12/4、E-ディフェンスで行われた「伝統木造住宅A棟」の公開実験終了後、
午後2時から、実験担当者による、
結果の概要を伝える記者発表がありました。
引き続く質疑応答の中で、大事なやり取りがいくつか見られました。
居合わせた方々は少ない、と思いますので、
今後の展望につながると判断した、次の2項目の概要を、
お伝えしましょう。
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■柱脚の扱いについて
○質問:
今後3年の間につくる、とされている設計法の中で、
柱脚の扱いはどうなるか?
今回の実験のような、「横方向の移動を拘束」する、
あるいは、現行の仕様規定にある「固定」が条件になると、
伝統構法では一般的だった「直置き」が出来なくなってしまう、
という縛りをかけることにはならないか?
○実験実施委員会主査の回答
いずれは、「直置きが可能な設計法」が生まれる時代が来る、
と認識している。
けれども現況は、柱脚の動きを予測し制御しうる段階にはない。
まずは、柱脚の動きを拘束することを前提にした設計法をつくりたい。
別のプロジェクトで、柱脚の条件に関する解明も考えられているので、
可能なら、柱脚の動きを許容する設計法にも取り組んではみたい。
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●設計法の枠組みについて
○質問:
現代構法の枠組みの中に、伝統構法を位置づけるのでなく、
伝統構法独自の設計体系を期待したいが?
○木造住宅振興室長の回答:
伝統構法を正面から取り上げて、
科学的に解明する時代にようやくなった、と受け止めている。
まずは、
これからは、「伝統構法の枠の中に現代構法が入ってくる」、と考えたい。
次に、
伝統構法は「地域分散型」として捉えたい。
共通項は、国のレベルで明らかにして、
地域に関わるところは、国で支援して明らかに出来る、ようにしていきたい。
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実際のやり取りは、もっと入り組んでいましたが、
要点のみを抜き出せば、上記のようになる、と思います。
上記の2項目のやり取りについて、
皆さまは、どのように受け止められるでしょうか?
ところで、現室長がいつまで現職に留まるか、
また、この基本方針が、人が変わっても受け継がれるのかは、
大いに気になるところです。
支えになるのは、直接働きかける世論の力でしょう。
現場の皆さまの踏ん張りが、死命を制します。
A棟 実験調査
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ともあれ、国の法規定を変えようとする、ビッグプロジェクトの実験に、
職人や技術者などの実務者が、研究者とともに、
企画の段階から参画して、実験そのものの実施にまで、
多数が関わるのは、史上初めてで、画期的な取り組みです。
日本の建築構造に関わる歴史で、画期の1頁になるに違いない、
と確信します。
参画された方々、協力された方々に、改めて敬意を表します。
そして、目を凝らして見学された方々も含めて、
ほんとうにお疲れさまでした。
いよいよこれからが、本番です。
(レポート 緑の列島ネットワーク 相談役 鈴木有)
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B棟の実験を終えて
調査 B棟
『伝統木造構法の建物は、
(1)あたかも生き物であるかの如く振る舞う、
(2)地震の破壊力に対して、耐えるのではなく、
もっぱらやり過ごそうとして、揺れかつ動く』
以下に、その基になる理解を記します。
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●やり過ごすのに、三通りの有効な仕組みがある
・剛い土壁を、大揺れに追随しうるように壊す。
・構面毎に、階毎に、異なる揺れ方をして、揺れの成長を抑える。
・大揺れの前に、地盤とは縁切りしようと振る舞う。
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●剛い土壁を、大揺れに追随しうるように壊す
開口部を含む土壁架構の静加力実験や振動実験を、
自ら行った経験から、
伝統的架構では、まずは大きな土壁が壊れ、次いで中規模が、
最後に小さなものが壊れる、と予測していました。
今回は、前日の大地震相当の加振で、1間幅が壊れており、
第1回目の神戸波加振で、半間幅が壊れ、
さらに、2階の幅広腰壁が壊れており、
原則、予想通りだったように見えました。
土壁の壊れ方は、塗り厚の薄いところで亀裂を生じ、
元の大きな塗り土パネルを小分割して、
これらを囲む木造軸組のせん断変形に追随する。
これも、これまでの実験通りでした。
今回は、縦貫と横貫の所で、大きな亀裂が入り、
縦横ともに複数の小パネルに分かれて、
外側から見る限り、何と!、大きな崩落をせずに、終わりました。
(裏側がどうなったかで、判断は多少変わりますが・・・)
耐力実験の経験からすると、こうした破損後の土壁でも、
半分程度の支持力を残しています。
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●構面毎に、階毎に、異なる揺れ方をして、揺れの成長を抑える
平面で言えば、複数の構面(主要な柱通り)で、
揺れの向きが異なるように見えました。
一般に言う「ねじれ」とは、全体が同じ方向に回転する挙動を指しますが、
この建物の揺れ方は、例えるなら、「旗がゆらめく」ように揺れています。
前日の一方向加振でも、揺らせている直角の方向に、建物が揺れ、
同じような挙動が見られた、と聞いています。
上下方向の揺れを見ても、1,2階が異なる向きに動くさまが、
しばしば見て取れたように思います。
これらの性状は、専門用語で言う、高次の振動モード(しかも立体的な)
になっていることを意味します。
1次モードが卓越すると、建物は全体が一方向に大揺れすることになって、
自重を支え切れなくなる倒壊を引き起こす危険が増しますが、
高次モードを誘発することによって、その危険を抑制しているのでは、
と推察しました。
振動モードの誘発は、
作用する地震動の周期特性と建物の周期特性の相互関係で変わります。
仮に、この地震動で高次モードが誘発されていたとしても、
他の激震でもそうであるか、の保証はありません。
(最後の項目も参照して下さい。)
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●大揺れの前に、地盤とは縁切りしようと振る舞う
今回は、水平の滑りを抑えるように、足元の工法が取られていますので、
上部架構はもっぱら、浮き上がることで、地面と縁を切り、
過大な地震力の直接作用を防ごう、と努めているように見えました。
あれだけの規模と重さを持つ建物ですから、
揺れの性状としては、「ロッキング」(片方が交互に浮き上がる)が生じ、
長手方向の端部近傍で、アンカーで繋ぎ止められた限度一杯まで、
柱脚の浮き上がりが生じておりました。
仮に、横方向の滑りも許したら、
土壁や軸組の損傷は、遙かに抑えられたであろう。
これまでの振動実験を観てきた、私の予測です。
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●揺れが終わると、建物は正立していた
二度の加振後ともに、建物はほぼ正立していました。
部材や壁に、あれだけの損壊が生じたのに、
残留変形は微少だった由です。
震害調査の経験でも、実大実験の結果でも、
伝統木造架構は、接合部の仕口・継手の機能が保持されておれば、
架構は元の状態にほぼ戻っておりました。
接合部の粘りある(靱性的な)復元力が、
架構を元に戻す原動力になっている、と読み解いています。
今回も、仕口付近での柱の折損が伝えられましたが、
仕口としての復元力機能は、なお保持されていたのではないでしょうか。
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●「建物はどのように振る舞えば凌げるか」を、構造体が記憶する
非公開だった二度目の神戸波加振では、
損傷の進行は少なかったように見えました。
少なくとも土壁については、
大量崩落など、さらに大きな損壊があったとは思えませんでした。
しかも揺れ方は、第1回目の特に後半の揺れ方に酷似している、
ように見えました。
私の理解は、一度目の大加振で、前述したような損壊を生じて、
揺れを凌ぎやすい構造体に変わった。
ましてや、前回と同じ揺れなら、同じように凌げばよいから、
さらなる損壊の進行が抑えられた、と解釈しています。
それならば、
『最初から凌げるような構造体を造れないか?』、
については、追って見解を記したい、と考えています。
ちなみに、E-ディフェンス最初の木造公開実験になった、
現代軸組構法住宅では、神戸波の破壊力を超える最強の地震、
JR鷹取波(震度7相当)が三度加えられましたが、
大事な1階の構造要素、面壁と筋かい入り軸組が次々に破壊され、
1階が倒壊して圧壊するに至っています。
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●実大振動実験は学びの宝庫である
従前、職人や技術者は地震被害を目にすることは稀でした。
たまさか観られても、それは損壊を受けた結果だけです。
因果関係の理解は、ほんとうに難しい課題だった、と思います。
けれどもわれわれは、実大の振動実験という手段を手にしました。
今回は特に、間近に観て、
損傷状況まで実地に観察しうる機会までができました。
得難い機会を活かして、施工や設計のプロたちが、
しっかり学んでいただきたい、と期待しています。
細部の観察と洞察にこだわり、
「どこがどう壊れたのか、それは何故か、
その損壊は受け入れるべきか、
あるいは、避けるようにするべきか、
避けるにはどうすれば良いか」等々を、学び取り、
普遍化してほしい、と希望します。
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●神戸波は直下型地震による一観測点の記録に過ぎない
加振に使われた神戸波は、直下型地震の一つで、
最激震地からは少し離れた、山の手の地点での観測記録、
「震度6強」相当です。
強烈な揺れの時間は、僅かに十数秒、
そこを凌げば、後の揺れは普通の地震並みです。
地震には様々な顔があり、土地による揺れ方もさまざまです。
今回の結果は、学びは実に多いのですが、一つの検証に過ぎません。
伝統構法による木造建物で言えば、
長周期の揺れの成分を多く含み、継続時間が長い海洋型の巨大地震で、
強い揺れに襲われたとき、が心配です。
自然の営みは、奥が深い。
自然の猛威には、謙虚に向き合い、
家づくりには、多重なる備えをするべきでしょう。
(レポート 緑の列島ネットワーク 相談役 鈴木有)
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