2010年12月27日

木の家スクール名古屋 豊田森林見学会 講師ー北岡明彦 豊田市森林課

人工林の管理いろいろ -管理放棄するとどうなっちゃうの?-

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北岡明彦氏   

 豊田市森林課

北岡氏は、豊田市森林課職員でありながら森林の動植物の生態に精通したエキスパート。市民に向けた体験教室や植林会など積極的に行われています。今回は、受講生の皆さんともに足助の森に出かけ、フィールドワークを行いました。

けもの道のような急勾配のルートから山に分け入ることところからはじまりました。見学させていただいた森は、人工林と天然林、間伐林と放置林など森林の複数の様相を見ることができるようになっています。

 

 

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今、日本中の人工林における間伐手遅れが大きな問題となっていますが、そうなることでどういった弊害が生じるのでしょうか。間伐手遅れ林は樹木が立て込んでおり、光がささず下草が育たないことはよく知られていますが、土壌破壊のメカニズムについて今回知ることができました。
樹木の枝葉に雨があたるとより大きな雨粒として落下します。下草があれば破壊力は拡散されますが、これがない場合には直接地面に大きな雨粒が当たり、どんどん土壌を洗い流し、侵食してしまいます。土壌は毎年わずかずつしか増してゆきませんから、みるみる木の根が露出するような状況になってしまうのです。
ヒノキは高さが15mくらいあっても根の深さは30cm程度と大変浅く、土砂崩れになりやすいと言われています。深層崩壊はどんな根でも防ぐことは困難ですが、間伐が浅層の土砂崩れの抑止につながることがわかりました。

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間伐の一手法である「巻き枯らし」の現場を見せていただきました。
スギやヒノキなどは、樹皮のすぐ下の層で水吸い上げが行われます。その皮を剥いで水を吸い上げられなくしてしまい、立ち枯れを人工的に生じさせる方法です。
昔も行われた方法ではあるそうですが、本格的に実施されてからはまだ8年。まだわからないこともあるそうでうですが、効果は出始めています。立ち枯れすると、葉が落ち、足もとに日が射すようになり、下草が生え始めます。
巻き枯らし実施の森と、見施業の森を比較すると、明るさも下草の様子も大きく違うことがわかりました。

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最後に、巻き枯らし実施後の森において、5m四方をロープで囲い、その中に何種類の植物があるかというクイズを出されました。
その後実際に北岡氏は植物の名前を次から次へと様々な植物の名前を見事に言いあげて下さいました。結果、48種類の植物がみられました。しかし、これも巻き枯らし間伐で明るくしたからこそ植生が豊かになったのであって、間伐を行っていない真っ暗な森では6種類くらいなどとても少ないのだそうです。

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豊田市は年間1500haくらいの間伐を実施しているそうです。今後は、行政、市民、企業が協力して森林の維持をしてゆかなければなりません。
北岡氏は、森林はもはや業ではないのではないかとも。どうしてゆけばよいのか、極めて難しい状況にある。今伐っても植える人がいない。そして、今後30年したら100年生の木はたくさんあるが、30年生、50年生の木はないといういびつな状況になる。植えるなら今かもしれない、しかし植えたとしてもメンテナンスが要るので、業になるかどうか…。