公開イベント
 

全国6ヶ所キャラバンツアー 講演会「知恵と工夫の設計—伝統建築に学ぶ」
日田会場

キャラバン講演会も最終日となりました。小雨の中、九州地区として、伝統的町並みが残る大分県日田市の会場でしたが、九州全域より、208名の方が、日田市中央公民館(日田市教育委員会後援)に集まっていただきました。

階段上の設備も素晴らしい広い会場で、伝統構法の町並み保存に取り組む市民や伝統構法を継承している職人さん、設計士や木材関係者、それを指導する立場の行政マンに参加して頂きました。

最初に、この委員会の事業責任者である大江忍より、この委員会の経緯の説明をし、司会を務めました。

講演の最初は、構法歴史部会の麓和善主査より、全国22カ所の伝統構法の建物の調査事例の概要について説明がありました。

引き続き、具体的な仕口継手の部位についての知恵と工夫についての説明や構造的な木組みの特徴や「先人の知恵」についての解説が構法歴史部会の松井郁夫委員からありました。

次に、構法歴史部会の鳴海祥博委員から、構法歴史部会で提案された伝統的構法の定義についての説明と建築学会の構造用教材の図の変遷を使っての在来軸組構法と伝統構法の違いについて解説がありました。

ここで、10分の休憩をはさみ、本委員会の鈴木祥之委員長より、「伝統的木造建築物のこれからの設計法の考え方について」講演がされました。

内容としては、伝統構法の構造的特徴は「剛でもなく柔でもない」構造であることの説明や、今までの実大実験の映像、データーなどを用いての説明、また、今年度提案する予定の設計法の概要について説明がされました。

引き続き、質問の時間となり、会場で出た質問として、「丸石でひかり付けをした土台の場合は、設計法ではどうなるのか?」という問いに対して、鈴木委員長より、「現在のところ、そういう細部の検討まで、至っておらず、検討課題として残っているが、今は、基本的な設計法を作ることであり、課題は今後も検討していく」という回答でした。

また、二つ目の質問は「石の表面の仕上げによってすべりは、バラバラになるのではないか」という問いに対して、鈴木委員長は「バラバラというバラつきがあるから逆によいのではないか、木の強度にもバラつきがあるから、1か所が壊れても、均一でないので、全部が壊れることはないので、バラつきがあるのは、非常に有効であるのではないか」という回答がありました。

三つ目の質問は「今度提案される設計法が使えるようになる法改正あるいは、告示の時期はいつなのか」という問いに対して、鈴木委員長は、「現在のところは、決まっていないが、できるだけ早く法制化をしてほしいということで、国交省にお願いしている」という回答でした。時間も20分延長したので、アンケートを集めて、熱い拍手の中、講演会は、終了いたしました。(文責 大江忍)