2013年11月25日

木の家スクール名古屋2013 第3回:9/28(日)第1部

『藤野電力』 市民がつくるエネルギー

 

第一部 講師:池辺 潤一(「藤野電力」発起人、自然住宅の設計士)

 

木の家スクール名古屋 第3回の講義は一般公開講座として開催致しました。

第1部は『市民がつくるエネルギー』と題して、「藤野電力」発起人であり設計事務所Studio ikb+ 代表の池辺潤一さんに。そして第2部には『自然エネルギーで自己完結する家をつくろう』と題し、エコライフラボ事業総括責任者で工学博士のO.バルテンシュタインさんの講義を受けました。どちらもこのところ関心が高まる“自然エネルギー”のお話ということもあってか、大変沢山の一般の方々にもご参加いただくことができました。

ここではまず第1部の様子をお伝えします。

 

「藤野電力」の活動拠点は神奈川県北端の町、旧藤野町(現、相模原市緑区)です。ここは『森と湖と芸術の町』と呼ばれる緑豊かな山間のまち。この地で“エネルギーの自給を地域の人達と一緒になって楽しく実践する市民活動”が「藤野電力」です。

活動のきっかけは2013年の3.11の震災と原発事故。仲間の一人がその時の停電時に“ソーラー発電と薪ストーブのおかげで安心して過ごすことが出来た”という経験談から始まりました。

 

当初、仲間内で始めた50Wのソーラーパネルとバッテリーを組合せた太陽光発電装置の製作でしたが、作業の楽しさが口伝てに広がり、やがて方々からオファーが入るようになっていきます。こうして藤野電力の活動は自然発生的に始まり、これまでに『太陽光発電システムの組立てワークショップ』は全国で延べ100カ所以上もの場所で開催され、累計発電量は32,000Wに達しました。電気量としてはまだまだ小さなものですが、こうして日本全国に「エネルギー自給のムーブメントを起して行きたい」と、池辺さんはその期待と可能性を話します。

 

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「藤野電力」のその他の活動は、

・  地元アーティストの活動拠点、牧郷ラボ(旧牧郷小学校)100%自家発電プロジェクト

・  自然エネルギー充電ステーションプロジェクト

・  超マイクロ水車発電プロジェクト

・  住宅へのオフグリッド電源設備設置プロジェクト

・  地域のイベント会場での電源供給

などなど、地元藤野に根を下ろした多岐にわたる内容のものです。

 

活動ポリシーは、“理屈よりも楽しさを優先すること。楽しいところに人は集まる。自分たちで出来ることを自分のこととして行う”、というもの。

こだわっていることは、

・オフグリット(独立型電源)・・どこかの電力網に接続するのではなく、独立して運用する。

・身の丈 ・・自分たちの生活スタイルや行動範囲内で試行錯誤して見極めて行く。

・DIY  ・・誰かに頼らず、自分たちで考え、自らの手を動かしてみる。

・  オープンソース・・知識やノウハウを他地域のみんなとも共有し改善して、緩やかに繋がって行く。

というものです。

 

これらの様々な活動によって、大学との連携で廃棄パネルの再生が可能になり、充電ステーションが町のお店の利用活性化に繋がり、また、電動アシスト自転車で藤野町の観光を考える行政との恊働の可能性がうまれるなど、「エネルギー自給の活動」は方々に繋がりを広げながら、「藤野電力」が本来の目的とする“地域の豊かな未来”に向けて着実に展開されています。

 

そもそも「藤野電力」は、環境に優しい持続可能なまちづくりを目指す市民運動『トランジション藤野』の分科会として始まったもので、他に「お百姓クラブ」、「森部」、「健康と医療」、「地域通貨 よろづ屋」、「コミュニケーション」などの分科会が有ります。

まちを愛する人達による、“やりたい人が、やりたい時に、やりたいことをやる”を合い言葉にした自発的な活動は、緩やかに、しかし着実に藤野を増々魅力溢れるまちに変えて行くことを予感させます。

 

約1時間半にわたる講義では、笑顔あふれる楽しげな写真と共に様々な活動が紹介されました。そして最後に、池辺さんはこんなお話を・・・。

“たとえ小さな発電でも間違えれば危険が伴うということを、ある出来事から学びました。楽しみながらも、総ては“自分ごと”として捉えることが重要です。電気を自給するということは、同時に今まで電力会社に委ねてきたリスクも引き受けなければいけないということ。これまで電力会社に全てを依存し背負わせてきたことが、あの大きな事故に繋がってしまったのかもしれません。”

 

“自分ごととして捉える!”。

この言葉に、自立分散型エネルギーに真摯に取り組む「藤野電力」の姿勢が現れているのだと感じました。

 

講義後の質疑の中で『太陽光発電システムの組立てワークショップ』の費用についての質問が出ましたので、以下に紹介しておきます。

機材代は ¥42,800円 (1セット)です。

たとえば、神奈川県で開催する場合は2セット以上。三重県辺りでは8セット以上。九州では12セット以上であれば、その他の費用は掛かりません。

尚、見学だけの方には1000円を頂き、会場費などの運営費に充ててもらっているとのことでした。是非、皆さんの地域でも、このワークショップを開いてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:丹羽)