実験検証部会
部会詳細

実験検証部会の方針

1. 主な目的

  1. 伝統構法の構造力学的な課題である柱脚の移動や水平構面の変形などによる影響を解明するとともに限界耐力計算による設計法の妥当性を検証するために、実大試験体等を用いて振動台実験を実施する。
  2. 実大試験体による振動台実験の実施に際し、主要な構造要素の性能評価実験を実施し、振動台実験結果の分析や応答解析に役立てる。
  3. 設計法部会、構法・歴史部会と連携し、伝統構法の設計に必要な構造要素の復元力特性を評価するために、振動台実験及び静的加力実験など性能評価実験を実施して構造性能を明らかにするとともに設計用データベースを作成する。
  4. 広く一般に構造要素を募集し、全国の大学や試験機関で実験を実施し、伝統構法の構造要素に適した試験方法、データ整理法の普及を行うとともに、データを収集し、設計用データベースとする。
  5. 各層の復元力特性の評価法を検証するため、各種の耐震要素を組み合わせた試験体を用いて性能評価実験を実施して、簡便な耐震要素の加算法、詳細な軸組架構の解析法による方法など実験的に検証を行い、実用的な評価法とする。
  6. 設計法部会で検討された設計法の妥当性を確認するために、実際に建設が見込まれる、かつ異なる平面形式、構造特性を有する実大試験体を対象にE - ディフェンスでの実大振動台を実施する。限界耐力計算による汎用設計法や簡易な設計法の検証を行う。
  7. 伝統構法では、部材と接合部は一体であることと大変形領域の力学特性が重要である。現行の実験方法をベースとして、伝統構法により適した実験法と実験データの整理法を確立する。

2.部会の運営方針

  • 実験検証部会の下に「実大振動実験WG」「構造要素実験WG」「土壁WG」の3つのWG を設ける。
  • 実験検証部会は部会委員で構成し、必要に応じてWG 委員あるいはオブザーバーが参加する。
  • 部会の開催は、2 ヶ月から3 ヶ月に1回とする。
  • WG は適宜開催(実大実験などの日程や進行に合わせて臨機応変に対応する)する。
  • 重要な検討課題に対する基本方針は、部会で検討し検討委員会に諮り審議する。

3. 基本方針

実験検証部会では、設計法部会、構法・歴史部会、材料部会と連携を図りながら、必要な実験を実施するとともに、実験法が普及することを目的に、各地の試験場で実験を実施し、実験法の習得に協力する。実験検証部会での基本方針を以下に示す。

3. 1 実大震動実験 WG

設計法部会と連携しながら、主に下記の項目について実大実験を実施する。

2010 年度

設計法の方針の検証実験
設計法を確立するための考え方や安全の確保などを検討するために、①石場建ての動摩擦係数の影響、②上部構造のCb 換算耐力の影響、③上部構造物の構造バランスの影響、④建物のクライテリアの検討を主な目的として、4棟の試験体で実験を行う。

2011 年度

設計法の検証実験
設計法で用いる復元力特性の構築法や構造特性(偏心率や接合部の仕様など)と耐震性能との関係を実大振動実験によって明らかにし、①構造要素の加算則の検証、②水平構面や偏心率の評価法の検証、③接合部の評価法の検証、④建物のクライテリアの検証を、主な検証項目として設計法の妥当性を検証する。

2012 年度

設計法の検証実験
汎用性の高い田の字型平面住宅や町家型住宅を想定した試験体を対象に、①限界耐力計算による汎用設計法の検証、②簡易な設計法の検証を主な目的として実大振動台実験を行う。

3. 2 構造要素実験 WG

構造要素実験では、実大振動実験試験体の構造要素を対象に復元力特性や動摩擦係数を計測する。各部会と連携して、汎用性のある構造要素を抽出し、静的水平加力実験から復元力特性を明らかにする。また、伝統構法の復元力特性を適切に検出できる実験法を提案・確立する。


試験体No,1の構想

2010年度

実大振動実験試験体の構造要素実験
実大振動実験用の基本的な構造要素の土壁、軸組、荒壁パネルを対象として、静的水平繰り返し加力実験を行い静的な力学特性を検出する。実大振動実験用の礎石と柱脚の仕様を決定するために、礎石の仕上げ(礎石と柱の間にシートなどを挿入して、動摩擦係数を制御することも含んで)と柱脚と動摩擦係数を検出するための振動台加振実験を行う。

伝統的構造の実験法の提案と検証
伝統的な構造では、構面と接合部は一体的に評価する必要があり、その力学的な特性を検出する実験法を提案し、実験結果を検討し実験法を確立する。

2011 年度

実大振動実験試験体の構造要素実験
実大振動実験用の構造要素の土壁、軸組、荒壁パネルを対象として、復元力特性性の加算則、小壁などへ展開して、静的水平繰り返し加力実験を行い静的な力学特性を検出する。

地域性を反映した構造要素実験
設計法、材料、構法・歴史の各部会と連携して、地域の特徴を反映した構造要素を抽出し、静的水平繰り返し加力実験を行い静的な力学特性を検出する。

伝統的構造の実験法の普及
各地域の試験場に各種の構造要素の実験を依頼し、伝統的構造の実験法で実験を行うことによって実験法の普及も図る。

2012 年度

地域性を反映した構造要素実験
2011 年度の継続で、設計法、材料、構法・歴史の各部会と連携して、地域の特徴を反映した構造要素を抽出し、静的水平繰り返し加力実験を行い静的な力学特性を検出する。

伝統的構造の実験法の普及
2011 年度から継続して、各地域での試験場で実験を行い実験法の普及を拡大させる。

3. 3 土壁WG

2010年度

市販されている土壁土の材料特性の把握
市販されている土壁土を抽出して、土の粒度分布や材料強度などの材料特性を明らかにする。

小舞仕様と付着強度の関係
小舞の仕様(小舞材種、小舞間隔など)と付着強度の関係を要素試験片(300mm 角程度)で検出する。土壁土と小舞との付着強度の実験法は、規定のものがないので実験法の開発もあわせて行う。

壁土品質の簡易試験法の提案
現場において、土壁土の品質を容易に評価できる簡易試験法を開発する。熟練の職人が壁を塗る直前の土壁土のフロー値は、およそ130mm で安定していることを利用した品質評価実験を提案・確立する。

2011年度

各地域の土壁土の材料特性の把握各
地域で使用されている土壁土を抽出して、土の粒度分布や材料強度などの材料特性を明らかにする。

小舞仕様と付着強度の関係
小舞の仕様(小舞材種、小舞間隔など)と付着強度の関係を構面要素試験で検証する。

土壁土品質の簡易試験法の検討
提案する簡易品質評価実験を各地域の職人の協力を得てモニターし、試験法の実用性や簡便性について検討する。

2012年度

各地域の土壁土の材料特性の把握
2011 年の継続で、各地域で使用されている土壁土を抽出して、材料特性を検出する。

土壁土品質の簡易試験法の確立
2011 年の検討を踏まえて、提案する簡易品質評価実験を確立する。

3. 4 データベース WG(全ての部会と連携して)
  1. 設計法部会、構法・歴史部会、実験検証部会と連携して、設計に必要な構造要素の復元力特性などの性能評価実験によってデータベースを作成する。なお、構造要素の耐力評価については、一般的な安全側評価と、柱脚の滑りなどの検討用の評価も行う。
  2. 設計に必要な各部位や材料などの重量を調べ、データベースを作成する。
  3. 設計に適用するために必要なデータ項目を整理する。また、データベースに格納するための方法を確立するとともに、データの公開について検討する。
  4. 各実験や計測で得られたデータを収集・整理して、データベースを構築するとともに、一般ユーザーをモニターとして、データベースの使用法の検討を行う。
  5. データベースを運用して、広く一般からもデータを収集するとともに、データベースを公開し、実施設計での運用を開始する。

2010年度

  • 既存のデータベースのシステムと構築されたデータベースの確認と検討を行う。( 木造住宅耐力要素データベース:http://wdb.howtec.or.jp/:( 財) 日本住宅・木材技術センター)
  • 伝統的構法の設計用のデータとして、適切なデータの格納法について検討する。
  • データベースのシステムについて、検討する。
  • データベースの公開・運用について検討する。
  • データベースへの採用するデータの基準を設定する。
  • 各部会から提供されるデータを検討し妥当性を確認した後に、データベースに格納する。
  • データベースを公開する。

2011年度

  • 前年度から継続して、各部会から提供されるデータを検討し妥当性を確認した後に、データベースに格納・公開する。
  • データベースシステムが、利用者にとって利便性があるかモニタリングを行うとともに利便性・有用性などについて検討し、データベースシステムを改良する。

2012年度

  • 前年度から継続して、各部会から提供されるデータを検討し妥当性を確認した後に、データベースに格納・公開する。