2010年08月16日

名古屋 第三回 木の家スクール報告(第一部 中尾晋也氏 第二部 益子義弘氏)

名古屋 第三回 木の家スクール報告

(第一部 中尾晋也氏)

 

“あかりをもっと楽しみませんか? ”

          - 人の心とあかりの関係 –

 

大光電気株式会社の中尾晋也さんをお招きして、“あかり”のお話をお聴きしました。

50万年前に人類が炎を発見して以来、130年ほど前にエジソンが初めて炎以外の明かりである『炭素電球』を実用化させた。以後、蛍光灯を初め、様々な種類のランプが開発され、つい最近では、省エネをうたい文句に、白熱電球にとって変わるボール型蛍光灯やLEDランプが急速に出回りつつある。

ランプの開発が進むにつれてエネルギー効率は上がり、一見、省エネは進んでいるように見えるが、一方でオフィスや住宅の基準照度が大幅に高くなり、例えば住宅の6畳間を照らす明かりで比べると、現在は昭和初期頃の実に10倍の明るさになっており、むしろ電気使用量は格段に増えている。

画像1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ“明るい”ことが良いことではない。

“本を読むのに適した明るさ”

“食事がおいしそうに見える明るさ”

“安らかに眠りにつける明るさ(暗さ)” など、その空間に適した明るさの設定と、LED(長寿命で省電力、寒さに強い)や、白熱球(心理的に暖かさを感じる、高い演色性)など、それぞれの光源の特徴を活かした“適材適照”の照明デザインが大切である。

 

とは言え、今後、白熱球の製造が中止され、LEDが主流となるであろう流れの中、単に従来器具の代替としてではなく、LEDのメリットを活かした新たな器具を開発して行くと共に、それを活かす、次世代の照明手法の確立が必要がである。

画像2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

( 第二部 益子義弘氏)

環境との対話と居場所のかたち

益子義弘氏 (建築家 東京藝術大学名誉教授)

100807 益子先生 _i_3774

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は、住いの空間の骨格を考える上で大切な周辺環境とその関わりや人たちの居場所のありようについて、ご自身の設計なさった別荘をご紹介いただきながら、お話頂きました。

 

スクリーンに映し出される数々のスケッチや建物のエスキースは、まるで水彩の絵コンテのよう。あるときは鳥の目線から、あるときは大地に腹這うように、自在な角度からのスケッチがなんとも心地よく、思考が止まり、只々ウットリし続けた講義でした。

 

「林に一脚の椅子を置くように」建物を設計するために、益子先生は季節ごとに現地に足を運び、「土地や風景との対話」の準備期間を大切になさるとのこと。どの風景をどのように切り取り、どう見せるかを決めるために、スケッチだけでなく、いくつものエスキース模型をつくり検討を重ねる姿勢に、全てを委ねられた設計者の責任の重さを痛感しました。

 

その検討を重ねた結果の空間の気持ち良さそうなこと!「この別荘に住みたい!」、そんな思いを設計士に抱かせる、魅力的な住まいの空間でした。

 

100807 益子先生 _i_3776