、基準法が改正され、高層ビルが建築可能になる。2005年に金沢に始めて木造5階建てが出来る。一方、ヨーロッパ、北米では9階建ての木造がたてられているが、木は表に見えていない。防耐火と、構造の技術が生まれ、『木造でもできる』 から 『木造だからできる』への進化が始まる。構造の設計者なら、やる気があれば出来る。各県に二人を目安に全国に100人だけ大規模木造構造設計者を育てる予定。どういう技術が必要かは未定だが、そんな体制が作りたい」と、熱い講義が終了しました。

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参考図書
都市木造のヴィジョンと技術 オーム社
感覚と電卓でつくる現代木造住宅ガイド 彰国社

 

講義が終わって、今年の講義もすべて終わり修了証を受講者の方々に
藤岡伸子先生よりお渡しいたしました
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