2008年12月10日

2008/12/04 実大実験A棟の記者発表レポート

12/4、E-ディフェンスで行われた「伝統木造住宅A棟」の公開実験終了後、
午後2時から、実験担当者による、
結果の概要を伝える記者発表がありました。
引き続く質疑応答の中で、大事なやり取りがいくつか見られました。
居合わせた方々は少ない、と思いますので、
今後の展望につながると判断した、次の2項目の概要を、
お伝えしましょう。
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■柱脚の扱いについて
○質問:
今後3年の間につくる、とされている設計法の中で、
柱脚の扱いはどうなるか?
今回の実験のような、「横方向の移動を拘束」する、
あるいは、現行の仕様規定にある「固定」が条件になると、
伝統構法では一般的だった「直置き」が出来なくなってしまう、
という縛りをかけることにはならないか?
○実験実施委員会主査の回答
いずれは、「直置きが可能な設計法」が生まれる時代が来る、
と認識している。
けれども現況は、柱脚の動きを予測し制御しうる段階にはない。
まずは、柱脚の動きを拘束することを前提にした設計法をつくりたい。
別のプロジェクトで、柱脚の条件に関する解明も考えられているので、
可能なら、柱脚の動きを許容する設計法にも取り組んではみたい。
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●設計法の枠組みについて
○質問:
現代構法の枠組みの中に、伝統構法を位置づけるのでなく、
伝統構法独自の設計体系を期待したいが?
○木造住宅振興室長の回答:
伝統構法を正面から取り上げて、
科学的に解明する時代にようやくなった、と受け止めている。
まずは、
これからは、「伝統構法の枠の中に現代構法が入ってくる」、と考えたい。
次に、
伝統構法は「地域分散型」として捉えたい。
共通項は、国のレベルで明らかにして、
地域に関わるところは、国で支援して明らかに出来る、ようにしていきたい。
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実際のやり取りは、もっと入り組んでいましたが、
要点のみを抜き出せば、上記のようになる、と思います。
上記の2項目のやり取りについて、
皆さまは、どのように受け止められるでしょうか?
ところで、現室長がいつまで現職に留まるか、
また、この基本方針が、人が変わっても受け継がれるのかは、
大いに気になるところです。
支えになるのは、直接働きかける世論の力でしょう。
現場の皆さまの踏ん張りが、死命を制します。
A棟 実験調査
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ともあれ、国の法規定を変えようとする、ビッグプロジェクトの実験に、
職人や技術者などの実務者が、研究者とともに、
企画の段階から参画して、実験そのものの実施にまで、
多数が関わるのは、史上初めてで、画期的な取り組みです。
日本の建築構造に関わる歴史で、画期の1頁になるに違いない、
と確信します。
参画された方々、協力された方々に、改めて敬意を表します。
そして、目を凝らして見学された方々も含めて、
ほんとうにお疲れさまでした。
いよいよこれからが、本番です。
(レポート 緑の列島ネットワーク 相談役 鈴木有)