2011年10月20日

緑の列島 木の家スクール富山2011 第1回 木構造レベルアップ講座Ⅰ

緑の列島ネットワークが開催している木の家スクール、今年度より富山でも開講することになりました。
以前も富山で開催していてここ数年間お休みしておりましたが、またスクールを行ってほしいという声も上がるようになり、今年度より再開することになった次第です。
北陸および周辺の皆様、またよろしくお願いします。
今年度も、富山県の方だけでなく、石川県・新潟県から通って下さる受講生の方もいらっしゃいます。
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今年度の第1回は、木構造ステップアップ講座Ⅰと題して、東京大学大学院准教授の稲山正弘先生を講師にお招きして、木造軸組工法の許容応力度設計法による構造設計の話をしていただきました。
一般的な2階建て以下の木造住宅(その他高さや面積の条件あり)であれば、構造計算の必要はありません。いわゆる4号建築物ですから、壁量など仕様規定を満たせばよい建物です。
しかし、構造計算がいらないからといって、木構造の知識が全く必要ないわけではありません。
構造計算の必要があるかないか、あるいは構造計算をするかしないかの以前に、木造の構造を理解しているかどうかが重要です。つまり、その理屈を分かって設計しているかどうかということです。
そのためには、仕様規定範囲内の知識だけでなく、性能表示の構造チェックや許容応力度設計法などもある程度理解しておく必要があります。
構造計算が必要だから勉強するのではなく、4号建築物であろうがなかろうが、木造の建物をきちんと設計しなくてはいけません。
そのためには、こういう設計法・構造計算を勉強することによって、木構造の基本や計算から読み解く知識を身につけることができるのです。
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今回の講義は、仕様規定では耐力壁に頼る設計しかできないのに対して、許容応力度設計をすることによってどんなことができるのかという、いわば木構造の応用編。
また、昨年「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が公布・施行されたこともり、ある程度の規模の木造建築物も含めて話をしていただきました。
稲山先生の講義のタイトルは、「流通材を用いた大規模木造建築の構造設計」
大規模な物ばかりでなく、住宅からある程度の規模まで、稲山先生が構造設計された作品を通しての講義でした。
建物の規模が大きくなると、大断面集成材(特注材)を使うケースが多いが、それではS造・RC造と変わらないもしくは逆にコストが高くなってしまので、地場産の流通材(一般住宅に使う材料)を用いることによってコスト面も考えた合理的な設計を紹介していただきました。
ただ、県産材という条件にしてしまうと構造的な視点からも使える構造材が限られてくるので、県産材も含んだ周辺地域材を使うようにしておられるそうです。
また接合金物も同じで、特注の金物を使うとコストが高くなるため一般住宅にも使われているような金物を使ったり、なるべく金物をあまり使わない接合部を考えることも重要だと教えていただきました。
特注金物だと大工さん・職人さんも大変だが、一般的に使い慣れている金物だとそういう手間もかからないからです。
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最後に、稲山先生が構造設計された作品を拝見していて印象的だったのは、木と木同士のめりこみを活かして設計しておられるということです。
材と材を簡単な仕口でくっつけて金物に頼るのではなく、材と材は欠き込んだ部分を噛み合わせる(いわゆる木と木を組む)ように設計しておられました。(稲山先生も、こういう部分は伝統的な継手の追掛け継ぎと同じ理屈だと解説。)
木を構造材として使う木造建築物は、これが木の特徴を一番活かした使い方なのだと、あらためて実感しました。

今回の講義を聞いて、今まで構造計算は必要ないと思っておられた方が、木構造のこと・構造計算の関心を高めて実際の設計に役立てていただきたいですね。

木の家スクール富山は、残り4回の講義(6講座)と、外部研修(耐力壁実験見学)を1回行います。
希望講義のみを受講することもでき、あと若干名受付可能です。ご希望の方は、富山事務局まで。

緑の列島木の家スクール富山事務局 草野鉄男