材料部会
部会詳細

材料部会の方針

1. 材料部会の検討項目

  1. 木材の乾燥法による材料特性や接合性能への影響 を検討する。また、新築建物を対象に建築過程で木材の含水率や乾燥収縮などを計測し、伝統構法に適正な含水率を明らかにする。
  2. 節や割れなど木材の欠点を評価するとともに軸組の構造性能や接合性能への影響を検討する。
  3. 伝統構法に適した建築材の要求性能を明らかにし
  4. 古材及び丸太材の材料特性を評価するとともに設計用データベースを作成する。
  5. 既存の伝統構法を対象に木材の腐朽・蟻害の実態調査を実施して木材の耐久性について検討し、耐 久性能評価法を確立する。

2. 材料部会の運営方針と研究計画

本部会に与えられた上記検討課題の1. 〜3. を検討するために、「材料品質・接合WG」を設置する。また、上記検討課題4.、5. を検討するために「耐久性WG」並びに「古材WG」を設けて問題解決を図る。

2. 1 材料品質・接合 WG
1)天然乾燥の種類と方法

H21年度に実施した天然乾燥方法の種類とその定義付けに関するアンケートの結果を整理して、干割れの発生しにくい天然乾燥法を選択し、その方法を技術的、客観的に定義し、伝統構法にふさわしい乾燥法としての位置づけを明確にする。

2)水中貯木乾燥のメカニズム

実務者が干割れの発生が少ないと考えている水中貯木乾燥(図1)を採り上げ、その干割れの発生状況を確認するとともに、水中に浸漬した製材の組織や抽出成分に変化があるのか無いのか、木材組織学的、木材化学的なアプローチを試み、天然乾燥方法の一例としてその技術的根拠を確立した上で、定義付けを行う。


図1 水中貯木乾燥
3)干割れの発生と強度

生材をそのままほぞ、貫孔加工を行うもの、天然乾燥を行って含水率を約30%程度に落としてから同様の加工を行うもの、人工乾燥を行ってから同様の加工を行うもの3グループに分けて試験体を準備し、部材の強度、ならびに、接合部の強度に及ぼす干割れの影響について検討を加える。部材の強度性能は曲げ強度(図2)、剪断強度(図3)について評価する。接合部については柱- 土台込み栓長ほぞ接合部の引き抜き耐力(図4)を評価する。


(左より)図2:曲げ強度試験、図3:剪断強度試験、図4:引き抜き耐力試験
4)軸組架構における材料の欠点等の影響

差し鴨居を有する構面、並びに通し柱を含む連層壁の水平抵抗に及ぼす欠点の影響をみるために、目視等級区分に従って欠点を有する部材を含んだ試験体を用いて実験を行い、許容される欠点の程度を評価し、現行JAS の目視等級区分方法の妥当性を検証する。

以上に引き続き、H23年度以降は、

  • 干割れの発生と接合強度の関係(継ぎ手、仕口の種類を変えて)
  • 貫構造における背割りの影響
  • 長ほぞ込み栓接合部に対する背割りの影響
  • 広葉樹製材の強度評価等

を検討する予定である。

2. 2 耐久性 WG

全期間を通じて以下の項目を検討する。


図5 耐久性WG の検討課題
1)社寺建築や民家の構造および劣化調査
  • 既往の調査結果の分析による、伝統構法の劣化の特徴を明らかにする。
  • 新規に伝統木造の劣化調査を行い、伝統構法の劣化の特徴を明らかにする。
  • 社寺建築、町屋や農家などの構造ごとに、また地方の特徴(気候や伝統など)を加味して、腐朽や虫害の調査を行い、伝統構法にみられる劣化の特徴、劣化発生メカニズムを明らかにする。
2)劣化と木部強度との関係の検討
  • 劣化材の強度について、既往の研究成果の分析および新規に実験を行い、劣化度と強度との関係を明らかにする。
  • 劣化診断に用いられる器具や装置による強度評価と実際の強度値、さらに劣化度との関連を明らかにする。
  • 強制劣化材、擬似劣化材を調整し、劣化の集類、材内分布、程度と部分的強度および全体強度との関係を明らかにする。また一般的に用いられる現場用強度測定機器や開発中の機器の評価値と劣化度や強度との関係を明らかにする。その際、劣化度に関する概念を整備し、後段の維持管理手法の検討の際に役立てる。
3)今後建築される伝統木造の生物劣化対策の基本方針の検討
  • 今後建築される伝統木造の構造・材料・工法の標準的な形を想定し、特に床下、外壁や屋根などの構造体に付与すべき劣化対策について、その基本方針を検討する。基本構造や各種仕様ごとに、耐久性付与や劣化対策の観点から検討する。
4)伝統構法建物の維持管理手法の検討
  • 今後建築される伝統木造の点検診断方法の整備
  • 今後建築される伝統木造の補修方法の整備
  • 劣化リスクのレベル制御の概念に基づき、今後の維持管理の技術、体制

について検討する。

2. 3 古材 WG
  1. 寺院建築等の伝統的木造建築物の部材を対象に、解体前の状態で応力波伝播速度を現場測定し(材料密度を測定することなく)シミュレーション法によりヤング率を推定し、データの蓄積を図る。
  2. これまで蓄積した測定データと合わせて古材・丸太材の材料特性を整理する。なお、測定対象物件は、解体改修を計画している古寺院(築後経過年数100 〜 200)で主に長野県に立地しているが、他に中国・北海道地方も計画に含める。
  3. 伝統的木造建築物に使われている部材は豪壮長大であるが、形状が丸型断面・不定形で切欠きや欠損等の欠点を含んでいる場合が一般的である。このような材の曲げ剛性を評価する方法を導くために、切欠きを含む梁のモデル試験体を作製し、応力波伝播特性の詳細な測定と、曲げ荷重負荷による剛性の逐次測定を行い、切欠きを含む梁材の曲げ剛性を評価する方法を導出・確立する。

図6応力波伝播速度の測定例

以上に引き続き、H23 年度以降は、

  • 測定対象物件を探索しデータの拡充を図る。これと並行して古材(平成22 年度対象物件の解体木材)の実大曲げ試験を行い、強度性能を把握するとともに、応力波を利用した不定形材の曲げ剛性評価法を導く。
  • 実大曲げ試験に供した材料より小試験体を作製し、JIS 準拠の強度試験(せん断、衝撃曲げを計画)による性能評価を新材との比較において行なう。

を検討する予定である。