2011年11月15日

緑の列島 木の家スクール富山2011 第2回 木組の家設計法/針葉樹を活かす家具設計法

11月12日、緑の列島木の家スクール富山の第2回講義を開催いたしました。
今回は、お二人の講師をお招きしての講義。建築設計と家具設計のコラボレーションです。
建築設計として建築家の松井郁夫先生、家具設計として富山大学芸術文化学部の丸谷芳正先生に講義をしていただきました。
実はこのお二人、同じ大学をご卒業されていて、東京芸術大学のバスケットボール部の先輩後輩というご関係で、今回のコラボが実現したという訳です。
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まずは、「木組でつくる日本の家」と題して、松井先生の講義。
現状の問題点として、荒れ果てた山・消える大工技術・価格の見えにくい木と木の家・木造建築の構造解析不足の話から始まりました。
木という自然素材が、山と環境を守る循環要素の大事な役割をしていること、川上=山(林業)〜施工(大工)〜設計(設計者)〜消費者=川下までが密接につながり、山のこと・木のことをもっと知って家づくりをすることが大事である。
多くの設計者・施工者は、住宅(民家)をつくりながら、日本の民家のことを知らないので、もっと伝統的な民家の勉強をするべきである。
設計手法としては、間取りから考えるのではなく、架構から考えていくことにより、力の流れがスムーズな丈夫な骨組みをつくる。
最近では、伝統的な木造建築の実大振動実験などその構造解析が進んできたことなど、話がすすめられました。
そして、その実践として松井先生のワークショップ「き」組の紹介をしていただいて、松井先生による今日の第1講座が終わりました。
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第2講座は、「針葉樹を活かす家具設計法」と題して、丸谷先生の講義です。
昔ならば、建築の設計の中に家具も含まれていました。家を建てるとともに、ほとんどの家具も一緒に造られていたのです。家具屋さんというものが出来てから、建物と家具が別々になりました。
せっかく本物の木の家を建てても、その後に持ち込まれる家具が集成材や樹脂・金属が多いのでは・・・。ですから、ある程度の家具も本物の木を使い、家を建ててくれる大工さんにつくってもらうのが理想です。(大工さんでは無理な家具は別として。)
という観点で、丸谷先生にこの講義をお願いしたのです。
丸谷先生も、山と木の問題の話からから講義を始められました。
針葉樹は柔らかいので、家具と言えば広葉樹で造られることが多いが、現在日本の山では、安定した広葉樹の供給ができないため輸入材に頼っている。
しかし、戦後造林された森林が伐期を迎え利用を迫られ、広葉樹の多くが失われた今、針葉樹を利用するという観点で、家具設計を再考するべきである。
古い民家に置いてある家具を調べても、決して広葉樹のみというわけでなく、針葉樹も結構使われている・・・のだそうです。
針葉樹家具の設計法として、その1=柔らかさを欠点としてみるのではなく、柔らかさを活かすようにつくる。
その2=軽さを活かす。広葉樹は硬いかわりに重いので、針葉樹を使うことによって軽い家具が出来る。椅子の持ち運びなどに有効。
その3=接合方法を工夫する。柔らかいので、ホゾがつぶれたりしないようダボ接合や雇いホゾなどにより、繰り返し荷重や衝撃荷重に耐えるものをつくる。
その4=供給量と安さを活かす。計画供給される日本の針葉樹を使うことにより、量の安定と広葉樹の価格よりも安く手に入れることができる。
まとめ=針葉樹と広葉樹をバランスよく使用することが家具本来の姿であり、針葉樹本来の特性を活かした家具設計をするべきである。
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休憩時間の間に、丸谷先生が杉で造った机・椅子をみんなで見ている様子です。
やはり、広葉樹の家具に比べると触った瞬間から柔らかさを感じましたね。そして、何と言っても軽い!
写真の手前に映っている椅子もなかなか良いでしょう。色も綺麗ですね。
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そして今回は特別に、松井先生と丸谷先生のお二人で第3講義を行っていただきました。
まずは、丸谷先生から不燃木材の紹介。
2000年の法改正により、木材も不燃材料として認定を受けられるようになったが、「不燃木材の防火性能が不足」という問題が起きて、認定を受けた約30社のうち抜き打ち検査などにより、最終的には1社しか合格しなかったというお話。
次に、丸谷先生は古い民家を買い取って住まいにしておられるのですが、その耐震改修という意味で古い民家の構造の話になりました。
そこで松井先生から、E-ディフェンスで行われた実大振動実験の映像をいくつか見せていただきました。
古い民家は柔らかくてゆらゆら揺れるので良い、それで地震力を柔軟に受け止めている。しかし、そこへ現代的な考えの構造補強をするとどうなるのか、などを考える必要がある。
実大実験の映像を初めて見た受講生の方は、真剣にそれを見ておられました。

第1回の稲山先生の講義で、めりこみを活かすことが重要であると書きましたが、今回の講義も同じです。伝統的な民家の組み方つまり木組みとは、めりこみを活かしています。
伝統構法だから、現代構法だからと分けて考えずに、木を使って建てることの意味、その木の良さを最大限に活かしてつくる=めりこみを活かすこと・・・なのです。

緑の列島木の家スクール富山事務局 草野鉄男