公開イベント

2010年6月5日 記録ビデオと発言録: 開会挨拶編

フォーラムの記録ビデオと全発言録を公開します。ビデオは基本的にプログラム毎に分割し、記録時間が長いものはさらに複数のビデオにわけてあります。各ビデオはパソコンの小さな画面でもわかりやすいように編集を施してありますが、発言自体はノーカットで収録しています。

主催者挨拶
緑の列島ネットワーク理事長 大江忍

こんにちは。本日はお忙しい中、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。 このフォーラムを主催しておりますNPO法人緑の列島ネットワークの理事長をしております大江と申します。よろしくお願いいたします。

今回、国土交通省より任命されました検討委員会をサポートする事務局として、三月の公募に応募をいたしまして、私どもNPO法人緑の列島ネットワークが採択されました。

その後、鈴木祥之委員長を中心とする先生方と協議を重ね、四月十六日に立命館大学・草津キャンパスにて、第一回の検討委員会を兼ねた全体会議を開催いたしました。総勢約九十名の委員の方を委嘱しまして、全体の委員会を構成する運びとなりました。その後、各部会・ワーキンググループ(以下、WG)が始動し始めております。

本日は、実務者の方々に広くご意見を頂く場として設定させていただきました。残念ながら三百名しかこの会場には入れませんので、多くの方にお断りをした経緯もありまして、この委員会に対する関心の高さが伺えます。

今回のフォーラムを始めに、シンポジウム、Eディフェンスでの実大実験の公開など、情報を最大限公開していきたいと思っております。本日のフォーラムにつきましても、今回撮影をしておりますけれども、これをインターネット上で全部公開をしていくつもりでおります。もし、今日会場に来られなかったお仲間の方で見たいという方は、HPを見ていただければ、(映像を)見ていただけるようにしておりますので、よろしくお願いいたします。

また、受付でメルマガの登録をお願いしておりますけれども、今後は、いち早く情報公開をしていきたいと思っておりますので、是非ともご登録の程お願い申し上げます。 この後、馬渕副大臣からのビデオのコメントを頂いておりますが、今回の委員会が設立された経緯はあくまでも政治主導だったということです。伝統構法をどうにかして守りたいという実務者の方々の訴えが、今までの古い体質のままの組織だった国交省を動かしました。

そのことからも、全く新しいスタートを切るという観点からも、過去のことはさておき、未来に向かって伝統構法全体に対する建設的なご意見を、この場で皆さんからお聞きしたいと思っております。なお、時間の許す限り伺いたいと思っておりますけれども、アンケートでもご意見を記入していただき、後日ご意見を整理いたしましてQ&Aの形でHP上に公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。

これをもちまして、開会のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

キックオフフォーラムによせて
国土交通副大臣 馬淵澄夫氏からのビデオメッセージ

伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験フォーラムのご開催、心からお慶び申し上げます。

平成19年6月20日、耐震偽装問題を受けた改正建築基準法、これが施行されました。大変大きな課題の解決に向けた取り組みではありましたが、現実には、木造の工法、様々な建築現場の混乱を招いたことに、大変心を痛めておりました。私自身、耐震偽装問題に深く関わって居たため、建築行政の在り方については、自身のライフワークとしてしっかり取り組みたいという思いでおりました。

そんな中、平成20年度、この状況に対応すべく、建築確認手続きの円滑化を図るということで、伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会、これが組織をされました。三年を掛けて、木造の伝統的住宅の簡易設計法、これを実際に詳細設計法も併せて作成を目指すということでありましたが。こうしたこの構造を現実にしっかりと、その検討の中で定めていくには、私は不十分ではないかということを危惧しておりました。

そもそも、石場建て等の伝統構法については、木の粘りやしなやかさで地震等に耐えるというもの、こうしたものを伝統的な技法に依って今日まで存続してきたものであります。しかし一方で、今日在る建物というものは、剛性を高めて固めて耐えるといった考え方で作られているものが大半です。本来であれば、こうした皆さん方の培われた技術に依って、木の持つ力や、あるいは木の持つ本来の能力を以って、しっかりと建物が建てられなければならない、こうしたことが現実のものとならなければならないと思っておりましたが、この検討委員会の中でも十分な検証が行われない、こういう状況が続いておりました。

昨年の9月、私どもは政権交代を果たしました。国土交通副大臣を拝命して最初に取組んだのが、この検討委員会の新たな見直しでありました。石場建ての検証、あるいは実験等も含めて、しっかりと現場の声を聞く。まさに現場で携わっていただいた皆様方の声を基に、こうした詳細な方法も含めて議論をしていくことが必要だと思っております。

今回、改めてこの検討委員会の構成を変えさせていただきました。この検討委員会の中で、皆様方が長年培った技術をしっかりと後世に伝えられるような形で、現場に居られる皆様方のその智慧を、しっかりと国の制度に落し込んでいただくことを、心から願っております。

いよいよ動き出すこの検討委員会、皆様方が一丸となって取り組まれますことを心からご祈念申し上げ、また私も担当のその政府の一員としてしっかりと支えさせていただくことをお誓い申し上げて、本日開催のお祝の言葉とさせていただきます。本日はおめでとうございます。ありがとうございました。

経緯説明
国土交通省住宅局木造住宅振興室 越海興一 室長

拍手いただけるとは思いませんでした。国土交通省住宅局 木造住宅振興室の越海でございます。

ただいま、国土交通省の馬渕副大臣が申し上げた通りの経緯でございますが、私の方から、かいつまんで事情の説明をさせていただきます。

伝統構法といわれる構造体につきましては、改正建築基準法、平成十九年六月二十日に施行でございますが、その中で非常に高度な限界耐力計算を要するということで、適判という申請に変わってしまいました。そのようなハードルが課されるということを以って、木造の平屋二階建ての建設が非常にしにくい状況になりまして、実務家の方々とのご相談とのもとで平成20年度、この前の委員会「伝統構法の設計及び性能検証実験」ということで、3カ年の大枠で計画をしてスタートした訳でございます。

坂本委員長にお願いした訳ですが、1年目の段階からそれなりに議論がございました。特に、先程も副大臣からも申し上げましたように、伝統構法の象徴である石場建てについて、委員会の中では後ろ向きであるという指摘がなされておりました。私の方にも21年度にかけて、実務家の方々から陳情も参ってございました。

そういった中で、昨年の11月に国会の参議院での審議がございまして、その中でこの委員会の中での石場建ての取り上げ方について懸念をされているという旨のやりとりがございました。

馬渕副大臣ご本人が答弁をされ、石場建ての実大実験をやるのだということで、質疑の中で表明をされたということでございます。

もちろん、事務方としてはこの委員会について3年計画ということで副大臣に色々ご説明なり経緯をお話をいたしました。そういったことも踏まえた上で、委員を見直して新しく出発するようにということで、国会の直後にご指示を受け、事務方としてはこの平成22年度から新しい形での委員会を始める準備に着手をさせていただきました。 当初の3年計画でございますが、最後は何とか平成22年度で簡易計算法を目指して走ってきたことは事実でございますけれども、途中で石場建てという命題を頂いて、組み替えをするということになりましたので、新しい委員会になってから石場建てを中心に据えた形で研究をお願いするということになりますので、残念ながら平成22年度の残り1年でやるという訳にはなかなか行かないということでございます。

従いまして、今年度から新たな仕組みの元で3年計画ということで始めていただけるように調整をいたしました。年度末、予算の措置ができた段階で、事務局をやっていただける事業者を公募し、先程の大江さんにお願いすることになりました。速やかに年度を超えてから始めるということで、4月以降大急ぎで準備作業を進め、去る4月16日に顔合わせという形にはなりますが、最初の鈴木委員会を開始したところでございます。 その後、委員会の検討内容、それからこういった場での情報公開の内容ということを、鈴木委員長の元で色々細かくお決めいただきましたので、国交省としては事務事業者と一体になってバックアップをしたいという風に思っている次第でございます。

予算としては来年度再来年度ございますので、当面この委員会の走り具合に応じて、こちらもバックアップの努力をし続けたいという風に思っている次第でございます。 私からは今日に至るまでの経緯のご説明をさせていただきました。ありがとうございました。

挨拶
京都市副市長 由木文彦氏

皆さん、こんにちは。ご紹介をいただきました京都市の副市長をしております由木文彦と申します。

今日は実はご挨拶をするとか、そういうつもりでは全くなくて、こういう大変素晴らしいフォーラムが開かれるということでしたので、私も是非勉強させていただきたいと思って顔を出したら、突然何か一言喋れということでしたので、私自身もうろたえておりますが。

国土交通省の方のご尽力に依りまして、こういう実証研究の取り組みが成されるということは、京都市にとっても大変ありがたいことだという風に思っております。 ご案内の通り、京都市は伝統的な町並み、たくさんあちこちにございますけれども、これが急速に失われているという非常に危機的な状況を迎えております。

伝統構法で作られた家がなかなかもう再建できないというようなことから、次々とマンションに建て替わったりして、町並みが崩れて行っております。そういう面でも伝統的な構法をキチンと使った木造の建築物が制度の枠内でキチンと建てられるという風にしていただくという試みは、私ども京都の市、町並みにとっても大変重要なことだという風に考えております。

そういうこともございまして、私自身もこの取り組みには大変期待をいたしておりますし、また、是非現場の実情をよく取り組んで、汲み取っていただいて、実際に使えるような成果にアウトプットを出していただきたい、という風に思っております。

先程、越海室長から経緯のご説明がございました。私は実は越海室長とは建設省の入省同期でございまして。彼に、昨日、国土交通省の事業仕分で勝間さんから木造建築のやつが強烈にやられてしまいましたので、「これは本当に大丈夫ですか」という風に先程お伺いをいたしましたところ、「この取り組みについては、とにかく何が何でも実現して行く」という風に語ってくれましたので、3年間位の予定だという風に伺っておりますけれども、是非、実りの多い形でこの取り組みが続きますことを心から願っております。

また、事務局をお引き受けいただいた緑の列島ネットワークの大江理事長始め、関係者の皆様方には色々な面でご苦労をお掛けするかもしれませんけれども、この素晴らしい取り組みを是非実現させていただくということで、引き続きよろしくお願いをいたしたいと思います。

本日のフォーラムが実りの多いものになることを合わせてお祈りをいたしまして、突然でございますけれども、私のご挨拶とさせていただきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。