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7/12(土) 第四回 フォーラム in 滋賀 「石場建てを含む伝統的構法木造建物の設計法」報告会
写真速報

※当日、会場で配布したアンケートを書く間がなかった方のために、オンライン回答フォームを用意しました。こちらからどうぞ

滋賀県草津市 立命館大学BKC ローム記念館 大講堂での報告会にお越しいただきました皆様、ありがとうございました。鳥取、新潟、高知・・遠くから見えられた方も多く、会場は超満員で関心と期待の高さがうかがわれました。

当日は、鈴木祥之検討委員会委員長よりの挨拶に引き続き、つい最近の異動で着任したばかりの国土交通省 内田木造住宅振興室長からの来賓挨拶がありました。

続いて鈴木祥之委員長から、3年間の検討委員会の取り組みについての話があり、設計法の内容の話に入っていきました。

トップバッターは齋藤幸雄 設計法部会主査。最初に建築基準法が制定されてから現在までの変遷と設計法作成の経緯についての説明があった後、柱脚固定や剛床仮定を前提としない、高い変形性能を有する伝統的構法の構造的特徴に合った3つの設計法案の概要が語られました。

続いて、向坊恭介委員(立命館大学理工学部)が、伝統的構法の構造特性を活かした設計法にするため、何を課題として検討してきたのかについて、実大震動台実験のデータや解析をもとに、次の3つを説明しました。 1) 柱脚の仕様と滑り(石場建て仕様で柱脚が滑ることにより、地震入力が小さくなるのか?滑りに伴う損傷はどうか?) 2) 剛床でない水平構面の影響(伝統的構法のように剛床仮定を満たしていない場合に生じる影響はどうか?) 3)1、2階の耐力バランス(1階と2階の耐力のバランスを考慮した場合の変形角はどうか?)

そして、いよいよ設計法案の内容に。まず、詳細設計法について、長瀬正委員(日本建築総合試験所)より計算の流れについて説明がありました。①建築物重量と柱軸力、②各階の復元力特性、③近似応答計算による代表変形角、④各層の鉛直構面の最大変形角、をそれぞれ算定した上で応答変形角を求め、それが設計のクライテリアを満たすかどうかを検証する、という流れになります。その上で、柱脚フリーの場合は、柱脚の滑り量も算定します。

最後に、実務者が大きな期待を寄せる、標準設計法については、の寺門宏之委員(京都市都市計画局建築指導部)から。建築物の各階・各方向のせん断耐力が、建築物の作用せん断力よりも高いことで、構造安全性が確認される、というのが、標準設計法の考え方です。せん断耐力は、全面壁、小壁、柱ほぞ、柱-横架材など、さまざまな要素に応じて、表で用意されており、それを単純加算した上で、せん断耐力を低減させる要素(柱脚の仕様、偏心率、水平構面の仕様など)があれば、それを低減して求めます。建築物の作用せん断力は、建築物重量に階高と地盤の種類に応じて得られるCb値を乗じて求めます。仕様規定ですから、柱脚や基礎の仕様も決められています。

先生方の説明が終わったあとで、補助事業責任者の大江忍さんから、今後の取り組みについての話がありました。まず、標準設計法がまだ実務に使えるところまで至っていないこと、理論上では設計法ができあがってはいても、まだまだ安全率が高すぎて、現実的でない仕様になっていることについて、謝罪がありました。

その上で、今後、事例検討を通してこの設計法をもんでいき、現実に使えるようなものにしていきたい、そのために実務者のさらなる協力をお願いしたい、現実に使えるようなものができてから法制化、マニュアルづくり、講習会などをして、はじめて「あたりまえに石場建てができるようになる」という目標が達成されるのだ、ということが述べられました。検討委員会としてはすでに終了しているので、次の体制づくりが求められます。

追加配布資料:最近の国の動き

  もう一方で、大江さんから、国の取り組みとして「建築基準法改定にともな附帯決議」「国土強靭化計画」「水平拘束をした柱脚仕様についての建築基準策定」という3つの動きと、民間での「伝統構法を無形文化遺産に」という運動がたちあがっていることも紹介されました。

そこへ、この検討委員会の発足に尽力された馬淵澄夫衆議院議員が、来賓挨拶に駆けつけてくださいました。剛性によって地震力に抵抗するのではなく、地震力を建物に伝えない石場建てのしくみを、日本文化の根本にある「共生思想」に重ね合わせ、伝統構法を未来につなげていく必要性を力説された話が印象的でした。

最後の質疑応答では、標準設計法で基礎をコンクリートによるベタ基礎に限定していることについて、版築や自然石にも選択肢を広げてほしいなどの意見も出ました。詳しくは、ビデオがアップされてから、ご確認ください。