2014年12月26日

木の家スクール名古屋 2014/9/20 第二部

木造で建築する意味

講師 和田耕一氏

 

「4つの建物を紹介しながら、木造建築を媒介として、色々なつながりが出来ていく事をご紹介します」と講義が始まりました。

 

1)四国鉄道文化館(2007年完成)

498㎡の木造平屋建ての建物を分離発注で進めました。分離発注にすることで、木材業者に責任がかかるけれど、お金も落ちる。それ以上に、設計半ばの時点で発注することで、木材の乾燥時間が稼げるのが一番重要なポイント。発注者が日本ナショナルトラスト財団だった故に、入札する必要がなく、仕事が地域と山の木につながりました。

 

2)愛媛県八幡浜市立日土小学校の改修工事(20072009年)

当時八幡浜市役所職員だった建築家松村正恒によって1956~1958年に設計されたモダニズムの木造建築です。老朽化に伴う保存改修工事をする際の最重要点は、『可能な限り最小限の介入で、やり過ぎない事。後で建設当初の姿に戻すことが出来るように改修すること』。2012年、戦後木造建築として初の重要文化財に指定され、『文化財として使い続ける小学校』は、新築以上の価値があると、やっと地域の方々に認められました。地域に貢献するとはどういうことか、建築家に課せられるテーマです。

 

3)愛媛県久万高原町が開発した構造用ラティスパネル

林業主体の町なのに何も作れない状態を打破するために、構造用面材を考案しました。

接着剤を使わず、釘とビスのみで、大壁、新壁、床勝ち、壁勝ちで、2.7、3.2、3.7、4.2迄の壁倍率のラティスパネルです。許容応力度設計の建物にも対応可能です。開発から8年、やっと1軒目の建物が完成間近です。

 

4)少彦名神社・参籠殿(すくなひこなじんじゃ・さんろうでん)

1934年(昭9)年に建築された近代の懸けづくりの神社。氏子や管理者が不在のため荒れ果て、朽ちるのを見守るだけの状態が続いていたが、2011年に建築図が見つかり、ワールドモニュメント財団の危機遺産に選定されたことを弾みに、改修工事が始まった。この財団は、改修費を出すのではない。時間の経過とともに再び必要となる修理を継続するシステム(自分達の手で、将来に渡り地域遺産を守り続ける意識)を育てる為の基金を提供する。その考え方に刺激を受け、寄付を集め、改修工事が始まりました。

 

どこにでもある材料で、どこにでもいる職人の手で、どのように木造建築をつくるか?

あなたの建築は、社会にどういう貢献ができるのか?

大きな課題をご自分にも、私達聴講生にも投げかけて、講義が終わりました。

 

文:寺川