公開イベント

2010年9月12日 記録ビデオ:

2010年9月12日(日)に金沢工業大学で行われた金沢シンポジウムの、記録ビデオ・発表スライド・発言テキストを公開します。

振動論による設計法の考え方
設計法部会 斎藤幸雄 主査

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発表スライド

斎藤幸雄 主査:広島国際大学斎藤です。よろしくお願いします。
私の話は、振動論による設計法の考え方、これは私がこのタイトルを考えたわけでなくて、今日の企画をされた後藤先生の方から、こういうタイトルで話をして欲しいということで、さて何の話をしようかと色々考えてみたのですが。建物の耐震性能をどんな耐震性能をもっているのかということを検証するためには、やはり元々地面が揺れて、建物に振動が伝わるわけですから、その地震時の挙動、揺れ方それをできるだけ正確に把握するということが当然望ましいわけです。ですから言い方を変えれば地震という動的な問題なのです。他の荷重外力と違いまして、地震動というのは揺れているのをどう言った風に耐震性能を評価するかということですから、一般に行われている解析あるいは計算というのはほとんど静的、元々動的な問題を静的に置き換えて検討しているわけです。ですから逆に言いますと今、ほとんどの設計者はその静的なやり方に慣れきってしまっていて、元々建物が地震時にどんな揺れをするのかということを忘れてしまっているという側面もあります。やはり常に動的な問題としてとらえるということが重要ではないかというように思います。それは言ってみれば振動論に結びつく話なのです。

その地震時の挙動をとにかく把握するためには、振動論に基づいた解析・計算というものが必要になります。そこで、今まで特に超高層建築物など、そういうものはこういった振動論に基づいて、解析されてきているのですけど、その場合に結果の精度あるいは信頼性というのが非常に大事なのですが、この辺については、一方で非常に進歩していますが、果たして結果が本当にそうなのかというあたりです。そうすると所謂設計法と言うところからいくと、もう一つ大事なのはやはり設計者の判断です。最終的にはそのように色々な解析・計算をしても、本当にその建物はどうなのか、あるいはどうしたらいいのかというのは設計者の判断が極めて大事です。だから色々な解析・計算をしたとしても最終的には設計者がそれをどう考えると、これが抜けてしまうと単なる解析・計算になってしまいます。

私の振動論による設計法という話は実はこれで全て終わりなのです。これは今まで何度も映像を見ておられる方もいると思いますが、京町家のEディフェンスでの実験の様子です。これはJMA神戸を入れているわけですが、非常にふわっと揺れて、倒れないと。こういうものを所謂今木造一般でしている仕様規定にあてはめて、これは耐震性能がないということを言うとすると、やはり実際と合わないです。こういうものを評価しようとすると、そこに動的な問題、振動論を何らかの形で持ち込まないと、耐震性能を把握できないということになります。これはその続きで、室内なんですけど、阪神・淡路大震災で、建物は倒壊しなくとも、家具が倒れてその下敷きになって亡くなった方もいます。この建物の場合は、見てもらったらわかるのですが、独特の揺れ方でタンス類も倒れてないのです。こういう風な、ある意味での良さがあります。だからそういったことをトータルで評価しないとダメだということです。

振動論というと、例えば2階建ての建物で、これは2質点系という串団子に置き換えて振動論を解くということです。こちらは地震外力の方で、これを解けばいいのですが、一般には減衰項が入ってきますと少しややこしくなりますから、そう簡単にはいかないと。この外力の方を0にすると、これは所謂自由振動方程式、例えば建物を引っ張ってから話すと、自然に揺れが治まって、あるところで止まってしまうという振動方程式になります。ここで減衰は小さいということで、ここを無視すると割と簡単な振動数方程式になります。そうするとこの例えばこの2階建ての振動モードが割と簡単に求まるわけです。実はこういうのは、今伝統構法の委員会で用いろうとしている限界耐力計算のなかでこういうものを使っているわけです。今のような今日の話のような、振動論そのものの話をしようというつもりは全くありませんが、今現在は、これは皆様ご承知のように2007年の法改正で、建物区分ごとに、超高層であれば地震応答解析、あと建物の規模によっては保有水平耐力計算、許容応力度計算だとか、木造の場合ですと4号特例で壁量計算とかそういう仕様規定を満足していればよろしいと。それで今言った限界耐力計算については、これは超高層以外は全ての建物はこれを使って計算してもいいということになっているわけです。

この2007年の改正でもう一つややこしい問題として、現実問題としてはこの構造計算適合性判定、つまり限界耐力計算を使いますとこの適判という専門家のチェックを受けなければならないと。これがまた伝統構法より限界耐力計算を使って確認を出すと、中々確認が通らないというその大きな足枷にもなっているわけです。こういった今法の中で使われている手法というのは上から、時刻歴応答解析、限界耐力計算、保有耐力計算とあるわけですが、一番、限界耐力計算を伝統構法で使おうと、一方で在来軸組の場合は所謂4号特例で終わりと、この間にギャップがありすぎるわけです。それでこの上2つは、限界耐力計算は略算法でありますが、一応地震時の挙動をきちんと計算して評価するという方法ですから、保有耐力以下のものとは違うわけです。時刻歴応答解析というのは一番高度な計算手法といわれているのですが、1995年の兵庫県南部地震以前は、エル・セントロとタフト波というその2つの応答の結果を参考にして設計されたわけです。

これは1977年、30数年前ですけれど、ここに黒丸を打ってあるのは実際の設計ベースシア係数です。これはエル・セントロとタフト波の応答値なのですが、ちょうどタフトのピークがここにあります。1.6秒から1.7秒にあって、この谷間を狙って設計しているということが、時刻歴応答解析をしていますと、現実に起こっているわけです。だから入力との関係というのは非常に重要な位置を占めているわけです。時刻歴応答解析の一例を見ていただきたいのですが、これは鉄筋コンクリート造、こちらは下が免震になっています。これは部材レベルで、実際の10倍に拡大していますが、免震の場合は、下が並行に動いてあまり変形をしないと。赤は部材が降伏しているものですけど、時刻歴応答解析というのは地面の揺れとともに建物がどんな風に揺れるかという、こういった解析が可能なわけです。こういうその時刻歴応答解析というのは、最初に、先ほど長さの話もありましたけれど、コンピュータの性能が非常に向上した、解析法が改良されたということで、どんどんより詳細な解析が可能になってきているわけですが、果たしてそこで重要なのは、詳細な解析をやればやるほど、それが本当に正解なのかということがいうことは常に一方で見なければならないと思います。やはりその解析目的にあったモデル化ということが当然必要なのですけれど、詳細な解析をやりますと、色々なパラメータも多くなりますし、その色々なパラメータは独立のものありますし、他のパラメータと関連している部分もあるわけです。そういうものがたくさん入ってきますと、その結果が本当に正しいかどうかという検証が非常に難しいのです。非常に高度な判断力が求められます。

僕はいつも思っているのですけれど、木を見て森を見ずというように、全体がどうなるのかということを見ずに、どんどん詳細な解析をして、こんなことになろうという、その辺のバランスが非常に重要ではないかというように思います。今、今年の検討委員会の解析ワーキングの中で、この後お話があると思いますが、E-ディフェンスでの実大実験、その応答予測をやっております。これなんかは石場立てで足下が動くかもしれない、そのような解析モデルで色々検討されているわけです。そういう解析結果をどう見たらいいかというのが常に大きな過大だと思います。これは話変わりますが、関東大震災直後の写真なのですが、当時はほとんど木造でしたから、火災が起こって、広島の原爆のあとのような感じですが、この大震災のあとに市街地建築物法が改正されて、初めて法令の中で、振動法という、震度0.1というものが最初に来て、詳細は省力しますけど、1950年に建築基準法ができまして、このときも同じ震度法で、このとき0.1だったのが、このときには0.2に、これは材料強度が変わりましたが、実質的には中身は同じです。このときは高さ方向は、16mを超えるときは、4m毎に0.01を加える、だからいまのAi分布と比べると上層部の地震力の大きくなり方がほんのわずかなのです。だからいわゆるこの時代の考え方というのは、建物の地震時挙動、建物がどうなるかという規定とはとても言えないと思います。それが1981年の、当時は新耐震設計と言っていましたが、このときに、今までの超高層の応答解析の色々な結果でありますとか、その後色々耐震に関する研究が進みまして、地震時の応答を考慮した形で、地震時の設計用応力というものが決められました。ただしこれはやはり静的な考え方と言いますか、静的に加力をして、それで応力を出して、それが許容応力度に変わるとか、あるいは保有耐力の場合には特にDs値というもので評価して、大丈夫か大丈夫ではないかということをやっているわけですから、考え方としては振動論がかなり取り入れられているのですが、あわせて仕様規定的なものも合わせて、この中に盛り込まれているのではないかというように思います。それで2000年に限界耐力計算が取り入れたれたわけです。

少し古い話ですけれど、昭和の初めに剛・柔論争というものがありました。剛構造、柔構造のどっちが良いかと。今いったですね特に1981年までの、耐震規定の考え方は、多分この剛構造にのっとって規定されたのではないかというように私は考えています。昭和10年に京都大学の棚橋先生が地震の破壊力と建築物の対震力にかんする私見という有名なものですが、この中でこれは今現在我々が言っている話なのですが、建物が持っているポテンシャルエネルギーが地震による破壊力、今でいう地震の入力エネルギーを上回れば、建物は破壊には至らない。これは75年前にこういう話をされたものですから、おそらく当時の人は全然理解できなかったのではないかと。あんまり早くこんな話をし過ぎたのではないかと思いますが、剛・柔論争を私なりにこれを解釈すると、これは振動論の本を見ると載っているものですけれど、正弦波が入った時の建物の、応答か速度倍率を示したものです。1は共振です。減衰がありますので発散はしませんが、大きな応答になります。所謂剛構造というのは、オメガ0が建物の振動数ですから、固いと振動数が大きくなる。だから地動よりも2倍以上あれば、ほとんど増幅しないのです。だから剛構造というのは地震動を受けてもそれほど増幅しない、だから最初の建築基準法の中で、震度0.2で、上部のゆれもほとんど大きくならないという、そういう考え方はこういった考え方に乗っ取っていると思います。それに対して、この1.41より大きくなると今度は、応答が小さくなるのです。だから建物の固有周期を長くして建物の振動を減らすというのは、剛・柔構造論というのは、多分この領域に入ってくるのだろうと思います。

ただ実際の地震というのは、このように単純にどこかでピークをもって終わりというわけではありませんので、そんな簡単にはいきません。だけどこれは一つの考え方として、例えば建設する地盤で、地震の卓越周期がはっきりわかっていれば、こういう考え方を持ち込んで、ここをできるだけ外せばいい訳です。ただし、剛構造の場合は、これはあくまでも弾性論です。剛構造の場合、もしそれが塑性域にはいって、周期が長くなりますと、こっちの方にいきますから、かなり応答が大きくなるゾーンに入り込む可能性があります。ですからもし剛構造をやるなら耐力をおもいっきり大きくして、全く塑性域に入らないということになれば、それは一つの考え方として十分成り立つと思います。要は振動論的に耐震安全性を検証しようと思えば、建物のそういうことを評価できる時刻歴応答解析あるいは限界耐力計算をやって、地震時の挙動を明らかにして、その建物の設計のクライテリア、要するに地震動レベルに応じて、どの程度損傷にとどめるか、あるいは変形にとどめるかと、それがその通りいけばそれでいいのですけど、もしNOという答えが出れば、もう一度元に戻って建物の構造を考え直すということになると思います。

今この設計法の中で、基本的な仕様として、限界耐力計算というものを考えているわけですけど、この限界耐力計算の特徴としまして、一質点一自由度系に置き換えて、応答を把握しようというところが最大の特徴なのです。弾性、建物が損傷を受けない範囲であれば非常に明解なのですが、建物が塑性域に入った時の応答をどう評価したらいいかというのが、若干ややこしいと。いずれにしてもそれを評価して、もう一つ大事なのは設計のクライテリア、損傷限界と安全限界のレベル、つまり損傷を受けないレベルというのはこういうものですよと、安全限界はこういうものですよということを明確にしなければならないわけです。特に安全限界については、今まで層間変形角に置き換えて何十分の一にするとか、割と変形だけの話に偏っているのですけど、やはり建物全体を見たときに各部の損傷がどの程度に収まるか、だから例えば1/20でOKだというあたりきちんとしておく必要があると思います。

これは振動論の詳しい人にはこのような話はしても、仕方ないのですが、多質点系になると固有周期が同じでも振動モードが一般的には異なると言うところで少しややこしくなります。一次モードというのは、一番長い周期で揺れるものです。固有周期は同じでも、もうひとつ必ず高次モード、2質点系ですと、下と上が逆に揺れるというモードが必ず出てくるわけです。一次モードも、1階と2階の剛性質量のバランスによって、仮に固有周期が同じでも、こういう風に振動の形が異なってくると。ですから多質点系になると、単純に固有周期だけでは扱えないということになります。限界耐力計算ではとにかく、多自由度系であろうが、まず一自由度系に縮約して評価しようという考え方であります。一自由度系というのは、一質点系でも、この画面の並行方向にだけに揺れる、本当は抵抗がこのような方向でも、それと直行方向には揺れるわけです。

一応今考えているのは、入力と同じ方向にしか揺れないというような一自由度です。固有周期はこういう形で質量とバネで求まりますから、とにかく、一自由度系ですと、建物の固有周期というのは、質量とバネしか関与するものがありません。ですから階高とかそういうものは、少なくとも振動論的に見れば関係ないわけです。もし質量も2倍、バネも2倍ということになれば固有周期も同じということに当然なるわけです。そうすると振幅が、いくら変わろうが、これが弾性である限り、振動は変わらない、これがよく間違われます。振幅が小さくなったり、大きくなったりすると、どんどん周期が変わるのではないかと。あくまで弾性の場合の話ですが。それでこういう多多質点系を一質点系に置き換えますと、このときに一応限界耐力計算の前提となっているのは、60m以下では色々な反対に揺れたりするというモードがあるのですが、この一次モードが卓越しますと。だから一次モードの場合だけを考えて、それを等価な一質点系に置き換えて、建物を評価しましょうというのが、限界耐力計算の基本的な考え方です。

もう一方、そこで入力の加速度を、入力は告示で解法工学的地盤という、かなり大型の建物の杭を打った支持地盤というものだと思ってもらったら良いと思いますけども、その解法工学的地盤でのまず、加速度応答スペクトル、加速度応答スペクトルというのは要するに弾性であれば、例えば一秒の固有周期でありますと、応答の加速度がどのくらいになりますよというのを表したものですけど、その解法工学的地盤と地表面とを両方示されているのですが、ただし地表面の大きさというのは、略算して、このくらいの大きさで考えてくださいよと。これについては詳細な地盤調査をやって詳細な解析をやって、その増幅度を計算しても良いということになります。で、実際には例えば地震が起こって、岩盤で地震が起こって伝わって建物の所まで来るわけですが、この入力一番基本的な考え方は、今言ったその解法工学的地盤、かなり固い層ですけど、ここでの入力というものは日本全国どこでも同じという考え方です。つまり実際には日本全国の地盤によって、あるいはその細度によって、地震の大きさなり、揺れの違いなんていうことは当然あるのですが、一応法的にはこの細かいことにはとてもできないということで、ここでは一緒ですね、このうえの表層地盤の影響が圧倒的に大きいという考え方です。一般の一番固い地盤は第1種、軟弱な地盤は第3種というふうに決めて、実際には地震の震源特性だとか土地の伝搬特性だとか、どういう地震が来るかということに影響を及ぼしているのですけれど、これよりはこの表層地盤での影響が一番大きいというそういう考え方で、その解法工学的地盤での加速度応答スペクトルというのを与えて、後は表層地盤での増幅を考えましょうというのが告示の考え方だと思います。

問題は、塑性域に入った時にどういうふうに応答を求めるかということで、一つは等価剛性、塑性域に入った時にこの勾配ですね、この勾配と質量から固有周期が求まると。それからいわゆる木造の場合は注意しなければならないのは、スリップ型といって、こういう履歴の面積が、例えば鉄骨造の履歴と比べるとかなり小さいのです。その辺は注意する必要があると思いますが、この履歴面積から等価粘性減衰を求めて、その減衰によって入力を落とすことができるという考え方でやっているわけです。それがこれでして、元々持っている内部粘性減衰5%で、あっと今の履歴によって生じる等価粘性減衰、これらを足し算した物を減衰として、ここにあるこういう低減率で加速度を落としてよろしいということなのですけど、この場合に重要なのは、元々の5%という値も若干大きめですし、このまま本当に足し算指定医の課という部分もあります。減衰は実はこの低減率と加速度が非常に大きく関係しますので、これはやはり慎重に扱う必要があるのじゃないかというように考えています。

例えば、仮に今のでいくと固有周期が0.7秒で所謂ベースシア換算で0.4ぐらいの建物、木造の伝統構法の建物があったとして、これは極稀地震にどうして耐えることが出来るのかと。先ほどの例えば0.7秒ですと、第2種地盤の表層で1200galです。もし建物が弾性ならば、1.2Gの力を受けるわけです。これに対して、ベースシア係数0.4だと全然足りないのです。それは例えば仮に等価固有周期が1.5秒、減衰が16%だとすると、ちょうどこの1200galというものが400galくらいに低減されます。そうするとベースシア換算0.4でなんとか大丈夫だろうと。これは応答加速度だけで見ていますから、もうひとつは当然実際の設計、あるいは検討の場合は、変形もきちんとチェックする必要があるのですが、今耐力に仮に目をつけても、こういう理屈で一応OKになるということです。

ただしこれは告示の与えられたスペクトルに対して言えることでして、どんな地震でも今の話が通用するかというと、必ずしも言えない場合もあり得るということです。それは非常にややこしい話になりますから、止めておきますが。実際の応答値はこの復元力特性を設定して、ある層間変形角の時の等価剛性を求めて、質量はわかっていますから、等価固有周期が求まります。等価固有周期と、先ほど言いました減衰から、その応答スペクトルが出てくるわけです。それを今度は固有周期で見ると、その固有周期になる時のここの点が応答値になるのですが、その応答値が実際の復元力特性の上にいっていると、これはもっと変形が進まないと、ダメだということです。こういうことを繰り返しやっていくと、いつかこの変形が進めばちょうど復元力特性とばっちり合う部分が出てくるわけです。これが所謂応答値ということになるのです。

限界耐力計算はまだいくつかの課題が残っておりまして、所謂水平構面、床がどうしても変形すると、それから、鉛直構面で構造要素の配置によっては偏心が起こると、これが全体の応答にどのような影響を及ぼすのか、それから石場立ての柱脚です。これをどう設計したらいいのか。あるいは剛性耐力バランスが応答にどのような影響及ぼすかという課題があります。これについては今年のEディフェンスの実大実験で色々検証しようということです。床の話は、普通、剛床という仮定ですると、偏心がある場合に全体が回転するのですが、柔らかい場合は、こんな風にならないと。それから偏心の無い場合は床が柔らかいと、構造用が何もない部分が大きな変形をします。これが剛床ですと、全体に影響しますから、この部分でかなり違ってくるというわけです。実際こういう、床が変形するような試験体の実験をすると、これの測定結果と限界耐力計算を重ね合わせると、中間的な値になってしまします。こういうものに対してどういう評価をしていったらいいかということです。これは在来の、伝統構法ではありませんが、とにかく1階が変形する、あるいは倒壊するという建物が非常に多いわけです。ですから1、2階の剛性耐力のバランスがどうあればいいのかというのが検討課題として、今度の実験でもこれを確認したいということです。

それから石場立てです。石場立てについてはよく、免震効果があるのではないかと話があります。石場立てについては所謂柱脚しない、何も固定しない、これはそれでもすべらないという場合と、若干滑るけれど滑りを許容するという考え方もあるかもしれません。それから柱脚を何らかの方法で止め付けるという、あるいはこんな下のような、伝統構法には当然なじまないという考え方もあると思いますが、柱脚を何らかのバネをつけて、移動量をコントロールして、ある量に抑えるという。これは建物は軽いですから、十分可能だと思いますが、色々なやり方がありますから、これについては初めからこんなものは駄目だとか、これしかないとか話ではなくて、全ての可能性について検討していきたいと考えているところです。

免震の場合は元々摩擦係数を非常に小さなものにして、積極的に滑らせて、上に大きな入力を与えないというのが免震構造です。ですから摩擦係数も0.1というのは、一番小さいのは0.02とか0.03とかそういう滑り支障を作って、上に入る入力を抑えるという設計がされているわけです。通常こういうすべりの場合も免震ではなにもないと、どこかに滑っていって、どこにいくかわからないということでは困るので、バネとかダンパーをつけて、変形をあるところで抑えて、ダンパーでほとんど元の位置に戻るというようなことで、されているわけです。だからこれと同じ考え方を石場立てに持ち込むのは、少し難しいです。そういうきちんと摩擦をコントロールして、それを全て設計に反映させようとするのは、中々難しいところがあります。その実際の滑り支障というのはこういうものですけど、非常に小さなものです。

これは最後ですけどやはり限界耐力計算でやった場合、最初に構造計画の問題点、つまり解析というのはある過程でその答えは出ますけど、その建物の全てのことがそこに盛り込まれているかと、そうはいかないところがあります。だから構造計画というのが一番大事でして、変なことがそこで起こらないということをそこでチェックしておかないといけません。かならずその計算結果いついては、特に振動的な要素、減衰だとか、固有周期だとか、こういうものをきちんとチェックをして、どういう風な振動特性を持った建物に設計しようとしているのかということを、チェックする必要があると思います。これは一番最後ですけども、最近設計された建物の例で、損証限界時の固有周期で0.7秒くらい、もっと長いのも短いのもありますが、大体このくらいが多いです。安全限界は1.2〜1.7秒くらい、大体損傷時の2倍以上になっているのがほとんどです。減衰については、12〜18%くらい。安全限界についてはどう設定するかというのは、設計者の判断によりますが、1/30〜1/17くらい、というのが今現在の設計の一つのデータです。いずれにしても、どんな建物にしようかっていうのと、結果がどうなっているのかということを、ただ変形だけでなくて、振動的な部分でどんな特性のものになっているかというのを、きちんとチェックして上で設計をして欲しいという風に考えているところです。以上で私の話をおわります。どうもありがとうございます。