進捗状況

2012年1月29日

1/16 小根ほぞ差し込み栓打ち・小根ほぞ割楔締め曲げ試験@秋田県立大学木材高度加工研究所

速報=岡崎泰男 (実験検証部会 要素実験WG )

1/16(月)に秋田県能代市の秋田県立大学木材高度加工研究所南試験棟にて、小根ほぞ差しのT字型接合部の曲げ試験を公開し、施工者、設計者、研究者とさまざまな職種の方が数名、参加してくださいました。
この実験は、小根ほぞ差し接合部(割楔・込み栓・鼻栓)の各部寸法の違いが接合部の復元力特性や破壊形態にどのような影響を及ぼすかを検討するために行うもので、評価式作成のために、種々のパラメータの試験体について計75体の実験を実施しています。

 
試験体と加力装置の概要

今回の公開試験は、担当した小根ほぞ仕口接合部のT字型試験体計75体のうち、小根ほぞ差し込み栓打ち接合部、小根ほぞ差し割楔締め接合部タイプのもので、梁背が最も大きいタイプ(梁背300mm)の試験体各3体、計6体を実施しました。下記の図と写真に示したように正負交番で1回ずつ繰り返し、破壊に至るまで加力し続けました。

 
小根ほぞ差し込み栓打ち接合部試験の結果

小根ほぞ差し込み栓打ち接合部試験 モーメント-回転角曲線(包絡線)

すでに試験済みの今回より梁背が低いケースでは、ほぞ部分が割裂するか、もしくは込み栓が折れ曲がり、折れた込み栓の先端がほぞに引っ掛かった状態で徐々に荷重が下がっていくかいずれかの破壊形態を示したのですが、今回は梁背に対して柱が短かったこともあってか、込み栓が曲げ破壊を生じた後、栓部分から生じた亀裂が柱端部まで達する形で、柱を破壊をしてしまいました。

込み栓から入った亀裂が柱端部まで進展

込み栓の曲げ破壊

 
小根ほぞ差し込み割楔締め接合部試験の結果

小根ほぞ差し込み割楔締め接合部試験 モーメント-回転角曲線(包絡線)

割楔締めタイプでは、まず割楔の先端部分からほぞに亀裂が入って楔が効かなくなり、その後は小根ほぞがめり込み破壊を起こしながら徐々に荷重が下がっていくという経過をたどりました。ただし、このタイプは、割楔の打ち込み具合によってかなり変形挙動が変わってしまうので、解析は困難であると思われます。

割楔の折れ、ほぞ端部の圧壊

割楔先端部および節の部分で曲げ破壊

割楔先端部分からほぞが破壊

2012年1月28日

1/16 追掛継・金輪継・ 台持ち継ぎの引張り試験@日本建築総合試験所

速報=完山 利行(日本建築総合試験所)

1/16(月)に大阪府吹田市の財団法人日本建築総合試験所の本部構造実験室で、3種類の仕口継手の引張強度試験を公開し、4名の方にご参加いただきました。

試験体
今回は次の3種類を試験しました。

(左)追掛け継ぎ(栓なし、栓あり)(中)金輪継ぎ、(右)台持ち継ぎ

試験結果と考察
試験方法としては、振れ止めローラーで面外への移動を拘束し、加力治具を介して単調漸増載荷による引っ張り力を加えて、試験体を破壊に至らしめました。

荷重(P)-変形(δ)関係のグラフです。追掛け継ぎ(栓なし) は黒、追掛け継ぎ(栓あり) は赤、金輪継ぎは緑、台持ち継ぎは青で示しています。

変形が10mmに至るまでの部分を拡大すると、次のようになります。

グラフから以下のようなことが読み取れます。

・最大荷重は、追掛け継ぎ(栓有り)(67.7kN)が最も高く、追掛け継ぎ(栓なし)(56.2kN)、金輪継ぎ(47.4kN)、台持ち継ぎ(33.9kN)の順。
・初期剛性(変形1mm時の荷重)は、金輪継ぎ(34.7kN)が最も高く、追掛け継ぎ(栓有り)(30.1kN)、追掛け継ぎ(栓なし)(18.5kN)、台持ち継ぎ(8.0kN)の順。
・追掛け継ぎの栓有りは栓なしと比較すると、最大荷重で約20%、初期剛性で約63%高い値を示した。
・台持ち継ぎは、最大荷重および初期剛性とも低いが、最大荷重後の荷重低下は小さく、大きな変形(約22mm)まで破壊しなかった。

破壊状況
それぞれが破壊に至った状況の写真をご覧ください。

追掛け継ぎ(栓なし)

追掛け継ぎ(栓有り)

金輪継ぎ

台持ち継ぎ

10/19 古材めり込み・仕口接合部実験@立命館大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

10/19(水) に立命館大学びわこ・くさつキャンパス内セル実験室で、棚橋秀光教授(立命館グローバル・イノベーション研究機構)の元、材料部会古材WGが、「古材めり込み・仕口接合部実験」を公開実験として行いました。実験の目的は、古材の強度と変形性能を調べることです。

立命館大学セル実験室

実験のねらいと試験体

まず、木材のめりこみ等を専門に研究されている棚橋先生から、委員会のメルマガでの呼びかけにこたえて集まった7名ほどの見学者のみなさんに、実験の概要についての説明がありました。今回の実験では、伝統的構法の木造の耐震性評価において、古材のめりこみや仕口の復元力特性が新材とどれくらい違うのかを調べるというねらいがあることが分かりました。

見学者に説明する棚橋教授

公開実験の時の試験体は、通し貫仕口試験の試験体に湖南民家の解体スギ(推定築170年)から切り出した100mm角の柱(スギ)と30×100mmの貫(アカマツ)を、めり込み試験に同じ湖南民家の解体アカマツより採取した30×30×90mmと30×30×30mmの木材片を用いました。

古材から削り出した試験体を用いる

仕口接合部実験

はじめに、十字型通し貫仕口試験を行いました。実験のポイントは仕口の評価にあります。そのために、最も単純な形状の仕口(つまり通し貫)を選んだという事でした。本当は楔を入れず、柱とピッタリ同じサイズの貫を入れたかったが、それでは試験体製作ができないので、詰物のような平行楔を入れたとのことでした。

仕口周辺の4カ所に変位計がとりつけられ、柱頭で最大で回転角0.2rad(1/5)まで加力しました。平行四辺形状にかなり変形しながらも、柱も貫もどちらがどちらかを破壊するということもなく、粘り強くもちこたえました。荷重計・変位計で計測されたデータが、パソコンのモニターにグラフとして現れます。

古材木片のめり込み試験
 
次に、木材片のめり込み試験を行いました。試験体は2つの古民家に使われていた材を切り出したそうです。スギ(建物の推定築189年、170年)アカマツ(推定170年)、ケヤキ(推定189年)の4種類の材について、それぞれ木口の年輪方向に対して平行、90度、45度で切り出した30×30×90mmの試験体と両隣から30mmの試験体を用意し、全面圧縮試験と挟み式めり込み試験を行なっているそうです。この日はそのうち、めり込み試験を見学しました。

圧縮ひずみ50%以上程度まで荷重をかけ、どのくらいの圧縮強度があるかを調べます。圧縮試験をすると、材料の性質に応じた、破壊のしかたをします。木材片はカチカチになるまで圧縮されながらも、破壊しないでもちこたえるのが印象的でした。ある程度以上の荷重がかかると、コンクリートの場合一気に破壊され、跡形もなく粉々に飛び散ってしまうそうです。壁土の場合は、土がグシャっという感じで崩れます。

試験体にグリッドが描かれているので、どのように圧縮したが、よく分かる

樹種、切断角度による違いを比較する


今回の実験で蓄積できたデータが、木材の構造的な特性を活かした伝統的構法の設計法構築に役立ち、古民家改修や古材を再利用した建物の耐震性能評価につながることを願っています。

2011年12月25日

12/21 建築学会シンポジウム「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望 」

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

キャラバン最終日から中2日。建築学会の中で組織されている 都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会主催「建築・社会システムに関する連続シンポジウム」の第14回として「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望」が建築会館ホールで開催されました。伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会も、共催として名を連ねています。

まず、主催の「都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会」の南一誠委員長から、委員会の概要についてのご説明がありました。次に鈴木委員長がシンポジウムの主旨説明を行い、その後、「伝統構法木造建築の課題」として、5つの講演が続けて行われました。

伝統構法木造建築の5つの課題

1. 伝統構法木造建築の法的な課題について

「法的な課題」は構造面以外で伝統構法の障害になっている事柄について、主に改正省エネ法をめぐって、すまい塾古川設計室の古川保さんが話されました。


伝統的構法の普及を遮る法的な課題として既に挙げられている排煙窓、シックハウス法、そこへ持ってきて更に追討ちをかける形で住宅版改正省エネ法が検討されているそうです。設計法ができて構造的な問題がクリアになったとしても、現在検討されている「住宅版改正省エネ法」(住宅全戸に適用)が成立してしまうと、断熱・気密だけで住宅の環境性能が評価されてしまい、伝統的構法の家を建てる事は至難の技になってしまうと言う訳です。

古川さんは「法律になってからでは遅い。伝統的構法が建て続けられるようになるためには、ひとりひとりが住宅版改正省エネ法の行方を見定めて、声を挙げて欲しい」と締めくくりました。

2.伝統構法木造建築物の歴史と構法について 

歴史構法部会の麓和善先生が、伝統的構法の変遷について、構法・歴史部会の調査や多くの写真・図を交えてわかりやすく講演をしてくれました。現在作成している設計法が、歴史的検証に基づいた設計法であると締めくくりました。

3. 検討委員会より3つの報告

・伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験の取り組みについて
・伝統的木造建築の現行の設計法の設計法の運用について
・伝統構法木造建築のこれからの設計法の考え方について

それぞれ、鈴木祥之委員長、齋藤幸雄主査、奥田辰雄主査が話されました。

鈴木委員長は講演の最後を「伝統構法は構造力学的には難しいがひとつずつ解明していくと最先端の技術となると信じている」と結びました。運用マニュアルや設計法についての完成スケジュールに対する質問があり、実務者の運用マニュアルや設計法に対する期待の大きさが感じられました。

パネルディスカッション〜翻弄され続ける伝統的工法の行方は?

後半のパネルディスカッションでは、江原幸壱さんと、渡邊隆さんから2つの問題提起がなされました。

江原さんから提起されたテーマは「伝統構法木造を阻む要因について」。議論の開始に先立ち、「本当に地球温暖化はCO2が原因なのか?」を検証してもらいたいという事を「The road to hell is paved with good intentions(地獄への道は善意で敷き詰められている)」という諺を用いて訴えました。

渡邊さんからのテーマは「施工における人材育成の問題点について」大工の技能をどのように担保するのかという問題について、渡邊さん自身が現在行っている研修についての報告を含めて、問題提起をしました。

パネルディスカッションでは、自分達で自らの首を締めてきたのではないかという反省や、伝統構法に適した耐震改修については啓蒙が進んできているという報告もありました。後半は主に改正省エネ法や長期優良住宅について議論があり、会場からは「伝統構法で建てられないのは憲法違反ではないかとも思う」という意見や、「構造について“やっとここまで来た”と思っている矢先に改正省エネの追討ちをかけられている」という意見が聞かれました。

会場からは、東日本大震災の被災状況に対する質問、法律に翻弄され続けている状況を「国はどこまで丁寧に面倒を見てくれるのか」という皮肉を込めた意見、伝統的構法を阻む法律が出来るのは教育が問題なのではないかという意見、住宅版改正省エネ法には今のうちに対応していく必要があるという意見などがあがりました。

伝統的構法の危機的状況を打開するために

また、余りにも世間が木造住宅や伝統構法を知らないのは、一般に発信してこなかった事に責任があるという反省や、伝統構法の普及を考えると、林業、地域の活動、ライフスタイルも大切であるという意見が出て、鈴木委員長から「情報発信は重要である。来年以降から伝統構法に関するPRを行う」という発表がありました。最後は、検討委員会の当初からの目的である「伝統的構法の危機的状況を打開したい」という決意で締めくくられました。

2011年12月13日

12/10 実務者の目視選別結果(曲げ破壊強度)の検証実験@京都大学生存圏研究所

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

底冷えする実験室に集まった参加者には大工も多数
最大の関心事は「大工の『見立て』が計測結果とどのくらい合うか」に

12月10日に京都大学生存圏研究所木質ホール1階の実験室で、実務者の曲げに関する目視選別結果の検証実験が行われました。この日は、午前中には京都工芸繊維大学で土壁WGの実験もあり、京都市内2カ所の実験施設ををハシゴする一日でした。(土壁WGの公開実験は、12/17(土)に福山大学実施予定です。詳細はこちら)

どこの実験室も冬は寒く、夏は暑いのがお約束ですが、午後になっても気温がそうは上がらなかった上に、京都大学生存圏研修所の実験室は試験体搬出のためにドアを全開にしていたので、コンクリートスラブの床はさらに底冷えがしていましたた。そのような厳しい寒さの中、大工の「見立て」と科学的な計測結果がどれくらい一致するのかを見届けようと、17名の参加者が、遠くは徳島からも、見学に来てくださいました。半数以上が、大工でした。

「4点曲げ試験法」により
大工の見立て評価でのベスト6とワースト6を計測

まずは、材料品質・接合WGの槌本主査(国土技術政策総合研究所)から実験の主旨説明があり、続いて北守委員(京都大学生存圏研究所)より実験方法について説明がありました。

全24本の試験体のうち、 (1)スパンを飛ばすところに使う (2)重要な接合部に使う (3)曲がりにくい (4)曲げ強度が高い の4つの選別基準にもとづいた大工の見立ての総合評価の高い試験体と低い試験体の合計12本を実験しました。この日に実施したのが必ずしも上位6本と下位6本ではなかったのは、限られた実験室の中で入れ替えが難しい試験体については、事前に実験を済ませてあったたからです。

実験は「4点曲げ試験法」で行いました。実験が始まると徐々に荷重が加えられていきます。突然「バン!」というビックリするくらい大きな音がして破壊が始まります。どちらかというと曲げに強いと評価された材は少しずつ何度も大きな音をたてて破壊されて行ったように思えました。

大工の評価が2番目に高かった材は、上部の繊維が座屈しました。破壊時変形量が150mm以上で測定不能となりました。

大工の「見立て」と実験計測結果の比較

24本のうち、計測上の最も曲げ破壊強度が高かった材(事前実験済)は曲げ破壊荷重が9.5t、破壊時変形量130mmでした。この材は大工には17番人気と評価は高くなかったのですが、それは、端部に節があったためかと思われます。

大工の「見立て」で最も評価が高かった材(事前実験済)の曲げ破壊荷重は9.0t、破壊時変形量は150mmで破壊荷重は堂々2位でした。

反対に計測上最も曲げ破壊強度が低かった材は、曲げ破壊荷重が3.5t、破壊時変形量もワースト1位の50mmでした。この材は大工の評価も下から2番目に低かった材です。

実験棟の外に実験が終了した材を下(引張り方向)を上にして置いてありました。それを見ると曲げ破壊荷重が最も低かった材は丁度曲げが掛かる箇所に大きな節がありました。

大工の評価が最も低かった材の曲げ破壊強度は5.6t(ワースト3位)、破壊時変形量は65mm(ワースト2位)と、やはり実験値も低いものでした。

このように、いくつかの例外はあるものの、概ね、Eディフェンスでのアンケートに回答した大工の「見立て」と科学的な計測は、一致していたと言って良いと思います。これから実験結果を整理し、詳細な結果は今年度の報告書で発表しますので、興味のある方はご覧下さい。

破壊のしかたのパターンを、写真でご覧ください

破壊形状としては、多くのものが、力のかかった下部(写真では実験の時に下になっていた面を上に置いてあるので、上部にあたります)の白太の部分から、繊維が細い槍のような形で剥がれ、そこから繊維方向に対して縦に亀裂が入り、次に中心部に近いところで大きな割れを生じて破壊に至るという、プロセスをたどりました。

しかし、中には目に沿ってバームクーヘンを剥いだような壊れ方をしている材もありました。

7番目に評価が高かった材もまるでせん断破壊を起こしたかのようにも見える、引っ張り曲げによる折損です。前もってミシン目でもつけていたかのような壊れ方です。長尾委員(森林総合研究所)によれば、このような破壊形状になるのは、仮導管のミクロフェブリル傾斜角によるものではないかという事です。

24本もの材を破壊するまで荷重を加えた中で、1本としてまっぷたつに折れた材はありませんでした。改めて大工の見立ての確かさと木材の力を感じた実験でした。

スマートホンやiPadやでもできる
縦震動ヤング係数測定方法のデモンストレーション

実験の中盤で北守委員が、Android携帯やiPhoneといったスマートホン、iPad、iPod touchなどでも簡単にできる 測定縦震動ヤング係数測定方法のデモンストレーションをしました。

まず、アプリケーションをダウンロードしておきます。

・iアプリ for iPad / iPhone/iPod touch : bs‐ spectrum (350円 )
・PCで :Wave Spectora (フリー)

測定方法は、
(1) 材のバランスを取ってスポンジ状の物に載せます

(2) 片方の端部からハンマーで叩いて、もう片方の端部で振動数を拾います
(材料部会小松主査(京都大学生存圏研究所)によれば、叩く強さは関係ないそうです)

(3) 材の長さと密度がわかっていればヤング係数が計算できます

とても面白いデモンストレーションでした。興味のある方はご自分でやってみてください。

2011年11月4日

古材WGより「古材めり込み・仕口接合部公開実験」速報

古材WG担当:棚橋秀光・大岡優(立命館グローバル・イノベーション研究機構)

10月19日午後、立命館大学びわこ・くさつキャンパスのセル実験室にて行われた古材めり込み・仕口接合部の公開実験には7名の方のご参加をいただきました。

この実験は、古材の再利用および現存する古い伝統木造建築物の耐震性能を評価する上で、古材の材料力学的な特性、および古材からなる仕口の復元力特性を調べ、新材との差異を明かにするとともに、古材の設計用データを蓄積することを目的として、10月から2ヶ月かけて行っているところです。対象部材は、川越市の民家(推定築189年)の解体材のスギとケヤキ(当初アカマツより変更)、湖南市の民家(推定築170年)の解体材のアカマツとスギです。

めり込み試験

基本的な材料試験(縦圧縮試験・曲げ試験・せん断試験)に加えて、仕口の復元力特性の最も重要な要素となっているめり込み特性を明らかにするためにめり込み試験を行います。図1の試験要領に示すように、木口の年輪方向別にめり込み試験体Pとその両隣から全面圧縮試験体Sを2個を1セットとして採取し、鋼板で上下から挟んで載荷し、全面圧縮とめり込み(部分圧縮)による剛性・強度・変形性能などを比較します。

図1 めり込み試験要領

当日は、湖南のアカマツの追柾(木口の年輪方向が45度傾斜した断面)のめり込み試験体1セットを用い、万能試験機にて試験体高さが3分の1となるまで、ひずみレベルでは67%の大ひずみまで載荷しました。

図2 めり込み応力度ーひずみ曲線:湘南アカマツ:N1

その結果を図2に示します。赤ラインが全面圧縮S、黒ラインがめり込みPです。PはSより剛性・強度が増加し、いずれもひずみが40%を超えると強度が急増しひずみ硬化がおこる、いわば「ぺしゃんこ」になって「カチカチ」になる現象が明確に現れています。しかも変形性能も新材と比べて劣りません。

仕口にモーメントが作用した場合、仕口のホゾの貫・柱の接触面付近では局部的に、このような圧縮による大ひずみとひずみ硬化が発生します。それが、大変形に至っても仕口の強度が増加する主な要因と考えており、今回の古材でもそのことが確認できました。

写真1 めり込み試験体Pの大変形状況

古材・新材を用いた仕口接合部実験

実際の仕口は目違いや、込栓、楔など複雑な要因が入り込み比較が困難となるため、今回の実験では、最も単純で古材の材料特性が直接発現しやすい通し貫仕口の十字型試験体(表1の新材を含む5種類の組み合わせで図3に示します)としました。古材と新材の材料としての違いが仕口の復原力特性(剛性・強度・変形性能・残留変形など)に及ぼす影響を見るための実験です。写真2に実験のセットアップと載荷状況を示します。

表1 仕口試験体一覧

図3 十字形通し貫仕口試験体 J1-J5

写真2 仕口実験セットアップと載荷状況

載荷レベルは1/240 ,1/120,  1/60,  1/30,  1/20,  1/15,  1/10, 1/5 の8段階正負交番繰返しとし、載荷速度は5mm/min から順次60mm/minまで変化させました。5シリーズの各試験体3体のうち1体は3回正負交番載荷としました。当日は、J3-2の試験体(湖南の柱スギ、貫アカマツ)を1サイクルで載荷し、所要時間は約1時間でした(3サイクルでは約3時間)。

結果をモーメントー回転角で表すと図4のような復元力を示しました。

図4 仕口の復元力特性:湘南柱スギ・貫アカマツJ3-2

1/5の回転角(0.2rad)でも不安定さはなく、復元力は第1象限(柱頭部を左に押す載荷)では1000kNmmで頭打ちのように見えますが、第3象限(右に引く載荷)では1400kNmm以上に増大を続けています。左右で抵抗モーメントが異なる要因は、楔(今回は平行楔で柱面でカット)が貫のめり込み部にはまり込んだ状態で貫について動き、楔の位置によりめり込みの接触長さが変動するためと想定されます。

参考に、時間の関係で見ていただくことができなかった3サイクル載荷のJ2-1の貫の変形状況を写真4に、復原力のグラフを図5に示します。

写真3 J2-1の最大変形0.2radの変形状況

写真4 J2-1の虫食いスギのめり込み変形

図5 仕口の復元力特性:湘南柱スギ貫スギJ2-1

この試験体では、写真4に見られるように貫にかなりの虫食いが見られ、弱そうに見えますが、最大モーメントは900kNmm程度あり、見かけによらず健全な復元力を示し、変形性能は新材に劣らず大きなことが確認できました。

現段階では、古材に関して、新材との差異を結論づけることはまだできませんが、引き続き、めり込み試験・材料試験を行って成果を得たいと考えております。

10/19 古材めり込み・仕口接合部実験@立命館大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

10/19(水) に立命館大学びわこ・くさつキャンパス内セル実験室で、棚橋秀光教授(立命館グローバル・イノベーション研究機構)の元、材料部会古材WGが、「古材めり込み・仕口接合部実験」を公開実験として行いました。実験の目的は、古材の強度と変形性能を調べることです。

立命館大学セル実験室

実験のねらいと試験体

まず、木材のめりこみ等を専門に研究されている棚橋先生から、委員会のメルマガでの呼びかけにこたえて集まった7名ほどの見学者のみなさんに、実験の概要についての説明がありました。今回の実験では、伝統的構法の木造の耐震性評価において、古材のめりこみや仕口の復元力特性が新材とどれくらい違うのかを調べるというねらいがあることが分かりました。

見学者に説明する棚橋教授

公開実験の時の試験体は、通し貫仕口試験の試験体に湖南民家の解体スギ(推定築170年)から切り出した100mm角の柱(スギ)と30×100mmの貫(アカマツ)を、めり込み試験に同じ湖南民家の解体アカマツより採取した30×30×90mmと30×30×30mmの木材片を用いました。

古材から削り出した試験体を用いる

仕口接合部実験

はじめに、十字型通し貫仕口試験を行いました。実験のポイントは仕口の評価にあります。そのために、最も単純な形状の仕口(つまり通し貫)を選んだという事でした。本当は楔を入れず、柱とピッタリ同じサイズの貫を入れたかったが、それでは試験体製作ができないので、詰物のような平行楔を入れたとのことでした。

仕口周辺の4カ所に変位計がとりつけられ、柱頭で最大で回転角0.2rad(1/5)まで加力しました。平行四辺形状にかなり変形しながらも、柱も貫もどちらがどちらかを破壊するということもなく、粘り強くもちこたえました。荷重計・変位計で計測されたデータが、パソコンのモニターにグラフとして現れます。

古材木片のめり込み試験
 
次に、木材片のめり込み試験を行いました。試験体は2つの古民家に使われていた材を切り出したそうです。スギ(建物の推定築189年、170年)アカマツ(推定170年)、ケヤキ(推定189年)の4種類の材について、それぞれ木口の年輪方向に対して平行、90度、45度で切り出した30×30×90mmの試験体と両隣から30mmの試験体を用意し、全面圧縮試験と挟み式めり込み試験を行なっているそうです。この日はそのうち、めり込み試験を見学しました。

圧縮ひずみ50%以上程度まで荷重をかけ、どのくらいの圧縮強度があるかを調べます。圧縮試験をすると、材料の性質に応じた、破壊のしかたをします。木材片はカチカチになるまで圧縮されながらも、破壊しないでもちこたえるのが印象的でした。ある程度以上の荷重がかかると、コンクリートの場合一気に破壊され、跡形もなく粉々に飛び散ってしまうそうです。壁土の場合は、土がグシャっという感じで崩れます。

試験体にグリッドが描かれているので、どのように圧縮したが、よく分かる

樹種、切断角度による違いを比較する


今回の実験で蓄積できたデータが、木材の構造的な特性を活かした伝統的構法の設計法構築に役立ち、古民家改修や古材を再利用した建物の耐震性能評価につながることを願っています。

2011年10月31日

キャラバン福岡・熊本、無事終了しました

今年度の検討委員会の主要事業の一つである「全国8ヶ所キャラバンツアー 講演会&意見交換会」が、10/29 福岡、10/30 熊本を皮切りに始まりました。このWebサイトでも順次レポートをしていきますが、まずは速報として、写真を公開いたします。


福岡の会場となった、LIXIL福岡 総合ショールームの4F 大会議室。福岡はNPO法人 森林をつくろう主催の「新・木造の家」設計コンペと同時開催となったため、学生さんたちの姿もありました。


真剣に講演会に聞き入る参加者のみなさん


鈴木祥之委員長による概要説明


設計法部会の齋藤幸雄 主査による「これからの設計法の考え方」の解説


設計マニュアル技術検討WG主査の奥田辰雄による「限界耐力計算運用マニュアル(案)について」の解説


講演会終了後、会場を変え、意見交換会を行いました。


意見交換会の冒頭に、講演会で話し足りなかったことの補足説明をする鈴木祥之 委員長


「NPO法人 森林をつくろう」の佐藤和歌子 理事長


熊本の会場となった熊本県立大学。福岡に引き続き、あいにくの雨天での開催となりました。


講演会の会場となった、中ホール


当日は70人ほどの参加者がありました。


木造住宅の劣化判断及び対策について解説する、藤井義久 材料部会耐久性WG主査


熊本では、会場のスペースに余裕があったため、意見交換会の傍聴をすることができました。

数日内に、各会場での意見交換会の記録ビデオを公開予定です。講演会の記録ビデオに関しては、キャラバン全日程が終了後、公開します。

2011年8月31日

古材WGより「古材強度試験」の速報

レポート= 佐々木康寿(古材WG主査、名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授)

我が国には古来より現在に至るまで木材を構造材料として利用してきた長い歴史があります.寺院建築をはじめとして古民家などを含む多くの木造建築には,台風・地震など幾多の災害を乗り越えて現代までその姿を残しているものが多くあります.これらでは,断面寸法の大きい豪壮長大な材料が使用されているため,その視覚的な迫力や質感,使用感,そして長年月にわたる使用が環境保全の観点から好ましいことなどが現代人の関心を呼び,近年,古材を再使用する場合が見受けられるようになってきました.このような再使用の際には,古材の強度性能を適切に判断する必要があるでしょう.

今回の実験は,古材を再利用することを視野に入れ,強度性能を把握することが一番の目的です.8月11日午後に長野県林業総合センター(塩尻市)で行なわれた公開実験には24名の方にご参加いただきました.材料は,長野県の古寺院(築後経過年数:約110年)および滋賀県の古民家(築後経過年数:約170年)で使われていたもの(直径約25~40 cm, 長さ約5~6.5 m,17本)で,樹種はアカマツです.実験の載荷方法はスパン5.8 m(材背の14~18倍)の3等分点4点負荷法による単調増加方式で行ない,荷重と中央たわみを測定しました.なお,公開実験前に試験体の損傷・欠損状況等を観察記録し,予備実験を行いました.その結果,載荷開始から破壊に至るまでに要する時間が5~10分程度となるよう,また,応力増分が一定となるよう,当日は載荷速度(たわみ速度)を20mm/minに設定して実験を行ないました.

曲げ試験の様子を写真で示します.

曲げ試験時の荷重と中央たわみの関係を示すグラフです.破壊荷重は10トンを超えるものもあります.

破壊した時の様子です.これは想像ですが,恐らく解体前の載荷重かと思われる負荷を上回ったあたりからピシッ,ピシッと音をたて,大きく湾曲変形するまで粘りを見せた後,欠損部が原因となる曲げとせん断の複合と考えられる破壊を起こしました.

古材を再使用して建物を修復・設計する際には,弾性係数(ヤング係数)や破壊強度が重要になります.両者の間には緩やかな比例関係があると考えられています.破壊強度を知るためには,今回の公開実験のような材料の破壊試験をする必要がありますが,弾性係数は壊さなくても知ることができます.そこで,弾性係数を何らかの方法で正確かつ簡便に知ることができれば,破壊強度を非破壊的に推定することができそうです.そのためには,今回のような強度実験から得られる弾性係数と破壊強度のデータを多く蓄積すること,非破壊的に破壊強度を推定する方法を開発することなどが重要になります.

学生の感想

●古材は生物材料の新たな利用資源として、とても重要なものだと思います。古材を有効に利用するためにも、古材の特性を知ることは不可欠であり、今回のような貴重な試験に携わることができたことを嬉しく思いました。古材の特性が明らかにされ、私たちの生活に活用されるようになることを楽しみにし、また自身でも目指したいと思いました。

●貴重な古材の実大材の実験に参加させていただき光栄に思います.学生のうちにこのような経験ができてうれしく思います.それと同時に実験を行う難しさも経験でき、それを生かすと同時に今回の貴重なデータから、古材の正しい評価と古材の可能性を研究できればと思います.

事務局による当日のレポートもご覧ください

8/11 古材強度試験@塩尻

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

木曽川の景観を楽しみながら塩尻へ

名古屋方面から「ワイドビューしなの」という特急に乗り、今回の実験が行われる長野県林業総合センターのある塩尻へと向かいました。「しなの」は岐阜の中津川を越えたあたりから、つねに左側に木曽川を眺めながら、急峻な山が迫る木曽谷を走り続けます。上松(あげまつ)駅の手前では、木曽川の水流で花崗岩が侵食されてできた「寝覚ノ床(ねざめのとこ)」という、白い奇岩とエメラルドグリーンの川水とのコントラストが、見事でした。

木曽谷には、線路沿いのわずかな平地以外、田畑はありません。その分、年間降水量3000mmという豊富な雨量と保水力の高い地質のおかげで針葉樹が生育しやすく、近世初期以降、ヒノキを中心とする林業がさかんな地域として知られます。林業に付随し、街道筋には漆器、お六櫛など、木を加工した手工業製品もつくられてきました。木曽楢川、奈良井宿など、旧中山道の宿場町の風情も多く残っており、車窓からも十分に木曽谷の景観や街並を楽しむことができました。

車窓から見る木曽川

古材の強度性能を調べる

今回の実験の目的は「古材の強度性能を確かめること」です。古い民家では、かなり立派な住宅であっても、家族用の居室や収納部分、小屋裏などに、かつては他の建物で使われていたのであろう仕口の跡が残る部材を、構造材に使っていることがあります。これは私の勝手な想像ですが「使える間は使わせていただく」というのが、昔の人の至極当たり前の感覚だったでしょう。

一度建築物に使った木材は、解体処分すれば「廃棄物」となってしまいますが、「古材」として再利用することができます。木に対する謙虚で敬虔な気持ちも大事ですが、それだけでなく、構造材として正しく評価する事も必要です。果たして「古材」は、新しい材と比べ、どれくらい強度の点で劣っているのかいないのか。それを検証することが、今回の実験の目的です。

折れてもなお粘る古材

アクセスが良いとは言えない長野県塩尻市での実験でしたが、なかなか行われることのない古材の実大実験ということもあり、24名もの方が参加し、名古屋大学大学院生命農学研究科 佐々木康寿先生が取り仕切る実験の様子を熱心に見学していました。

実験に使う古材を前に、参加者に説明する佐々木先生

最初に築170年(推定)の古民家から採取した赤松の梁を実験しました。囲炉裏があったのでしょうか、表面が煤で覆われ、真っ黒になっている材でした。佐々木先生の研究室では、試験体は「かつて建っていた方向で実験する」ことにしているそうです。そのため、その梁も「かつての上下」のまま、上に乗る梁が渡っていたであろう渡り顎の部分を上に向けて、実験台に据えられました。

渡り顎のある方を上にして、実験台にセットする。

さて、いよいよ実験開始です。実験が進むに従って、バキッバキッという音が激しくなり、見た目で分かるくらいに曲がって行きます。「これだけ音がしても、なかなか折れないもんだなぁ」と思っていたら、かなり大きな音がしました。どうやらピークを迎え、耐力が下がり始めたようでした。破壊は節のところから起きたようでした。今年1月のEディフェンスでもそうであったように、やはり節は弱点になるようです。

築110年の古寺院から採取したやはり赤松の梁も実験しました。こちらは先程の民家よりも築年代が新しく、材も太いものの、腐朽や虫害と思われる痕があり、表面はかなり傷んでいるように見受けられました。太いだけあって、破壊音も派手です。壊れたかと思うほど盛大な音が実験室に木霊しますが、なかなか折れません。こちらは下側に仕口による大きな断面欠損があったのでそこから折れるかと予想していたのですが、そうではなく、荷重点から折れました。計測器を確認したところ折れ始めた荷重は、90kNくらいでした。

いずれの試験体も、折れてから急に耐力がなくなるのではないのが印象的でした。確かに耐力は下がるのですが、折れながらもかなり粘るのです。おそらく、完全に真っ二つに破断するまで、いくらかの耐力で持ちこたえるのでしょう。古材というまだまだ工学的に解明されていない分野の実験で、大変興味深かったです。工学的な検証は佐々木先生達の解析を待ちたいと思いますが、実務者の方々が古材を使用する際の参考になれば嬉しいです。

本棟造りの堀内家住宅を見学

実験の後は希望者を募り、塩尻駅にほど近い、長野県の民家の典型である「本棟造」の堀内家住宅(国指定重要文化財)を見学しました。屋根はゆるやかの勾配の妻入り、屋根には「雀躍り」という本棟造独特の飾りがついています。

かつては豪農として名を轟かせていた当家の屋敷を守られている堀内さんの説明で、中も見せていただきました。表の列は上手(東)から2室続きの座敷と土間、中列は3間と4間の「おえ」と土間、裏列は「裏座敷」他数室が並んでいました。土間部分から見上げる小屋組や真っ黒く煤けた梁がとても立派でした。

「古材現役」でがんばっているこのような建物のためにも、古材の強度を正しく評価できるような道を開きたいものです。

古材WG主査の佐々木康寿先生による速報もご覧ください