進捗状況

2012年3月31日

3/7(水) 渡り顎仕口の十字型曲げ試験@金沢工業大学

レポート&速報=事務局 河原大

当日の様子

2012年3月7日金沢工業大学にて、「渡り顎仕口の十字型曲げ試験」の公開実験を行いました。当日は天気も良く、4名の方が実験見学に、中には愛媛からいらっしゃった方もおられました。遠方よりわざわざ、ありがとうございました。

まず、実験検証部会後藤主査より、今回の継手・仕口試験の全体像についての話がありました。今回の接合部の試験体は全国各大学で約800体の試験体について実験しており、この結果を全てとりまとめて評価式を作成することで、実務の方々が自由な寸法関係と種類を選んで、接合部を設計できるようにするという内容で、これについては急務として取り組んでいるとのことです。

当日居合わせた金沢や京都の左官さんから土壁の実態を聞く機会がもてたりと、公開実験参加者同士の意見交換もさかんで、意図していた以上の交流を深められたようです。このように伝統構法建築に関わる人同士が、委員会を通して交流関係を築いていくことについて、うれしく感じています。

試験体

今回は仕口・継ぎ手実験のうち、G2「渡りあご」試験体について、仕口接合部の曲げ(回転)モーメントに対する抵抗性能と、限界変形性能を評価することを目的とし、十字曲げ試験を実施しました。
 

渡り腮の形状


 
試験体G2の試験体概要は次のとおりで、いくつかの寸法のパターンについて実施しました。今回、公開実験として行ったのは、表のうち、G2-4試験体です。
 

渡り腮の図面。変数がW1、W2、h、gで示されている(図をクリックすると拡大します)


 

表のように寸法を変化させた試験体を用意。この日は4の試験体を実施


 
 
加力方法
加力方法は、試験体柱頂部で変位制御水平繰り返し加力を行い、ロードセルを用いて頂部水平力を計測しました。なお、繰り返しスケジュールにおける目標変形角は設置した変位計の計測値を用い、1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/20,1/15,1/10,1/7rad の正負交番各1回繰り返しの静的加力を行いました。加力速度は各変形角によって適宜調整しています。
 

実験の経過
1/10rad、1/7rad、解体後の試験体の様子を、写真でご覧ください。
 

面外方向の曲げ(+1/10rad.)


 

上木側面のめり込み(+1/7rad.)


 

解体後


 
 
実験結果
G2-1.1,G2-3.1との比較における、G2-4.1の履歴ループと特性値を示します。
 
復元力特性のグラフ

復元力特性のグラフ


 

完全弾塑性モデルの特性値


 
やや、±時での耐力に偏りが見られることがあるが、おおむね左右対称といえるようです。また、荷重は今回行ったG2-4は、G2-1よりも接触面が大きく、G2-3よりも小さいためそれら中間となりました。しかし、δy、δuはほぼ変わらないことが分かります。

2/26(日)通し柱の欠点が構造性能に及ぼす影響検証実験@つくば建築研究所

レポート=事務局 河原 大

金沢から東京を経て、つくばの建築研究所まで片道5時間の旅です。つくばは晴れていましたが、金沢では雪が降っているとのことでした。

どこの研究機関も同じかもしれませんが、やはり構造実験室は寒く寒く、業務用ヒーターも1台ではほとんど役に立ちません。悴む手を我慢しながら、たまにヒーターに助けてもらいながら、11時から約3時間、実験を見学しました。

実験棟

実験の目的:
接合部付近の節と耐力との関係の検証

今回の実験は、材料部会の材料品質・接合WGの実験として行われました。主な目的は、「通し柱の横架材-柱仕口接合部の付近に、一般に欠点と言われる節があった場合、無い場合と比べてどの程度耐力低下に違いがあるのか」を検証することです。

これまでの結果説明
初めに、材料品質・接合WGの綾部委員にこれまでの試験体を見ながら、実験結果について、解説をいただきました。
 

これまで実施した要素実験の結果を解説する綾部委員


 
一般に欠点とされている「節」は、「目切れ」の状態であり、接合部付近の応力の集中がある箇所に「目切れ」があると、無い場合に比べて比較的早く、目切れ部分から、割れが発生します。割れが発生すると耐力低下を起こします。
 
ですが、綾部委員によると、生き節である目切れ部分で割れを起こした方が繊維が破断した場合より粘り強く変形に耐えられるかもしれないので、今回の実験ではこのような側面からも耐力低下の割合ということに着目する、ということでした。
 
接合部付近、特に横架材の下端のレベルで柱に節を有しているものは、予想の通り目切れに沿って割れていました。
 

節の目切れに沿って割れが見られる


 
ところで、実務では赤丸の部分を少し空かして作るそうです。これは、長年住んだときにこの部分を空かしていないと逆に乾燥収縮によって、梁の下端が持ち上がって意匠的に良くないからだそうです。またこれまでの3体の試験体でもこの部分の摩擦が大きくなり、鼻栓と相まって、横架材が柱を引張り、その結果として柱に損傷を生じさせたのではないか、ということでした。
 

実務上の工夫

今回の試験体と実験方法
さて本題の実験です。通し柱の実験ということで、2階建ての1つの構面を対象に、胴差し部分に曲げ応力が集中することを想定した、2階部分のみ壁ありというものです。
2階梁のレベルで、オイルジャッキにより、正負交番3回繰り返し加力、1/30rad以降は、引ききりという実験です。
 

試験体となる2階建の1構面


 
 
実験の経過
小さな変形角では目立った損傷は生じませんでしたが、1/100rad辺りから壁の部分からキシキシと音が鳴り始めます。1/30radに至ると、接合部付近からパキッパキッという音が聞こえ始めました。次の写真は1/30radです。
 

1/30radで、接合部付近から音


 
いよいよ引ききりの段階となり、1/20radで損傷観察が入ります。ずっと見ていると気付かないものですが、写真をみるとかなり柱が曲がっています。また、この辺りで、予想していた部分である目切れに沿って少しひびが入っているとのことでした。
 

1/20radで損傷観察が入る


 

目切れに沿ってひびが入り始めている


 
さらに加力を続けていくと、1/14radでバキッと先ほどの部分で割れが進行し、写真のように柱の折損という状況になりました。
 

1/14radで柱の折損


 
その後、1/12radで、反対側の柱に、かなりびっくりするほど大きな音とともに内側部分から割れが生じました。これも節の部分からということでしたが、うまく観察できませんでした。初めに割れの入った部分の割れはさらに進行し、不安定構造となっているような状況にありました。
 

1/12radの様子(1)


 

1/12radの様子(2)

2/23(木) 全面土壁土台仕様静的加力試験@鳥取環境大学

速報=実験検証部会・土壁WG委員:中治弘行
 
2/23に、全面土壁土台仕様静的加力試験の公開実験を行った。土壁の復元力特性では、特に最大耐力経験後の耐力低下において、荒壁の表裏が一体となったまま剥がれにくいことが大きく影響しているようである。本実験の目的は、裏返しまでの荒壁乾燥期間が荒壁の一体性を高めるかどうか、ひいては最大耐力経験後の耐力低下の改善に影響を与えるかどうかを確かめようとするものである。
 
 
試験体概要
試験体の概要を図に示す。
 

全面土壁土台仕様の試験体


 
昨年度に実施したMWD-2と同様の軸組、竹小舞配置である。竹小舞の内法間隔は45mm程度とした。この試験体では、荒壁の裏返しを2週間後に行った。
 
 
計測概要と実験方法
青と赤の矢印は変位計測、青の長方形はひずみ計測である。
 

計測器の取り付け位置


 
これまでの実験と同様、桁から総重量19.24kNの鋼製おもりをぶら下げる載荷式で、変形制御の正負繰り返し加力とした。折り返し変形は、見かけの変形角が1/480、1/240、1/120、1/90、…、1/10、1/7radとなるようにした。
 
 
荷重変形関係
おもりによるPΔ効果を除去した荷重変形関係を図に示す。1/7rad変形での耐力は最大耐力から80%近く低下している。
 

荷重変形関係


 
 
最大変形時の損傷状況
 1/7rad変形時の損傷状況を写真に示す。1/10radより大きい変形でも壁土の大きな剥落は見られなかったが、耐力低下は依然として大きい。
 

1/7rad変形時の損傷状況


 
 
まとめ
壁土の損傷による土壁の耐力低下に荒壁の一体性が影響している可能性を考え、裏返し時期を違えた試験体を作製し、実験を行っている。次回は、裏返しを1週間後に行った試験体の実験を3月7日(水)午前10時頃から実施予定。他の試験体の実験結果も比較した上で、裏返し時期が土壁の復元力特性に何らかの影響を与えるのか、検討を進める。

2012年2月22日

2/17(金) 実大2階建て通し柱試験体振動台実験(事務局レポート)

2/17通し柱効果に関する検証実験レポート@京都大学防災研究所
レポート=和田洋子

平成24年2月17日、小雪が舞う京都大学防災研究所で夏に行われた通し柱効果の検証実験の続きが公開されました。実験に参加下さったのは30名です。参加者の多くは建築士や施工者、材木関係者で、遠くは佐賀、愛媛、徳島、広島から駆け付けてくれました。

試験体の柱脚は
石造ダボ付き礎石の石場建て

今回行われた実験の試験体は「石造ダボ付き礎石+石場建て」仕様です。昨年7月から8月にかけて土台仕様で行なった通し柱効果検証実験の石場建てバージョンです。礎石には石造ダボを設置し、水平方向に緩い拘束を設けているのが特徴です。

石ダボの設置状況。石ダボの高さは、タバコの箱より少し低いぐらい。

BCJL2波加振の様子

山田先生が資料に基づいて、今回の実験の目的、前回の実験結果等、事前説明を行ないました。山田先生らしい、丁寧でわかりやすく愉しい解説でした。

事前説明を行う山田先生(振動台実験検証WG主査)

いよいよ最初の加振(BCJL2波/X方向100gal)です。ギシギシ揺れるものの、1方向なので単純な揺れ方です。全く不安感はありません。その後200gal、300galと順次入力波の大きさを上げて加振しました。

200galでは柱脚が動く気配は全くありませんでしたが、300gal加振前には、山田先生から「端の柱が僅かに浮くと思うので、ドライアイになるかもしれませんが、瞬きをしないで見て下さい」と説明がありました。思わず身を乗り出して見ていると、右左交互にドンドンと四股を踏むように柱がわずかに浮きました。加振終了後に山田先生からは「交互に上がるような動きが見えたと思います。端の2本が浮いている瞬間も他の4本は接しているので、浮いたと言ってもそんなに滑らない」とお話がありました。

350galでは横綱級の四股でした。建物重量がそのまま音になったような重い音がしました。
横に移動してダボに当たっているのではないかと、参加者も興味津々です。残留変形はそれほどなさそうだけれど、念のために大工さん達に仕口などのチェックをしてもらい、先生方で実験が続けられるかどうか協議をしました。

協議をする山田先生、鈴木委員長、齋藤設計法部会主査

試験体の状態をチェックした結果、400galを入力する事になりました。総重量約13tの試験体が飛び跳ねるように動きました。加振終了後に大工さんが試験体を入念にチェックしてくれた結果、胴差を留めている雇いの鼻栓が折れたようです。鈴木委員長も柱脚元を入念に確認していました。

試験体の状態を観察する鈴木委員長と鎌田委員

公開終了後、JMAkobe波を加振

ここで、参加者の安全を考え公開実験は終了させてもらいました。しかし、まだ試験体は栓以外は健全な状態なので、実験担当者の山田先生、須田先生、向坊先生が「さて、どうするか。ここで止めるか、もっと大きな加振をするか」を相談していました。

実験継続の可否を相談する(左より)須田先生、向坊先生、山田先生

相談の結果、JMAkobe波(2軸)を入力しようということで、大工さんが鼻栓の交換をし、鳶達によって上部の鉄骨が撤去(試験体が当たるため)されました。

鼻栓を交換する大工さん

鉄骨を撤去する鳶さん

いよいよJMAkobe波(2軸)加振です。振動台がせり上がってきました。私は正面に座っていたので、ちょうど礎石の高さが目線と同じくらいになりました。

JMAkobe加振に向けて、せりあがった振動台にもちあげられた試験体

遂にJMAkobe波(X:400gal、Z162gal)です。神戸波独特の最初の激しい一撃でかなり大きな音がして試験体はかなり動きましたが、礎石から落ちる程ではなく、もちろん倒壊もせず終了しました。

その後、最大600galまで入力しました。一部柱脚元が破損しましたが、試験体自体は倒壊しませんでした。

礎石ギリギリのところで割れた柱脚

結果としては、石場建てでも通し柱効果が見られたのではないかと思います。工学的に詳しい分析は山田先生の速報をご覧下さい。

地長押付き仕様

実験棟には8日に行なった地長押付き石場建て実験のための柱脚元固定用冶具が置いてありました。柱を両サイドから2本の地長押ではさみこむのですが、これは柱同士を固定するものであって、礎石と柱とを拘束するわけではありません。柱を両側からはさむ2本の地長押を固定する為に樫の雇貫を通し栓で留めたそうです。当初はボルトを使う予定でしたが、鈴木委員長から「ボルトを使ってはいかん」とダメだしがあり、向坊先生のアイディアでこの冶具が作られたそうです。

地長押付き石場仕様用冶具(真ん中の穴の部分で柱を挟み、樫の貫と栓で留める)

冶具の継手

地長押付き石場建て、石場建ての結果のグラフも山田先生の速報に掲載しましたので、どうぞご覧ください。

2012年2月21日

2/17(金) 実大2階建て通し柱試験体振動台実験@京都大学防災研究所

速報=山田耕司(振動台実験検証WG)

はじめに
「振動台実験検証WG」では,2/8 – 17の6日間に京都大学防災研究所の強震応答実験装置(振動台)を用いて,「通し柱効果」に関する基礎実験を行いました. ここでは「通し柱効果」を図1のイメージで定義しています.他の構造形式で言えば,「連層耐震壁により建物各層の層間変位を均一化する」ことになり,連層耐震壁の役割を大断面の通し柱に期待しています.

図1 「通し柱効果」のイメージ

実験概要

実験は,礎石および柱脚仕様の異なる6寸通し柱を用いた試験体を用意し,100cm/s2から順次加振しています.試験体は,図2に示す2階建て木造軸組(石場建て仕様)で,平面形状は2間×3間(3,640mm×5,460mm)とし.積載荷重として,各階40kNの錘を載荷しています(層重量は,1階で55kN,2階で51kN).通し柱は6寸で,本数は6本としています.礎石および柱脚は,「平礎石+地長押付き石場建て」,「平礎石+石場建て」,「石造ダボ付き礎石+石場建て」,の3種類としています.

耐震壁の上下階のバランスは,2種類:「1階2階のバランスの良い」「1階2階のバランスの悪い」とし,「1階2階のバランスの良い」試験体では1階壁4枚2階壁4枚,「1階2階のバランスの悪い」試験体では1階壁4枚2階壁8枚としています.耐力壁は荒壁パネルを用い,胴差は雇いホゾ(30*120mm)を介して通し柱に緊結しています.なお安全を期すため,ワイヤーロープによる倒壊防止を行っています.

図2 地長押付き仕様・通し柱(6寸)試験体(1階2階のバランスの悪い) 立面図 (クリックで拡大)

前回(2011年7-8月)の実験(柱脚固定の土台仕様)

一連の実験では試験体を使いまわすため,1/30radで加振を止めています.

まず,比較対象とした柱脚固定の土台仕様の実験結果(2011年7-8月)を説明します.

写真1 通し柱(4寸6本)試験体(土台仕様の事例)

土台仕様の実験で得られた層間変形角を図3に示します.

図3 柱脚固定の土台仕様 各階層間変形角の対比(クリックで拡大)

通し柱(4寸)試験体では,通し柱本数,1階2階のバランスの良し悪しに関わらず,同じような層間変形角が計測されました.また,最後の実験では,加振加速度が大きくなるにつれ,1階に変形が集中し,450ガルの加振で,通し柱の1階柱頭部において折損が生じました.

一方,通し柱(6寸)試験体では,通し柱(4寸)試験体程ではないにしろ,通し柱本数,1階2階のバランスの良し悪しに関わらず,同じような層間変形角が計測されました.しかし,図からも分かるように,通し柱(4寸)試験体に比べて,各階の層間変形角の差が少なくなっています.その後,600ガルまで加振しましたが,通し柱(6寸)試験体では通し柱の折損は観測されませんでした.なお,雇いホゾを止めていた鼻栓は曲げ破壊をしたため,柱と胴差の間に隙間が生じていました.

今回の実験(石場建て試験体)

前回の実験より,本実験で目的としていた「通し柱効果」が確認されました.そこで,今回の実験では,石場建て仕様の試験体で同様の実験を行い,石場建て仕様における「通し柱効果」の有無を確認します.

石場建ての試験では,2/8,9に通し柱を挟み込んでつなぐ「地長押」のある試験体を,2/13,14には「地長押」を外した状態で試験,2/16,17には「石造ダボ付き礎石」の石場建ての試験体で実験し,その性状の違いを観察しました.

図4 石場建ての柱脚詳細

図5〜7に結果を示します.

図5 地長押付き仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

図6 石場建て仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

図7 石造ダボ付き礎石石場建て仕様試験体の土台仕様試験体との比較(クリックで拡大)

 
結果として,柱脚固定の土台仕様とほぼ同程度の層間変形角を計測でき,柱脚を固定しなくても,柱脚固定時と同等の通し柱効果を得られることが分かりました.

おわりに
以上の実験より,土台仕様および石場建て仕様双方において「通し柱効果」が確認されました。なお,実験に際しまして,ご理解とご協力をいただきました方々に厚く感謝申し上げます.

2012年2月16日

2/3 腰掛け鎌継ぎと長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験@横浜国立大学

速報=中尾方人(実験検証部会 要素実験WG)

2012年2月3日(金)に横浜国立大学にて、腰掛け鎌継ぎと長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験を行い、4名の方にその様子をご覧いただきました。

 
腰掛け鎌継ぎの引張試験

図1は腰掛け鎌継ぎの試験体で、このタイプの試験体は、表1のように、鎌の長さや材せいなどが異なる計7種類ですが、そのうち公開実験では、No.6の試験体3体中2体の試験を行いました。男木、女木それぞれ径21mmの穴で試験装置に取り付け、材軸方向に引張力を加えました。

図1 腰掛け鎌継ぎ試験体

表1 腰掛け鎌継ぎ試験体一覧

図2に試験体に加えた引張力と男木-女木間の変位との関係を示します。

図2 腰掛鎌継ぎの引張試験結果

2体とも、男木の鎌頭部にせん断破壊が生じて荷重が低下し始めましたが、完全に破壊したわけではなかったため、荷重の低下は比較的ゆるやかでした。写真1と写真2にそれぞれ1体目と2体目の破壊状況を示します。

写真1 腰掛け鎌継ぎNo.6 1体目

写真2 腰掛け鎌継ぎNo.6 2体目

 
長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験

図3に長ほぞ込栓打ち仕口試験体を示します。このタイプは表2に示すように、土台のせい・幅、込栓の径や形状、ほぞの厚みが異なる計7種類ですが、公開実験ではNo.1の3体中2体の試験を行いました。試験体の土台を固定し、柱に設けた径21mmの穴で試験機と接続し、柱に引張力(引き抜き力)を加えました。

図3 長ほぞ込栓打ち仕口試験体

表2 長ほぞ込栓打ち仕口試験体一覧

図4に長ほぞ込栓打ち仕口試験体の引張荷重と柱-土台間変位との関係を示します。

図4 長ほぞ込栓打ち仕口の引張試験結果

いずれの試験体でも、まず10kN〜12kN付近で込栓が「へ」の字に折れるものの、荷重は上昇を続け、およそ15〜18kNのときにほぞにせん断破壊が生じて荷重が低下しました。写真3と写真4は、1体目と2体目の試験終了時の写真です。込栓が土台内部で折れ、土台から出ている端部が下がっていること、込栓は中央で折れ、ほぞにはせん断破壊が生じていることが分ります。

写真3 長ほぞ込栓打ち仕口試験体(No.1) 1体目  

写真4 長ほぞ込栓打ち仕口試験体(No.1) 2体目

2/11足固め仕様土壁フレーム水平加力実験@岡山理科大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

2/11(土)午後3時より、岡山理科大学工学部建築学科の構造実験室で足固め仕様土壁フレーム水平加力実験が行われました。ただでさえ寒い日でしたが、コンクリートと鉄骨で作られた大空間の寒いこと寒いこと。この実験を担当されている土壁WGの山崎雅弘先生は冬男なのですが、さすがにシャッターを締めて実験を行なっていました。

締まっているシャッターの内側が構造実験室

この日、加力するのは貫が3本入った足固め仕様の軸組で、軸組だけの耐力を知るために行う地味な実験です。

梁と足固めの間に、貫が3本入っています。

昨年度の実験で得られた土塗り壁の耐力から軸組の耐力を差し引くと、土壁だけの耐力が求められます。差し引く軸組分の耐力を計測するためのデータ取りをするというのが、今回の試験の目的です。試験体には柱に合計2tの錘を掛け、1/480rad、1/240rad、1/120rad、1/90rad、1/60rad、1/45rad、1/30rad、1/20rad、1/15rad、1/10radまでの加力をプラス方向、マイナス方向の各3回ずつ、都合30回の加力を行いました。

傍らで次の試験体の歪ゲージ貼りを黙々と行なう学生さん達

 
1/120radあたりから軋み音
だんたんテンポが早くなる

実験が始まってまもなく、1/120radあたりからバキッ…バキッ…と少しずつ木が軋む音が始まりました。1/90radになると、軋み音は早くなり、1/60radではお囃子のようなテンポの早い音が実験室に響きます。1/45rad・2回目の加力の際には、これまでとは違う、少し大きな音が聞こえました。柱頭のホゾにヒビが入り始めた音かもしれません。担当の山崎先生によると、これまでは1/20radあたりで柱頭のホゾが壊れたのではないかというような大きな音がしたという事でしたが、今回は1/20radでは特に大きな音はせず、相変わらずお囃子のようなテンポの早い音が続いていました。

 
1/15radあたりでホゾの破壊と耐力の低下

それでも、さすがに1/15radに入ると、1回目加力(引き)でバーンという大きな音がして「これはいよいよホゾが壊れたのではないか」と思いました。荷重と変形を表す履歴曲線は音がした部分で少し凹みました。その後は何事もなかったかのように1回目加力が進むかと思った矢先に、押し切ったところで前より大きな音がしました。この時も履歴曲線はグッと凹みました。

ホゾが壊れたと思われるところで履歴曲線に凹みがあらわれた

ホゾは壊れた(だろう)後は耐力が低下し、2回目加力の履歴曲線は1回目とは違うループを描きました。一見かなり耐力が落ちたように見えますが、錘を考慮して修正すれば、そう極端な落ち方ではないそうです。耐力としては2kNくらいでしょうか。(山崎先生による速報をお待ちください)

ホゾ破壊後の履歴曲線

ホゾ破壊後の履歴曲線

 
最終加力1/10radへ

さて、いよいよ1/10rad加力が始まりました。1/15radの時よりひときわ大きな音が断続的に続きました。まるで軸組のあちこちが悲鳴をあげているようです。足固めの竿も浮き始めました。満身創痍の状態で実験は終了しました。

実験終了時の試験体

足固めまわりのホゾ破壊の様子

実験終了までの履歴曲線

 
解体部材に見るホゾの破壊状況

実験室にこれまで実験を行なった5体の試験体の解体部材がありました。1/10まで加力しきった試験体の全てにおいて、柱頭のホゾは壊れたそうです。


 

2012年2月9日

1/24 全面土壁土台仕様静的加力試験@金沢工業大学

速報=河原大(実験検証部会 事務局)

1月24日(火)は大きな寒気が近づき、北陸を中心に日本全国各地で寒い、雪の降る一日となりました。富山県から見学に来られた方からも朝にご連絡をいただき、降雪の様子をお答えしました。富山県ではかなり積雪があったようですが、金沢にはほとんど積もっておりませんでした。

金沢工大で行われている今回の一連の実験は、土塗壁の小舞の間隔が変わった時、復元力特性・破壊形態にはどのように影響するのかということを主に知るために行われているものです。

試験体

図1 小舞間隔の違い:左が35mm 右が55mm(写真クリックで拡大します)

当日は小舞間隔が55mmのものについて、午前中に1P幅のもの、午後に2P幅のものというスケジュールで実験を行いました。見学者の方には、大変形(1/30〜1/10[rad.])辺りで見学いただきました。

写真1 実験中の様子

試験結果

図2 復元力特性のグラフ(写真クリックで拡大します)

2種類の試験体が描く復元力特性は、ほとんどちがいがなく、最大耐力だけで見ると、小舞間隔が35mmの方が少し大きいかというところです。

損傷状況

正面から見た各変形角での損傷状況としても、両種類とも明確な差は認められないように見受けられます。

写真2 小舞間隔35mmの変形の様子(写真クリックで拡大します)


写真3 小舞間隔55mmの変形の様子(写真クリックで拡大します)

個人的には20mmの差は大きく、間隔の狭い方が大変形角での土の剥落が大きかったり、これによって塑性域での曲線の形状が変わったり、などということを想像していたのですが、速報程度の結果からだと、あまり影響はないということになっています。

ほぞの損傷状況や計測した構面のせん断変形などについて詳細な検討を行って、仕様による影響がどの程度あるのか、もしくはないと言えるのか、ということを明らかにしていく予定です。

1/21 雇いほぞ込栓接合部の曲げ試験@京都大学生存圏研究所

速報=森田秀樹(宮崎県木材利用技術センター)

1月20日(土)午後、「車知仕口引張り・曲げ試験」と並行して、宮崎県木材利用技術センターに割り当てられた担当分の「雇いほぞ込栓接合部」の曲げ試験も行いました。

雇いほぞ及び込栓の大きさ・形状、梁背などを変えた11種類の試験体を用意して実験を行っていますが、公開実験では下に示すNo.1(標準的な試験体)とNo.8(込栓中心から雇いほぞ端部までの距離が短い試験体)の純曲げ実験を行いました。

図1 No.1(標準的試験体)とNo.8(込栓中心から雇いほぞ端部までの距離が短い)


写真1 試験装置にセットされた試験体

試験結果

図2 引張試験荷重-変形関係


加力は柱の引き側(+側)→押し側(-側)の順で行いました。両者ともに引き側(+側)60mmで雇いほぞのせん断破壊が生じ、No.1が高い耐力を示しました。その後、押し側(-側)でも変形量は同程度でしたが、耐力はNo.1の方が高くでました。(実際はNo.8の最後の曲線があったのですが、ノイズがひどくて掲載できませんでした)

試験体の最終変形状況

写真2 No.1試験体の最終変形

他条件のほとんどの試験体と同様に、外見での損傷は認められませんでした。

写真3 No.1試験体の込み栓の最終変形


写真4 No.8試験体の込み栓の最終変形

いずれの試験体も込栓にはわずかなめり込みが認められましたが、曲げ破壊などの損傷はありませんでした。雇いほぞのせん断破壊により耐力が決定されました。なお、No.8は込栓穴に隣接して節が存在しており、これが割裂を生じた要因になったかもしれません。

雇いほぞ-車知栓接合部の曲げ実験と比較して

同時に同じ場所で行った北守先生担当の雇いほぞ-車知栓接合部の曲げ実験との比較しますと、車知栓の場合は梁の幅方向に開きながら(車知が回転しながら)破壊に至ったようですが、込栓の場合は幅方向への開きはほとんどありませんでした。

車知仕口の引張り・曲げ実験の速報はこちら

1/21 車知仕口引張り・曲げ試験@京都大学生存圏研究所

速報=北守顕久(京都大学生存圏研究所)

実験検証部会 要素実験WGでは、伝統構法接合部の中でも主要な回転抵抗要素である車知仕口について、様々な各部の寸法条件をパラメータとした引張試験と対称純曲げ実験を行っている。

1月21日(土)の13時から16時まで、京都大学生存圏研究所木質材料実験棟において、引張試験、対称純曲げ試験の3条件計3体について公開実験を実施し、荷重-変形履歴曲線や破壊性状を観察するとともに、これまでに実施した結果を踏まえて各寸法要素パラメータが及ぼす影響について説明を加えた。京都府近郊の建築士、確認検査機関、工務店代表、学生等、計6名の参加あった。

写真1 公開実験観察の様子

試験の背景

伝統構法建築物の耐力評価に際し、接合部の強度性能の評価は重要な因子である。各地域や対象物件でさまざまに異なった樹種、寸法、要素形状を持つ伝統構法接合部に対して適切な評価を行うためには、材料や寸法の持つそれぞれの働きを明らかにする必要がある。本業務ではこれら伝統構法接合部に対して、将来的な算定式による評価法の確立を目指した実験的な耐力性能の検証を行っている。本項目ではそのうち、主に回転抵抗を期待して主要な柱-梁接合部に用いられる、雇い実-車知栓留め仕口(以下車知仕口)についての実験経過報告を行う。

試験方法

車知仕口に対しては①引張試験(K1)、②対称純曲げ試験(L1)の2加力条件での実験を行っている(図1)。なおこれは、車知仕口に作用する力がより明快な条件下で性能評価を行うためであり、実際の接合部においてこの力学条件が主要となるわけでは無い。①引張試験(K1)については単調加力を行い、②対称純曲げ試験(L1)については見掛けの接合部回転角を徐々に増加させる正負交番1回繰り返し載荷を行った。

図1 引張・曲げ試験装置(画像をクリックすると大きく表示します)

接合部の型式は、断面120×120mmのスギ柱に、断面120×240mmのスギ梁を両側から取り付け、断面30×120mmのヒノキ雇い実を挿入し、7.5×30mmのシラカシ車知で止めつける仕様を標準とし、図2に示す各部の寸法条件をそれぞれ変化させ、K1で12条件、L1で10条件に対し、それぞれ3体ずつの実験を行った。なお、柱、梁に用いたスギ材は静岡産の天然乾燥芯持ち材であり、含水率が20%程度のものであった。

図2 車知仕口各部の寸法パラメータ

 

表1:①引張試験(K1)の寸法パラメータ


 

表2:②対称純曲げ試験(L1)の寸法パラメータ

引張り試験の破壊性状

K1(引張)試験体については、目違の隅角部からの梁の縦割裂もしくは目違による柱の縦割裂の発生が破壊の起点となり(写真3)、その後梁が開くことによって車知が回転し(写真4)、最終的に車知が曲げ破断して耐力低下する(写真5)破壊性状がほとんどの条件で見られた。また車知を通常より扁平にした条件では、車知の圧縮座屈が先行することにより降伏する様子(写真6)も観察された。

写真2 破壊全景


写真3 破壊の起点


写真4 縦割裂の伸展


写真5 車知の曲げ折れ


写真6 車知の座屈


写真7 接合部の横割裂

曲げ試験の破壊性状

L1(曲げ)試験体については、K1(引張)と同様に多くは車知の回転に伴う梁の縦割裂により破壊を生じた(写真9)。一方でそれに先立って、K1条件ではあまり見られなかった梁端部におけるせん断破壊が徐々に伸展する様子も観察された(写真10)。

写真8 曲げ試験全景


写真9 梁の縦割裂


写真10 梁端部のせん断破壊

引張り試験の荷重-変形関係

図3に引張試験で得られた、片側接合部の荷重と変形の関係(初期すべりを除外し、3体を平均化したもの)を示す。

図3 引張試験荷重-変形関係

標準試験体(K1-1)では最大耐力約38kN、最大耐力時変位約5mm程度であった。また、全体的に最大耐力に達した後にやや急激に耐力低下する様子が観察された。

図3の結果の荷重を試験体の車知の長さで除し、車知の単位長さあたりの耐力に換算したものが図4である。

図4 引張試験荷重-変形関係(単位車知長さあたり耐力)

図4左上では梁せいおよび雇い実せいの異なる試験体同士を比較したが、試験体間で最大耐力や変形性能に大きな差は見られず、引張性能では概ね車知長さに比例して耐力が定まると考えられる。ただし、梁幅が大きいときにはやや初期剛性が高くなった。また、車知の位置が異なった(図4右上)としても、車知の耐力発現効率にはほとんど影響が無いことが分かった。一方で、車知の形状は特に初期剛性に影響を及ぼし(図4左下)、車知が厚くなると初期剛性が向上し、また、車知の扁平率が高まると、座屈によって早期に降伏が生じた。ただし、これらは最大耐力にはほとんど影響をもたらさなかった。一方で、雇い実導入溝の基部が無い場合や、目違いが無い場合には最大耐力が大きく低下した(図4右下)。

以上より、車知継ぎ手の耐力は梁の縦割裂によるものであり、目違で柱に収まっていることや、梁の溝が三次元的に基部で押さえられていることが梁の縦割裂を抑制する効果があり、車知仕口の引張耐力発現に大きく影響する事が明らかとなった。

曲げ試験のモーメント-回転角関係

曲げ試験における、仕口モーメントと回転角の関係を図5、図6に示す。なお、結果は図3と同様に、初期遊び等を除外した後、同条件3体の結果を平均化したものである。曲げ試験では車知側が引張力を受ける場合と圧縮力を受ける場合でそれぞれ抵抗要素が異なると考えられる。そのため、それぞれの結果を別々に表示した。

図5は車知-雇い実のある側が引張力を受ける場合であり、一般に車知仕口の耐力発現機構として期待される加力方向である。

図5 曲げ試験モーメント-回転角関係(車知側引張)

標準型(L1-1)では最大モーメントで約6kN.m、最大モーメント時変形角で1/20radの結果であり、最大モーメント後には急激に耐力低下を示した。梁せいは耐力性能に最も強く影響し、梁せいが大きくなると耐力が向上するが、反面、変形性能は低下した。その他の各寸法条件の違いにより、若干の耐力性能に違いが見られたが、その影響度合いについては今後の検討課題である。

図6には車知-雇い実のある側が圧縮力を受ける時の結果を示した。

図6 曲げ試験モーメント-回転角関係(車知側圧縮)

図5と図6の結果を比較すると、標準型の寸法条件では、初期剛性については車知圧縮の結果が車知引張と比べて概ね半分程度と柔らかいが、最大耐力については概ね4kN.mと、車知側引張の場合の2/3程度の耐力を有した。車知側圧縮条件では雇い実が肘木のように働き、肘木の先端と梁の小根ほぞとの間で鉛直偶力を生じて耐力発現すると考えられ、最大モーメントは肘木(雇い実)が曲げ折れることで決定された。結果として車知側圧縮条件では急激な耐力低下を生じる履歴性状を示した。

まとめ 
実験の結果を以下にまとめる。

•車知仕口の引張耐力は車知が回転力を受けることによって、梁が縦に割裂破壊することによって定まる。
•目違や雇い実導入溝の基部は、それぞれ梁の割裂を防止し、耐力を高める働きをしている。
•車知を厚くしたり扁平率を変えると初期剛性や降伏耐力に影響するが、最大耐力にはほとんど影響が無い。
•曲げ試験において、梁せいが大きくなると初期剛性は向上するが、半面変形性能が低下する。
•曲げに対しては、車知側が引張力を受ける場合のみならず、圧縮力を受ける場合においても抵抗機能を持ち、標準型の試験条件においては、初期剛性で1/2程度、最大耐力で2/3程度の耐力性能を有する。なお、この圧縮側の抵抗メカニズムでは梁せいが大きくなってもそれほど性能向上は見られない。
•引張試験の結果からの曲げ性能の評価法については今後の検討課題である。