2008年06月03日

【Mail News vol.004 環境省が進める空調設定温度28度神話??】】

ク-ルビズに、環境家計簿。環境省が進める身近で出来る温暖化対策の
一例です。ク-ルビズなどは、導入から3年経ち、世間での定着も評判も、
そしてCO2削減効果も数字で現れるようになってきました。
このク-ルビズ、もともとは、エアコンの温度設定を28度にしてCO2削減をしようと
いう目的から、導入されました。

今年、4年目を迎えるこの制度ですが、今一度原点に立ち返って、この目的について
考えてみたいと思います。

『家の造りようは夏を旨とすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑き頃わろき住居は堪へ難き事なり。』とは、兼好法師の有名な言葉です。高温多湿の日本での家づくりを表現し、今でも多く引用されています。
今では、技術と意識の変化により夏も冬も意識した家づくりが、進められています。

暖房は、地域にもよりますが、外気温より20度前後も上げる必要があります。一方、猛暑の昼間34度だとしても、28度にするには、6度下げればよいだけなのです。
暖房と比べて冷房の方が、扱う温度差は小さいものの、その難しさは、
みなさんのこれまでの経験からも、想像していただけるでしょう。

私たちが、暑い・寒い・涼しい・温かいと感じるのは、私たちを取り巻く環境との
相対によって決まります。これには、4つの要素があります。
一つ目は、対流。風が吹けば涼しく感じます。二つ目は、蒸発。液体が気化するときに

熱を奪う現象です。私たちが夏に汗をかくのも、体から熱を奪うためです。
三つ目は、伝導。同じ温度でも、熱伝導率の高い金属にふれるのと、木片に触れるのとでは、感じ方が違います。そして、四つ目は、放射です。全てのものは熱を帯び、そこから放射熱という熱を出しています。真夏のアスファルトは、50度にもなり、そこに立つだけで、放射を受け暑く感じます。
これらを見ても分かるように、私たちがコントロ-ルすべきは、空気ではなくこの4つの要素であることが分かります。

日本の家屋は、茅葺や土壁によって断熱性能が高められていました。また長く出た庇は、直射日光をさえぎり、土間を涼しく保つことができていたのです、そして田の字型の居住空間は風を通しやすく、非常に利にかなった作り方をしていたのです。
現在の日本の住宅の多くには、庇がありません。これらの住宅には直射日光はもちろんですが、温められた窓からの再放射、そしてベランダからの放射(照りかえし)があり、加えて構造の変化によって細かくなった間取りでは、風を取り入れることも出来ません。

このように、どんどん熱を取り入れる構造をしているのに、『エアコンの設定温度は、28度で』というのは、非常に難しい話なのです。
夏を涼しく、そして冬を暖かく過ごすのに、まるでエアコン1つでコントロ-ルできるかのよう、環境省は言っていますが、実際には建築側との協働において初めて
得られるものです。

先進国と呼ばれる国々で、空気によってコントロ-ルをしているのは、アメリカと日本くらいです。欧州では、放射熱のコントロ-ルが、大原則です。

洞爺湖サミットを控えた今年、CO2削減について話している会場が、エアコンで空調コントロ-ルをしているとなれば、日本は世界の笑いものです。

今、都心では小中学校へのエアコン導入が急速に進められています。エアコン導入をすると、子供たちは休み時間に外へ出なくなり、また長期的には汗をかきにくいつまり体温調整をしにくい体になることが報告されています。

この問題は、環境省だけのことではありません。国交省、それからエアコンによる健康への影響を考えるために厚生省・文科省が横に連携をして取り組むべき問題なのです。

※今回の話題については、近山スク-ル東京で、武蔵工業大学の宿谷先生に
よる分かりやすい講座がありました。講座の内容は、下記URLからご覧ください。
http://tokyo.school.chikayama.com/news/news015/home_jp.html