公開イベント

2010年6月5日 記録ビデオ: 実務者・会場との質疑応答

フォーラムの記録ビデオを公開します。ビデオは基本的にプログラム毎に分割し、記録時間が長いものはさらに複数のビデオにわけてあります。各ビデオはパソコンの小さな画面でもわかりやすいように編集を施してありますが、発言自体はノーカットで収録しています。

設計法部会、実験検証部会:part 1
実務者・会場との質疑応答

実務者との質疑応答

古川:熊本から来ました。熊本の市内の一番南の川尻という非常に田舎から来まして、JRで来たんですけれども、だんだんここに来る程、町並みが綺麗で見苦しくなっているというのを感じたような次第です。熊本から来た古川です。どうぞ、お見知り置きを。

岩波:滋賀県の大津市から来ました。私はいつも木造住宅の設計とかを行っています。昨年度までの委員会の方も委員をさせていただきまして、今年は実験検証部会の委員もさせていただいています。非力ですけれども何とか頑張っていきたいと思っています。よろしくお願いします。

綾部:埼玉県の川越市から参りました、綾部工務店の綾部と申します。小さな大工工務店をしております。実際に現場で起こっていく色んな事を、この委員会の中に反映させていけるよう、努力していきたいと思っています。よろしくお願いします。

奥田:ありがとうございます。今、お二方の先生からご説明があった中で、今までの委員会で「これでいいのか」と、色々ご意見があった中で、新しい委員会に望むことを、まず古川さんから一言ずつお願いできたらと思います。

古川:今日の役目が会場の皆さんに成り替わって、お二方に聞くような内容にせよ、という指令を受けていまして。まず後藤先生に。今実験を一月になさるということを聞いたんですけれども、その前に鈴木先生が2007年に実験されている建物がございまして、非常に似ていると。事業仕分ではないけれど、税金の無駄ではないかなという見方を片方で私はしまして。それよりも要素実験をいっぱいした方がいいんじゃなかな、という風な気を持ちました。それに対するご回答をお願いしたい。それから、斉藤先生には、今伝統構法は非常に環境にいいんだとか、産業廃棄物も少ないんだということで、皆さん志向している訳ですけれども、重さを測ったら、建物の重さと基礎の重さが一緒なんですね。つまり、計算しますと、仕様規定の基礎がございます。今度、瑕疵担保履行法の基準を守ると、ベタ基礎の鉄筋量が多くなるんです。手計算で計算したら、まだ多くなるんですね。普通だったら逆なのに、計算すればするほどコンクリートが多くなる。つまり、建物の重さと基礎の重さが一緒なんですね。こんだけ環境がいいというのは、昔は石の上に載っていただけじゃないか。コンクリートにしたら、そんなにコンクリートを使わなきゃいかんのじゃないかという疑問を持っていますんで、上部構造だけじゃなくて、基礎構造のコンクリートを減らす設計もできないのかのかなという疑問、その二つをお願いします。

後藤主査:今、2007年の試験体と同じ形状かということですけれども、わざと同じ形状にしているという方が正しい訳で、それぞれ実験の目的が違う訳です。2007年にやった実験の時には壁が後ろに付いている。それで石場建てでどんな程度の特性があるかということを把握すると。今回の実験は、上部構造と連携して石場建ての足がどんな風になるかというパラメーター実験を含めていく。ですから2007年のデータ、プラス、いくつかのパラメーターが入っていくので、パラメーターとして増えるので、より現象が明確にできるという意味で、二列三室ということに落ち付きました。それから、要素実験数を多くするということですけれども、これはもうかなりの要素実験をしようと思っています。今、歴史・構法部会の麓先生の方から、歴史的には接合部は105種類あるというお話を聞いています。場合によってはそれを全て、プラス樹種も当然考えています。これは小松先生の材料部会の方ですけれども。今は皆さん、全部杉で実験して、それが一番弱いから、それで担保できれば後は檜でやろうが何でやろうが、強ければ強い方がいいという。今度は伝統構法の場合はあんまり強くし過ぎると、石場建ての場合は飛んでいく可能性もあるかもしれない。とすると、上限の方も把握しないといけない、ということになると、データベース、ちょっと材料の話は、あまりできませんでしたけれども、樹種によって同じ接合部でもデータとして取っていく必要があるのかなと。その辺はまた、材料部会、構法部会と連携して、数限りなく実験できればいいんですけれども、ある程度予算もありますから、その辺でちょっと絞り込んでやっていきたいという風に考えております。

斉藤主査:今の、上の重量と基礎の重量が同じで、もうちょっと基礎の設計量がなんとかならへんかという話なんですけれども。今回の設計法では、単に石場建ての足元が動かないだけじゃなくて、その下の基礎も含めてセットで考えようということを今考えている。だから、ただ単に動く場合でもどの位までと、そういう話だけではなくて、やはり足元をちゃんとやっとかないとですね、本当の意味での安全性を確保できないということになりますから、これはセットで考えようということ。それで私が考えてちょっと感じているのはですね、特に今同じくらいの重さになるということでしたけれども、それは地盤条件とかその他の条件によって変わりますけれども、一つは設計の仕方がマズイと思いますね。やはり、もっとうまい設計の仕方があると思います。基礎についていえば、特に先程言った新潟県中越地震とか、中越沖地震なんかで割りと多くみられた液状化による、足元がグチャグチャになって、建物は大丈夫だったんだけれども、被害としては非常に大きい。足元が無茶になってしまっている。こういうものに対しても、液状化が予想されるようなところでは、どうしておいたらいいのかということが、また別途あると思います。それで、話がちょっと極端なことになりますけれども、例えば東本願寺御影堂という、去年修復工事が終わりましたけれども、あの大きな建物はですね、下に大きな切石の上にドーンと載っているですけれども。その石だけなんですね。あの建物の場合はですね、面積あたりの重量になると、鉄筋コンクリート造よりもちょっと重いくらいの重さがあるんです。建っている地盤はかなりいいものですから、特に沈下をしたりとか、そういったことは起こっていないんですけれども。あの建物の場合はですね、耐力的にはかなり低いんですね。ですから、大きな地震が来てもまず足元が動くことは、ほとんど可能性としてはゼロですから、石の上にドーンと載っているだけなんですけれども、大地震時の固有周期というと6秒とか非常にゆっくりした揺れになるんですね。そうすると、耐力的にも非常に低いですから、全然滑るような入力にならないんです。建物によってはそういう風なものが当然ある訳でして、住宅の場合はそういう状態にもっていくというのは、かなり難しい部分もありますけれども。全く足元が動かない、何もしないんだけれども動かないこともあるんですね。どちらにしても、今のことについては、ただ柱脚どうのじゃなくて、基礎も一緒に考えると、今考えています。それでよろしいでしょうか。

岩波:皆さんもご存じのように、建築基準法で伝統構法がいじめられるようになって、去年、立命館とか東京の方で行われたフォーラムとかで、伝統構法って一体何なのか、国の文化であって守らないかんのやと、そんな話をずっとさせてきていただいたんですけれども、単純に強度とかそういったことだけじゃなくて、文化が守れなかったら意味がないんですよと、その中で石場建てがどうのこうのという話もさせていただきました。その中で、皆さん、建築基準法がこんなに厳しい中で、大工さんなり、設計者の方が、限界耐力法なんかを駆使しながら、更に工夫しながら、色んな建物を頑張って建てておられる訳ですけれど。これをどうにかせないかんという中で、一つの考え方として、私は職人として頑張っているんやから、私の腕に任せて任せておいてくれ、という様なやり方もあると思うんですけれども、やはり住宅とか伝統構法っていうのは、国民のためのもんやということを考えると、もう少しひとつの基準というものがあって、国民の人が安心して任せられるということも必要なんじゃないかなという様なことも必要じゃないかという風に思っています。その中で委員会とか参加させていただいたり、今回、実験の建物をどうするんのやという話をしていて、とことん感じたことは、私ら、建築基準法とかにスゴイ引っ張られているなと。47条にボルトとか、カスガイとか、込栓を打ちなさいと書いてあると。大工さんとかは、ボルトとかカスガイを使いたくないんで、じゃぁ込栓で行こうみたいな感覚でね、伝統構法の本当に伝統は何なのか、みたいなことまで考えてやっているのかと感じるようになってきました。その中で、伝統的な建物は、柔らかい建物は力を逃がすのや、と言っておきながら、大工さんの話を聞いていると、こうやってガッチリ固めるのや、みたいな、若干矛盾あるんじゃないかな、というようなことも考えたりしています。そういう中で2つ質問させていただきたいんですけれど、今回の実験の中で一定の柔らかさので、うまく滑らないような形っていうようなこともあるんですけれども、やはり大工さんの中には、しっかり上部構造を固めたいっていう人も居ると思うんですけれども、そういったものに関して、実験ではね、先程後藤先生が言ったように、堅い建物とかパラメータ色々作って、大丈夫かということはできると思うんですが、設計法はすぐにはできないかもしれないけど、どういう様な形になっていくんやろ、ということが一つ。それから後、色んな実験をされるということですけれども、今いったように、金物を使いたくないから、込栓やったらええって書いてあるから、込栓、込栓、渡り顎やったらええやろ、とか。いろんな各種の継手とか仕口とか、そういった形が、どこまで設計に盛り込まれるようになっていくのか、すぐは難しいと思いますけれども、かなりやればやるほど設計法も難しくなると思いますけれども、簡単にしようとすると制約を受けるし、そういう法律がないと国民の方に選択されないんじゃないかと思うんですけれども。ちょっと、そういう辺りが難しいと思うんですけれども。何かお話いただければ、ありがたいと思います。

斉藤主査:まず最初の(質問)は、要するに「足元が滑ってしまうかもしれないけども、ガッチリ上を固めて造りたい」という場合どうなるか、という話ですね。これは、当然その作り手といいますか大工さんの考え方が色々あると思いますから、必ずしも「上の強度をあまり上げないで、それで滑らない設計にしよう」というのは、それで全部できるかというと、なかなか難しいと思うんですね。これは京町家の(実験の)時に、まさにその移築のほうはですね、先程もいいましたけれどもほとんど動いていない。ところが新築の方はやっぱり動いたんですね。動いて足元がちょっと金物に当たって、そこの部分は壊れたんですけれども。もう既に実際に実験した中でも、足元が動いたり動かなかったりという事が起こっているわけです。「上をどうしても固めたい、それで足元が動いても大丈夫なようにどうしたらいいか」っていう、そういう話もあろうかと思いますけど。それは、今まだ結論的に「こういうことだったらOKになる」という見通しを今まだつけているわけでもなくて、一応とにかく色んな可能性ですね、たとえば「かなり上を固めて圧縮の結果として足元が動く、動くけれどもこういう状況で、たとえば移動量もこれくらいでおさまりそう」で、だから「こうやったら一応安全性が確保できますよ」ということがある程度確認できるのであれば、それもひとつのやり方としてあるかもしれません。だから、それはとにかくどちらにしても「こういうのはあり得ない」という形でスタートするっていうことは全く考えていませんで、色んな組み合わせを全部考えてですね、結果として「これはやっぱり、あまりにもちょっと実際の設計法の中に取り入れるのはちょっと難しい」というのが出てくるかもしれませんけれども。今は、そういうことで行こうかなと。それから、さきほどの継手仕口の話はですね、これは今の構法・歴史部会で特に麓先生なんかもその辺にこう「色んな継手をまとめるとこの程度だよ」というふうな資料が出てくるんですけれども、これをたぶん全部考えて「どんな継手にでも対応できるようにする」っていうのは、可能性としてそれはあるんでしょうけれども。まずは、とにかく一番よく使われていること、といいますかね、ある性能を持っているとして、とりあえずはまず設計法を作ってですね、その中で色んな継手の性能をどうやってそこに逆に盛り込んでいくかという(ことです)。私は今、2年目以降に構法・歴史部会でも色々まとめられた成果を順次そこに反映させるといいますか、そういう形にたぶんなっていくのではないかと思っています。最初からそれを、全部あらゆるものをドーンとそれを全部取り入れる形で行くと、最初に言いましたように前に進みにくい部分もありますので。とにかくですね、何ていいますか、こう後ろ向きじゃなくて、前へとにかくまず進めなければいけないですし、とにかく、それと最初からこんなのあり得ないという話はないと。その両方なんですね。それでとりあえず行ってみてですね。だけど、確実に一方では進めないといけないという、まぁかなり難しい話ですけれども。一応、考え方としてはそういう考え方でいきます。

設計法部会、実験検証部会:part 2
実務者・会場との質疑応答

実務者との質疑応答(続き)

綾部:具体的に、私の方は設計も行いながらということはあるんですけれども、施工を実際にやっている者として、確認申請の厳格化から確認申請自体がもう出せない状況になって来ていると。実際に出していける土壌というのはあるんですけれども、出すに至らない建て主さんとのやりとり、まぁ色んな状況をお話すると、金銭面だとか申請の期間とかそういうことに関して、なかなかこう折り合いがつかない事例というのがありまして。そんな中で去年、確認申請を出して限界耐力計算で適判に送って、何とか確認申請を取った物件があるんですけれども。実務として構造計算をやっていこうとすると、大工としての知識、それと構造計算としての知識、両方合わせ持った形でないと伝統構法の建物の構造計算というのは非常に難しいと思うんですね。そういう中で先程のお話で「より使いやすい方法」を考えていく、ということですけれども、具体的に「より使いやすい方法」というのはどういうような形になっていくのか、お教えいただければと思うのですが。

斉藤主査:ひとつは2007年の法改正までは、比較的そんなに負担が大きすぎてどうにもならないということではなくて、まあまあこの程度だったら仕方がないかくらいの感じで、期間もそれほど長くかからないで一応建築確認が下りた、という風に私は認識しているんですけれども。それが2007年の法改正で、とにかく規模に関わらず、限界耐力計算を使うと適判の対象になると。それで非常に確認が下ろしにくくなっていると。期間も今おっしゃったように非常に長くかかっていると。これはただ単に設計する側だけじゃなくて、審査する方もどこまでどう審査したらいいか、という両方困っている部分がある訳ですね。今回、できるだけ負担を減らす、あるいはやりやすくするという中で、ひとつは実際の今の適判にかかっている内容を見てみますと、いわゆる耐震設計以外の部分で相当労力が割かれている。つまり、常時荷重、あるいは積載荷重、積雪荷重、そういったものを事細かく検討しないといけない。あるいは、とにかく、これは基本的には手計算ですから。特に木造の場合は、他の構造と比べて一番違うと思うのは、柱がものすごく多い。しかも柱の軸力を全部キチッと計算しないといけない。その辺りが非常に煩雑になっていて、書類もいっぱい作らないといけない。だから、むしろ、限界耐力計算でやっている部分とそれ以外の部分を分けてみると、それ以外の部分の負担が非常に大きすぎる、というのがまず現状だと思います。だから、これはもともと、たとえば、伝統構法は、常時、固定荷重、積載荷重で大きな問題があるなんていう話は特に聞いていない訳です。これが普通の四号建築物ですと、そういう検討は何もいらないですね。それが、伝統構法で限界耐力計算を適用した途端にそういう事を全部やらなければならない。これは法的には限界耐力計算であらゆる荷重、外力に対して一応安全性を検討しなさいということですから、仕方がないといえばそうなんですけれども。それがまずは一番大変になっている理由だと思いますね。今、鈴木先生が建築基準法の見直しの委員会に出ておられまして、そこにも要望を出されているんですけれども。限界耐力計算を使う場合でも、四号相当のような小規模な建物の場合は、それを免除できないか、ということがあります。だからたぶん、私はまず耐震設計と一部の風、特に吹上とかそういうものに対して問題ないかどうか、そういう事をやれば、後は特別たとえば今までにないような大きなスパンの建物を作るとか、そういうことになればまた少し検討が要るのかもしれませんけれども。だから、ある最低限の条件を付けて、それでそういう他の部位、固定荷重、積載荷重に対しての検討というのは省略するということで。これは今まで実際に江戸時代後期からできているものが、別にそれで大きな問題を起こしているわけではない訳ですね。だから、そのへんをまずちゃんとやって行きたいということはあります。これは今、設計マニュアル技術検討WGの中で、現在やっている確認申請あるいは適判の内容について、本当にこれはどうしても要るものといらないもののまず仕訳をしようということで、その作業をやっていますし、できるだけ早い時期にこれはそういう方向に持っていきたいというのはある。それから、もうひとつは、いくら設計法でまぁまぁ構造力学的に問題が残っているということですけれども、たとえば床の変形を考慮すると、限界耐力計算というのは専門的な要素ですけれども一自由度系ということで今やっている。代表変位でどの位地震時に変形するか、ということをやっている訳ですけれども。それは基本的には剛床仮定で、いわゆる床が変形しないという前提条件ですけれども。それが結構大きな変形するとなると、それとは別にその影響をどう考慮していくかということをやらないといけない。それを非常に難しい方法をそこに導入するとこれはまた非常に検討そのものが大変なことになる可能性がある。ですからそういう当然考慮しないといけないんですけれども、最小限のチェックの方法で、ある程度安全性の最大変形もちゃんとチェックできると。そのへんが先ほど言った設計のクライテリアとも関係するんですけれども。私は今、ひとつの案としてですよ、限界耐力計算でやる場合に、今普通にやっているいわゆる代表変位の変形と、一番架構の中で変形しやすい剛性が少ない要するに構造耐震要素構造要素が一番少ない架構を単独にそこだけを計算してみて、最大になる部分と代表の変位をふたつ定義して、例えば代表変位は1/25、最大変位は1/15、それでもいいんではないかと。それを最大で全部押えてしまうと少し過剰に制限しすぎるんではないかと。だからそういったことも含めて、できるだけそういうまだ未解決のものを取り込むにしても、そのためにまた非常に設計法といいますか限界耐力計算が非常に煩雑になって、使いにくいものにはできるだけならないようにと、今考えている。

奥田:ありがとうございました。そんなところでご説明の方はご理解いただけましたでしょうか。ここで、今の檀上の実務者の方にご意見を頂いたんですけれども、会場の方からいつくかご意見をいただきたいと思いますので、ご質問等ございましたら。時間がちょっと押しておりますので、端的に今設計法と実験検証、斉藤先生、後藤先生に対してこんなことを聞いてみたいということがありましたら、手を挙げていただきながら…

会場との質疑応答

辻:大阪から参りました辻と申します。 今日は伝統構法のキックオフフォーラムということで、素晴らしい先生方にお会いできてお話を聞けたことをよかったと思います。大変基本的な質問で恐縮なんですけれども、斉藤先生もおっしゃっていたように、皆さんもおっしゃっていたように、四号でも適判に周ると。ひとつ不思議に思っているのは、四号は六条の三で「四号の構造は確認しない」というふうになっていますよね。それなのになぜ適判に周るっていう風になるのかわからないということですけれども。四号特例ですね。四号特例で建築士が設計したものは構造を確認しないというふうに法律ではなっていると思うんですけれども、確認しないものが、なぜその先の適判に周らなければならないのか、ちょっとよくわからないので、ご回答お願いします。

奥田:今のご質問については古川さんが一番お詳しいのではないかと…

古川:私でございますか? 僕の認識している範囲で。まずは、今の四号という下地に構造の規定、これ皆さんご存じの仕様規定というものがございまして、その中で木造、これは在来木造、一般的な木造を建てる時に国が全部決めている訳ですね。柱の大きさから、筋交つけたりどうしなさい、それについての検証は壁量計算程度でいいよと、というようなことで、そういう規定を設けています。ところが、限界耐力計算になぜなるかというと、仕様規定から外れた状況で設計しているからです。ですから、仕様規定通りにやっていればそういうことが起こってこないんですけれども。逆に仕様規定を、ここはふたつ考えがございまして、ひとつは仕様規定では、筋交がないとか金物を使わないというのは建てられない。ところが、そこから外れたところで設計しようと思いますと、限界耐力計算とか色んな方法がございます。ただまぁ、色んな合理性も含めて考えますと、今のところは限界耐力計算かなと。それでやっている関係上、限界耐力計算が高度な設計というところの枠に入ってございまして、それで致し方なく適合性判定という手続きに周っていくということで間違っていませんか。ご理解いただけましたでしょうか。

辻:よろしいですか。高度な構造計算であろうが、限界耐力計算であろうが、全て法二十条の下にあるものですよね。六条の三の中に法二十条は審査しないとなっているんですから、適判に周るのも、高度な構造計算であるとかどうとかそういうことは全く関係なくて、構造自体を建築士が設計した四号建物は審査しないというふうに法律で明記されているわけですよね、六条の三というのは。仕様規定のことではなくて全ての構造です。法二十条ですから。適判へ廻るのはどう考えてもおかしいなと思うんですけれども、いかがでしょう。

岩波:とりあえず、法改正の、法解釈の問題は色々あると思うんですが、今日はせっかくこの実験の話とかあれなんで。また、そういうフォーラムを別途させていただいてね。今日はせっかく先生方のその辺の実験とか設計法のご質問をしていただいた方がいいんじゃないですか。また、お話しましょう。

辻:わかりました。設計法には大変期待をしています。よろしくお願いします。

設計法部会、実験検証部会:part 3
実務者・会場との質疑応答

会場との質疑応答(続き)

山口:埼玉から来ました大工の山口です。先日の事業仕分の中で、建築研究所が伝統構法の実大実験をやっていって、それを疑似法の中に組み込んでいく事業をやるということを言っているんですが。更に越海さんの方にこの事を聞いた時には所管の部署でないからわからないと。所管の部署に聞いたらば、共同研究でやると。今回のこの実験の検証委員会と共同研究でやると言うことなんですけれども、どちらが本当なんでしょうか。それとも、共同研究だとすればどちらが主体になってどういう役割分担をするんでしょうか。別々にやるんだとすると、また二重基準のような形になって、建築研究所で設計法ができて、こちらでもまた設計法ができてと言ったら、実務者が大変困難なことになってくるっていうのを心配しているんですよ。それともう一点、設計法ができた時に主事さん達が行政会議にかけられていないとなかなか建築確認を出した時に、その設計法でいいというふうに認めてくれないんですけれども。この検討委員会なり委員会を進めていく段階で行政会議の方と連携を取りながら設計法を作るということはできないのでしょうか。二点ほど、お願いします。 

奥田:はじめの仕分云々については、ちょっと今回の主旨からは僕らで判断できない部分がございますので、それについてはちょっと皆さんご回答願える方もいらっしゃらないと思いますし。二点目につきましては、そこは今、鈴木先生が別の建築基準法の合理化の方の会議にも出ていらっしゃいますので、ここのところで色々ご検討いただいたものについて、そこへ挙げていただきながら、特に今日アンケートを配らせていただいた中に先程の適判の話も出ております。そういう中でここで皆さんにご検討いただいた中で特にアンケート書いていただいたものを、近々のそういう会議に挙げていただきながら、今おっしゃった中で、ダブルスタンダードみたいにならへんかとか、そういう事も含めて今後ひとつのシンプルな形の設計法ということをこの委員会では目指しておりますので、そこに期待していただくというようなことでよろしいかなと思いますけれども。他、ございませんか。

木下:あの、すみません、木下ですが。私、最初から、第一回目の坂本さんのあの時にも実務者何人か集まって意見交換会をずーっとやってきたんやけれど。あの実験の物を、伝統構法に対して実験の物を作るって言う時に、あれ、誰が設計したのかと。あんなもんはね、恥ずかしくてね、あれをまた実験を持って周るっていうことはね、大工を侮辱しているのも甚だしい。あれは誰がやって、誰の責任ですか。あれ、税金使ってやっているんですよ。今回も税金使って設計やるんですよね、これ。設計やる人、責任持って貰わな。やっぱね、この世界ね、建築の世界ちゅーのは棟梁は責任持つんですよ。家が壊れたら全部弁償する。自分の資産投げ出してもやる。責任がないからこんなことになるんですよ。今度、皆さんが責任持って国の予算でやるんですけれど、この実験をいくつも作る必要ないんです。カッチリしたものをひとつ作って、そこから緩和していくのが、これが普通なんです。何かね、足りない足りない足りないって、国家の予算みたいにして、段々補強していく言うけど、それはもう伝統構法じゃないんですその時代時代に、その権力者が、その時代の技術を集めて作ったものが現在残って伝統として我々に伝わってきているんですよ。それ、間違うてしまへんか。だから、京都ではね、地盤が硬いので横滑りは一切ありません。文禄の地震に当時の南大門が南門の門が潰れたのは、あれ、ひとつ石やから、あそこでひび割れして地盤が割れたから、あれ裂けたんで。五重の塔は、あれはあの、ただ、通柱ありませんから。あの時にこう横ずれして、地盤の一番、京都では地盤が悪いのは東寺なんです。大きな立派な寺の本山の中では東寺のあの辺がちょっと地盤が軟らかい。だから、地盤の硬い宇治の平等院なんかは、非常に複雑なやにこいやにこい構造やけれど、どないにもなってないというのは、それはやっぱり地盤です。銀閣寺なんかは、今私、銀閣寺の国宝を東京へ持って行くのに検査しましたけれど、室町時代って形が優先しますから、あういう構造で持っていたのは、あれ、東京だったら潰れていますよ。だから、各地方ごとの実験をやって下さい。京都は京都特区を作りましょうや。京都は特別地盤の堅いところが多いんです。だから、京都特区、それ作ればいいんです。それから、各地方に、そういう研究会を、東京一本にやらないで、各地方でこれはやって下さい。そうしないと、税金の無駄遣い。蓮舫さんに、またいわなあかん。

奥田:ご意見、色々お伺いしないといけないんですが、時間の事もございますので、ここで十分ほど休憩をいただきまして、次の構法・歴史部会、それから材料部会の先生方のお話を聞きまして、また最終多少お時間ございますので、その時にまた、ご意見をいただければと思います。今、ちょっと押しておりますけれども、後ろの時計で四時から始めさせていただきますので、またここへお集りいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

構法・歴史部会、材料部会:part 1
実務者・会場との質疑応答

実務者との質疑応答

和田:年の順で並んでるらしいので。徳島から参りました杉を生産しているTSウッドハウス共同組合の和田と申します。TSのTが徳島でSが杉です。

渡邊:東京のほうで工務店をやっております風基建設の渡邉と申します。今まで古い建物の修理等々にかかわってきた、その辺の経験が何か生かせればと思っています。よろしくお願いします。

宮内:滋賀県大津市から参加させてもらってます宮内建築の宮内です。日頃地域材とか木材と向かい合いながら仕事をしています大工です。この委員会で僕ができることというと学術的なことは全くわからないので、大工として感じることを率直に意見に出してそれを伝統構法の委員会のほうで評価していって頂けたらいいかなと思い、常日頃頑張っております。よろしくお願いします。

奥田:先ほどと一緒で実務の方、あがって頂いておりますが、麓先生、小松先生の先ほどのご説明を踏まえてですね、和田さんのほうから期待も含めてですね、ご発言いただきたいと思うんですけれども。よろしくお願いいたします。

和田:歴史部会のほうには言える範囲が限られてくるんですけれども、かなり文化財とかいろんな材料と今我々林業が育てて今生産できている材料とがやはり物が違うというか、日本の山がまだ戦後の復興をまだ経ていないものですから、そういう意味でちょっと少し材料的な問題もいろいろあると思うんで、特に2007年の実験のとき私たちから材料を出させて頂いたのですけれども、やっぱり材料を出すというのは非常に責任が重いものですから、なかなかやっぱりこんな材料でという声も一部聞こえてきたこともあります。だけどやっぱり日本の山の人工林の現状だとしょうがないというか、この範囲かなと思っています。この委員会を含めてですね、この前のいろんな柱材の産地まで見学に行ったんですけど、逆に今何も手をうたないとうちらの山よりもっと立派な木がですね高温乾燥してプレカットで金物で使われていくと、非常に寂しい想いをしてます。やっぱり材料を生かしていただけるのは、私は大工さんの技術だと思っておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。それと、小松先生に関しては、私の言いたいことを全て、小松先生に言って頂いた感じがしまして、特に去年、天然乾燥のアンケートをやったことを評価をしていただいて、各地で何人かやっぱり自分たちの育てた木はあんな釜に入れて3日であげるような乾燥方法はしたくないというこだわりが全国に30・40ぐらいの数がアンケートあったと思います。各、みんな、何かの気持ちをもって育ててやってます。特に品確法で私たちもお客様を半分失いました。それはなにかというと、プレカット工場が含水率の出荷証明を20%以下という、構造材の出荷証明を我々に要求するわけですね。天乾で20%というのは知らない人間が20っていうわけでして、20まで乾かすのに約、構造材だと約1年くらいかかります。そのとき端部がかなり剪断がはいってきて、はっきり言うと使いにくい材料になってしまうんです。そういう意味で我々、やっぱり30%前後で乾かした、6ヶ月くらい乾かしたときに、大工さんにあとお願いというかたちでやっております。そういうものが天乾であって、乾燥の理論からすると25から初めて乾燥という名前を使っていいのに、30を乾燥という言葉はけしからんというお話もよくあるんですけど、そのへん先生の見解も、今日あれだけ褒めて、一部、いただいたようなので、あらためてお聞きしたいなと思いました。よろしくお願いします。

奥田:乾燥の話の続きをですね、小松先生のほうに、ただ時間のことになりますと、建てる側がそこまで待てるかとか、その手前の土壌整備も必要かと思います。でも乾燥のやり方、いろんなことが、天然乾燥、人工乾燥含めていろんなことが取り沙汰されておりますし、委員会にとっても今後の方針ということを含めまして、理想でも結構でございますので、先ほどの続きを手短にお願いしたいと思います。

小松主査:今回のお話は伝統木造ということですので、やはりそれは木材が主役の建物ですから木材が持っている財産、すなわち心材はちゃんとうまいこと生理現象で、その末代まで品質が保証されるように樹脂成分というのを蓄えているわけですから、それをむやみに人間の浅知恵で取ってしまってそれにまた防腐剤を入れなおすみたいなバカなことだけはやってやらないほうがいい。せっかくもっている、苦労して柔細胞が頼むぞといって、死ぬ間際に言って入れていった貴重な天然のものですから、それは何とかそのまま使いたい。ただしそれをそのまま残して水だけ抜きかえるというのはものすごく時間がかかる。ですから江戸時代みたいな生活テンポだったら理想的だったんですけれど、今はそうはいかないということで、これは今すぐの答えにはならないですけれどもストックがやっぱり一番重要だと。こないだも飲み会で、どっかで語ってたんですけれど、やっぱりストックだよね。どうやって天然乾燥の材料を貯めておくか、つまり2年分くらい貯まってそれからよーいスタートで大きな建物が全部、日本中のが建て始めればうまく廻るはずですよね。ですからその間のストックをどうするかということで、備蓄機構みたいなものをちゃんと合理的につくって、あるいは、僕はそういうのを考えたのですけれども、ある人曰く、各工務店にちょっとずつ備蓄してもらって、それをインターネットで常時合計して、今どのへんで何本くらい供給できるというデータを出せばいけるんじゃないかって、これは名案だなと思いますが、そういった感じで天然乾燥がいいことはもうわかっていますし、まあ30%でも僕はいいと思うんですけれども、大径材になると歪みが小さいですからそんなに影響がないかも知れない。ですからまあ30%でも、まだわかりませんけれども、これから検証しますけれども、もちろん、それを要するにどうやってストックして常時大工さんが使えるかというデータを今の科学技術で、共有するべき、すぐの答えじゃないですけど僕はそれが理想だと思っています。ちょっと逃げの答えになってしまいました。

奥田:ありがとうございました。次、渡邊さん、よろしくお願いします。

渡邊:去年も前回委員会では構法委員会にいたんですが、前回まではですね非常にこう時間軸に対する話が委員会では扱うのが、どちらかというと排除されてたという中でですね、今年から動き出すこの委員会の中では、逆にそこに非常に焦点を当てていただいて、時間軸の中で伝統構法のいろんな要素をですね整理していこうということが麓主査のほうからお話がありまして、非常に心強い想いをしたところであります。その中で2つほど要望というかお聞きしたいなと思う点は、要素としての仕口とか継ぎ手という、ひとつ形にできるものは非常にある程度整理はしやすいかも知れない。それからひとつ時間軸の流れの中で、いろんな変遷をたどってきたときに、たとえば各部材断面との関係とか、それから材料自体との関係、こういうものも要素として形態とともに断面それから材質という点もですね非常に大きなポイントではないかと、たとえば関東の民家をみてますと、江戸初期の柱の太さは大体5寸なんですね。それがだんだん江戸中期以降になると差しものが出てきたり大黒柱が出てくることによって、だんだんその柱が4寸5分とか細くなってくるみたいな、断面形状が変わってくるというようなこともひとつあります。そんなこともあるので是非断面と仕口の関係、あるいは材質ですね。関東では杉か松しかほぼ民家の場合、構造材としてありませんので、西のほうへ来ますとそれが当然変わってきますので、その辺の兼ね合いも含めてですね、その点もちょっと考慮に入れて頂ければなと。その中で最終的に構法計画というか、今までの時間軸の中で、それを造ったのは大工さんですから、大工さんたちはいったいどういう考え方の元でこういうものを造ってきたのかというふうなところに焦点をあてて、整理できることがあればいかがなものかなというふうに思うんですが。

奥田:麓先生、今のとこ、お願いいたします。

麓主査:今の渡邉さんの質問の最初の、部材断面寸法であるとかあるいは材質であるとかということについては、さきほど基本的にこの私の部会で調べていく二つの大きな柱の内の古い教科書的な古典建築書と文化財遺構を調べていくという二つの方でいえば、あと、後者の文化財遺構のほうになると思います。それで文化財遺構にはちゃんとそういう部材寸法も書かれておりますし材質も書かれておりますので、それを作業いたしました400棟近い建物について、まず住宅関係で400棟近い建物について、そういう点まで整理分析していこうと考えておりました。そういうことは割と分析がしやすいんですけれど、そこから二つ目の当時の大工さんがどういうふうに考えてこういう変遷になったのか、あるいは地域差があったのはどういうふうに考えているのか。そのへんは非常に気になるおもしろいことなんですけど、それは簡単にデータを集めてそれを簡単に分析すればいいということだけではなくて、ですからそのへんはデータをちゃんと把握した上で、こんどは部会の実務者の方たちと一緒に検討していきたいなというふうに考えております。

奥田:ありがとうございました。先ほどの構法歴史、伝統的なというとこの伝統とはいつ頃のものかということを、先ほど麓先生結構きちっと仰っていましたので、まずは先ほど仰った江戸から明治、そこら辺のとこらへんの仕口も含めてですね、まず実験検証のほうで今度試験体を作るというときには、そういういろんなお考えを入れながら検討していってやっております。ですから今まで歴史のことというのは、まずは建物建物ということで、実験をやるとき、こんな仕口だろうということでやっていたものがもう少し重しが乗ったといいますか、きちっとした整理がつくような状況になんとかしていこうというようなことも考えておりまして、麓先生に期待するとこがすごく大きいと思っておりますので、そのことを踏まえて頑張っていただきたいと思っています。それから、最後に宮内さんのほうから。

構法・歴史部会、材料部会:part 2
実務者・会場との質疑応答

実務者との質疑応答(続き)

宮内:先ほど麓先生がお話しされてました、最後に、真の伝統構法という話が出たんですけれども、何を持って真の伝統構法というのかなというのが、そこが多分永久のテーマだと思うんですけれども、先生が言っておられたみたいに江戸後期から明治の建物を主体にということなんですけれども、当時の暮らし、神社仏閣なんかはある程度ルールがあると思うんですけども、住宅に関してはその時代その時代の社会的背景とかいろんなことがあって建物というのが変わっていっていると思うんですけれど、当時、電気もない、ガスもない、暖房器具とかそういう設備がない時代の建物と今そういうことをすごく要求されている建物との違いというのはかなりあると思うんですけれども、構法分類部会でこれが伝統的な形やろうという提案が多分出てくるとは思うんですけれど、やはりそこがこれから我々が建てる建物が100年後伝統と言われるか言われないかというのは、そのときの人に任せなければ仕方ないことなんですけど、この委員会でどこをこれからの伝統といわれる建物と今までの伝統といわれてきた建物との摺り合わせというか、どこにその結論がでてくるのかなというのがすごく興味があるところで。現場で造ってる大工が一番そこをちゃんと感じて造っていかなあかんとおもうんですけども、研究者の立場としてそこらをどう考えておられるのかなというのが聞きたいのと、あと、小松先生のお話ですごくうれしかったのが天然乾燥が大好きやということで。大概材料の乾燥を研究されている研究者の方というのは天然乾燥批判派の人が多くて、すごくいつも痛めつけられるように言われるんですけれども、この伝統構法委員会の中で材料部会というのがすごくある意味今後の日本の山のこととか木材の扱うその背景のことを考えるとすごく重要な部分じゃないかなと自分自身参加しながら思ってるんですけれども、本当に方針を読ませて頂くと内容が盛りだくさんなんですけれども、確かにこれ全部こなせればかなり木材、特に天然乾燥、我々実務者が望んでいる山の木の使い方とか評価というのがされると思うんですけれども、この3年間でこれだけの量が本当にこなせるのかなというのがすごく、僕も参加しながら責任重たいなと思っているんですけども、そこらちょっと聞いていただきたいなと・・・。

麓主査:真の伝統構法は何かということをいわれましたけれど、私も伝統構法というと、この委員会に関わるまでは、伝統構法というとみんな大体同じようなイメージがあると思ってたんですね。で、私が関わって、これは善し悪しの問題じゃないんですよ、善し悪しじゃないんですけど皆さんそれぞれ実務の方が考えている伝統構法というものが、私が今まで文化財を中心にやってきた、古い古建築をもとにやってきたものとだいぶ違和感があるというか違ってたんですよね。じゃあ文化財は特殊か、今は文化財は特殊ですけれども、たとえば住宅建築、町屋農家にしても建てるときはやっぱりその当時の一般的なやり方をやっていたんですよね。で、そういうものといま皆さんが仰っているような伝統構法がずいぶん違ってきている。その原因は何かというのが、今日最初に話をしたのはそれで、明治以降の建築学の近代化、建築学が発達するに伴って木造建築の近代化というときにずいぶん、一方では金物を使ったり筋かいを使ったりというようなことが有るんですけど、それを除いたら伝統かというとそうじゃなくて、それを除きながら実は建築基準法に合うようにとかいうことでいろいろなより強固な組み方に、継ぎ手仕口とか構法に変わってきたようなんです。それで、皆さん実務の方がそういうことを苦心されているということはいいと思うんですが、最初に私が申しましたようにそういうことが全然検証されないままに今まで来てたんですよね。だから明治の頃に、あるいは大正の頃にいろんなこれからの木構造のあり方というようなことで提案されているんですけど、それは必ずしも伝統的なこと、当時実験をやってちゃんと検証したうえでやってたわけではないんですよね。それをもう今度は建築基準法を見直そうというくらいの気持ちでやってますから、まずはそういう変化がおきる前の構法をちゃんと評価しましょう、実験検証してもらいましょう。で、その上でその通りにはいかないことも出てくるかも知れない。そこで私がいう明治期に改良される以前の伝統的な構法のままではいかなくなったときに、いかないということが検証できたときにそれぞれ工夫をしていただければいい。だから伝統的な構法だけで今後やっていきましょうという話でもないんですよ、私が言いたいのは。まずちゃんとここで伝統的な構法、継ぎ手仕口を含めて伝統的な構法をちゃんと検証しましょうということを、これをまず最初にやりたいということなんです。

奥田:まずは伝統的なものを検証しながらというところで、後藤先生、そこらへん、今後の目標として、伝統的なものについての実験等についてはいかがなものでございましょうか。

後藤主査:今麓先生が言われたように、いっぺん原点に戻ってそこからいろんな人がいろんな工夫をしている。昨年、前の委員会でいろんな構法のアンケートをとると収拾がつかない。みんな個人個人で皆さん工夫をされているのでそれを汎用性を持たせてものを言おうとするとなかなかいえない。そういうことを考えると今麓先生が言われたようにいっぺん原点に戻って、原点をしっかり評価して、それにプラス歴史がこう変わってきた、それを評価していくというのはやってみたいな。ただ今宮内さんが言われた3年という期限はちょっと厳しいところもちょっとあるんですけれども、ひょっとしたら5年になるかも知れないんですけど、頑張ってやりたいとは思っています。

奥田:ありがとうございました。小松先生は、さきほどの・・・。

小松主査:質問としては本当にできるのかということですが、あまり、なんて言っていいかな、私一人でやるわけじゃもちろんないんですけども、後ろを見ていただきますとですね我々の部会というのは割と人数が多いんですよね。それで、全国に散らばってまして、実を申しますと私は学校を出てすぐに北海道の試験場に勤めて10年やりまして、で、次は筑波の試験場に10年やりまして、それで大学に来てるんですけど。その間、試験場というところは来る日も来る日も試験してる。木材をかついで、また試験か、というそんな毎日ばっかりやっていたんですけども。ですから打たれ強いといいますか、数にはなれてまして、100本200本はもう屁の河童なんです。ですからもう今は研究室の連中、悲鳴上げてますけど、僕はすぐに2・300本のオーダーで仕事をやってしまうんでもうみんなヒーヒー言ってますけど、それをみんなで分散して、実力のある人を選びましたので、多分、絶対とはいえませんけど、努力して頑張れば、伝統構法のために頑張るということで、やれると思います。やれるといってしまったらまずいかも知れないけど、頑張ります。

奥田:大変心強いお言葉でございまして。壇上だけでいろいろやり取りをしていても何ですので、時間もあまりないのですけれども、2・3また会場の方からご意見をいただきたいと思いますので、どうぞ。

会場との質疑応答

井田:埼玉で設計させてもらってます井田と申します。今日はお疲れ様です。非常にすばらしい話し合いかなと思ってすごく前向きな気持ちで聞かせてもらいました。まあ前向きなつもりでお話をさせてもらうんですけども、この新委員会の位置ですね。位置づけ。さっきの質問にちょっとありましたけれども、今、いろんな小松先生のおもしろいユーモアにあふれるご回答もありながら、麓先生の基準法も変えてみるぐらいの勢いで皆さんの熱意は伝わるんですけどね、実際に本当にそのくらいのことが期待しちゃっていいのかどうかというのが、今聞いていると、例えがすごく失礼かも知れないですけど去年の総選挙前の沖縄の人たちじゃないですけど、最低でも県外とかいって今のこの状況ですよね、決してこれは笑い事じゃなくて、2年前にも同じように前委員会の時に、私もたまたま縁があって住木センターのほうで集まりが、永田さんに呼ばれて行ったんですけれど、同じことをやられてたんですね。こんなオープンじゃないですよ。すごく2年間成長したな、またすばらしい方向付けもできて、鈴木委員長のもと、すばらしい未来が見えているかのように思うんですね。ただこの2年間を思うとまた政権がかわるわけじゃないでしょうけども、また3年後にですねこれから頑張りましょうというフォーラムが開かれるのかなと思うとすごく寂しい気がしないこともないんです。これ前向きの話としてですね。誰ということないんですが室長いないんですかね。室長に聞きたかったんですけど、位置付けとして皆さんここでいろんな人が携わってここで決めたのはもうさきほど鈴木先生のパワーポイントか斉藤先生のパワーポイントだかわかんなかったですけど、10年、今年に田の字型プランぐらいであればマニュアルを、改訂版じゃないですけど、していこうよと、そういう動きを話されていたということは、それは安全限界も含めて30分の1じゃなくても一部ここでやれば20分の1、25分の1でもいいんじゃないかっていうお話もされていたんですけど、実際私たち実務をしている人間からすると、1年1年が大変な思いをして実務をさせてもらっているんですね。最近もやっとの思いで確認を通させてもらって非常に関東のほうはですね切ないくらい行政のほうも寂しい限りなんですね。そういったところでまた3年後にこういう会が、非常にもっとスペシャルなグレードアップした会かもしれませんけど、やっぱり一定の成果を求めたいんですね。これだけ予算もかかっていると言うことであれば。是非ちょっと室長がいないんであれば鈴木先生、大変失礼なんですけれども、前回の時の主査は大橋先生だったんですけれども、「石場建てを絶対に盛り上げるから頑張ってやる」と意気込みを言ってくれと僕いったんです。そうしたら何も言えなかったんですね。あの人には期待できないなと思ったらそのままだったんです。で、石場建てをやるぞなんて先生にはいいません。ただ3年後とか、このくらいの資料が民主党でいえばマニュフェスト的なものであれば、全部ができるとは確かに思いません、今の話を聞いてもね。でもこのくらいまでは期待してもらってもいいかなというお話を最後じゃないかも知れないけどちょっとお聞きして埼玉へ帰りたいなと思いますけど。失礼します。

鈴木祥之委員長:関東と関西で伝統構法のいわゆる建築情勢的な取扱いが違うのでよくわかります。それで今回、前回はこの委員会、いわゆる住宅局の中の木造振興室だけの企画だったんですね。今度は住宅局の中の建築指導課、これの二つの課でやりますので、今日は杉藤さん来ておられませんけども、建築指導課の杉藤さんが頑張ってやって頂けると。それで我々も同じ疑問なんです。じゃあ我々技術的な検討を一生懸命やって設計法なり何かできましたよと、で終わってしまったのでは何もならない。建築指導課がきちっとそれを認めて頂いて、建築基準法の改正なり告示なり、それまでもっていっていただかなければ意味がないんですよね。そういう意味で建築指導課が入ってきて頂いています。ということで、そういう意味だけでも少し前進かなと思っています。それから、緊急対応ということで今日も私も最初に少し申し上げましたし、齋藤先生のほうからもありましたけれども、設計マニュアル技術検討ワーキングということで、これはいわゆる設計法部会だけじゃなくて、もう少し広い、そういう意味で動き始めて、要は緊急課題というで、これは建築基準法の現在国交省でやってます見直し検討とリンクするようなかたちで、だから運用の改善という意味だけでしたら、今の国交省の見直しのほうでもある程度可能かなと思ってるんですけれども。まだ結構いわゆる4号建築物相当の適判、そういうようなものに関して弁護士等が結構反対意見も出てるんで、これからどうなっていくか先はわかりませんが。いずれにしてもそっちの方向には動いていくだろうなと期待してます。そういうようなことで、こちらの委員会は法律を作るというよりも、それを作る基になる技術検討、これをしっかりやって、それで国交省とはしっかりお話をさせていただきたい。それともうひとつ大きな問題は、各特定行政庁、要は建築士等(?)だとかそういうものの建築確認をおこなう部署の対応ですよね。今はほとんどの行政は確認申請は受けられる。でも中身の技術的な検討はできませんと、それで適判に廻しますという話なんですよね。もともと適判というのはダブルチェックの意味ですよね。だから確認申請を受け付けたところがチェックして、なおかつ計算方法がちゃんと合っているかどうかというので適判というのがあるんだと思うんですね。だから今、限界耐力計算なんかで確認申請を出すとその部分はそっくり適判のほうで見てくれと、私どもはみられませんと、その姿勢が問題なんですね。だから4号建築物等で適判なくしてしまうと、私たちみられませんよと、みるとこありませんよと、そういう話なんですね。だからそれではちょっと困るので、そこのところをもう少し国なんかがきちっと各自治体等に指導していただくなり、もし本当にみられないのであれば、また我々、講習会だとかいろんなことを企画して、それで学んで頂いてやってほしいなと思ってるんですけどね。もう少し行政の方も勉強していただいて、そして法律が変わっているのだから、変わった法律の下でちゃんと見られるように、そういふうにしていただかなければいけないなと思ってます。それで私、国交省のその建築基準法の見直しの検討の委員会に毎回出てその話するんですけどね。もう少し行政の方でちゃんと見ていただけませんかとかいってね。それに関してもなかなか返事が返ってこないですね。そんな状況で、もう少しお待ち頂ければ、もう少し進んでいくと思いますので。期待していただくのと、それと皆さん方のいわゆる実務者の声というのは結構反映されますので、また実務者の方々も応援していただきたいと思います。よろしくお願いします。

井田:どうもありがとうございました。政治主導でね馬淵さん最初言ってましたけども、今回こういう会が、委員会変わったんであれば、是非皆さんの声で、組閣で馬淵さんどうなるかわからないですけど、いろんなところから国交省にアタックしてもらって、提案だけで終わっては本当に意味がないと思うので、是非行政のほうを動かせるだけの皆さんの力で頑張ってもらいたいと思います。ありがとうございました。

構法・歴史部会、材料部会:part 3
実務者・会場との質疑応答

会場との質疑応答(続き)

奥田:あと一点だけ、別の方に、初めての方に、誰か。いらっしゃいませんですかね。

棚橋:立命館大学の棚橋でございます。伝統構法で私は仕口のめり込みばかり研究しておる関係で、その立場からちょっと今回の委員会全体のことに少し私なりの意見を申し上げさせてください。実は、木材をいろいろ勉強されている方はよくご承知と思いますが、めり込みは通常、縦圧縮じゃなくて、横圧縮ですよね。横方向に圧縮を受ける。そのときのヤング係数、堅さと強度、降伏応力度、これがめり込みの仕口に大きな影響を与える。ところが年輪の向きがそれに非常に大きく関わっておりまして、いわゆる追柾になると、それじゃないほうに比べると2倍3倍ヤング係数も強度も差があるんです。それを無視して実験等やりましても、合う、合わないって全く意味がない。そのことを私なりに皆さんに是非、御承知の方も多いんですが。それがどれに関わるか、実は実験の、要素実験ですね、これに決定的に関わります。材料実験は是非、横圧縮の材料実験、あるいはヤング係数等とってもらいたい。そうじゃないとコンクリートでF21が28とかいって、材料実験、基本的なこと、普通実験では必ずやるのに、それに近いことができてないことになるんですね。縦圧縮は普通とられると思います、動的にしろ。縦圧縮から横圧縮はもちろん推定はできますが、その中で年輪の角度が変わるとコロコロ変わる。極端に言うと2倍3倍変わる。それを是非強調しておきたい。大工さんもたとえば貫なんかをどういう方向に木取りをして納められるかというのも、意識されているかどうか私は調べたことがないのでわかりません。あるいは現在ある建物でどういう向きの木口の向きが納まっているか、これも実はその建物全体を評価する、耐震性を評価するには非常に重要なデータだと思います。麓先生なんかも、そういう情報が今までのいろんなデータの中にあるのか、ちょっと私、存じませんが、そういう目でも是非みていただきたいなということです。そうじゃないと土壁とかをやっている範囲ではあまり貫というのはそう大きな役割を果たしませんが、仕口が主役になるような、実はこれが伝統木造の一番の強みです。私の思うところは、これが変形性能がきわめて多くて、極端に言ったらどこまでいっても底なしに強い、いうふうに思っております。是非そのへんをご配慮いただいて、材料をそういう目でみていただけたらありがたい。是非こういう場で是非一言申し上げたかった。よろしくお願いします。

奥田:棚橋先生、どうもありがとうございます。といことで、実験ですね、要素実験等含めましてですねそういうことに気をつけながら実験していただくようにということでございます。まことにもっとご意見聞かなければいけないんですけども、鈴木先生のほうから最後に一言ということで、最後に鈴木先生のほうから・・・。

鈴木祥之委員長:今日は第1回目のフォーラムということで、多くの方々、ご参加いただきましてありがとうございました。それから、このフォーラム、また実大振動台実験が終わった後でもまた開催します。それからまた、9月の12日、金沢でシンポジウムを開きます。こちらはもう少し内容が技術的な話になろうかと思いますが、またよろしくお願いします。それと今日はちょっと思ったんですけれども、綾部さんのほうからも質問がありましたけれども、使いやすい設計法ってなんだということなんですが、それで実務の方々が使えるような形ということで、斉藤先生のほうから詳しく仰っていただいてますのでご理解いただけたかと思いますが、一言付け加えたいのは、わかりやすいということでは決してない。使えますけれどもわかりやすいということではないということをご承知していただきたい。というのは、わかりやすいからということでいろんな仮定を設けていくと、誤った方向にどんどん行くわけです。例えば床剛性、床倍率だとか、まあ何だとか、実際解析するのに床の変形なんかしてもらったら困りますから、それで床を剛にする、剛床仮定を設ける。そうすると今度、この剛に仮定したんだから、じゃあ剛につくりましょうとか、そういう方向に行ってしまうわけですね。それは全然元もとの趣旨を理解しないままそういう方向にどんどん進んでしまう。確かにわかりやすいんです。変形しなくって、構面間の力の伝達ができますよだとか、そんな話をしていくと、うんなるほどなとかいう感じで、わかりやすいんだけれども間違ったやり方だと思いますので、そういう意味合いも含めて、もちろん今回の設計法はいわゆる振動論に基づいたそういうふうなことから理論構築して行きますので、多分、振動論を勉強された方、そんなにたくさんいないと思うんで、そうなるとそこらへんの理屈等は難しいです。だけど私どもそれをわかりやすく説明するというのは苦手です。やさしいことを難しい理論を使って説明するのは私どもの専門ですけど。誠に申し訳ないですけど、ということで皆さん方も我々が設計法は作っていく過程というものもまたご覧いただけると思いますので、それにあわせて是非勉強してください。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。

奥田:長時間どうもありがとうございました。さきほどちょっと鈴木先生のほうからもご紹介ありましたけれども、9月12日、これシンポジウム、多分金沢になると思います。それからEディフェンスの実験が終わったあたりでまたこういうフォーラムを企画しておりますので、また日にち場所等が決まりましたらウェブサイト上でご紹介させていただきます。それから今日のさきほど一番初めにご紹介させていただいたように、今日このフォーラムにつきましてはウェブサイト上で見ていただけるようなこともしておりますので、また機会がありましたら、あのときこんなことを言うとったなと、次、ちょっとこのことについてはもう少しきちっと聞いてみよかということも含めまして、ウェブサイトを見ていただいたらどうかなと思っております。ということで、本日はどうもありがとうございました。また次の機会、よろしくお願いいたします。