進捗状況

2012年9月18日

実大震動台実験 9/17レポート


振動台に置かれた2つの試験体。手前がNO.5で、奥がNO.6。


今回の2つの試験体NO.5とNO.6。NO.6の足元が「地長押」で固定されていることの他は、2つは全く同じ構造です。では、実験見学では地長押の効果だけを見ればよいかというと、そうではありません。


2010年に行った実験で使った試験体は、総二階のシンプルな建物でした。上の写真は2010年の時のものです。しかし今回は下屋がある「部分二階」で、玄関まわりや階段室の吹き抜けなど、より現実の建物に近い構造となっています。そういった複雑な構造を持った建物が、どのような挙動をするのかが、大きな見どころなのです。


試験体NO.5(左)とNO.6(右)。NO.6に地長押しがまわっているのがわかります。19日の公開実験では、1回目の加振では地長押しを金具で振動台に固定し、2回めの加振で、金物を外してフリーの状態にします。


地長押のアップ。


玄関まわり。出入口部分がどのように振る舞うでしょうか。


階段室は大きな吹き抜けになってます。2階には板壁も見えます。


実験検証部会の後藤正美主査。


試験体を見上げる、設計法部会の斎藤幸雄 主査。


検討委員会の鈴木祥之委員長。いよいよこの3年かけた事業のクライマックスです。

併せてお読みください
[ 18日のレポート ]
[ 19日のレポート ]

2012年9月15日

試験体No.5 を震動台上に設置

週明けからいよいよ振動台実験が始まります。9/19(水)の公開実験に参加してくださる皆様のおいでをお待ちしています。

2012年9月14日、震動台上に、試験体NO.5を設置しました。


震動台と同じ実験棟内に建てられている試験体を、このような太いワイヤーで吊って、移動させます。

2012年9月3日

8/29 実大震動台実験 試験体5、6の施工状況

9/19に実大震動台実験を行う試験体5、6は、5月半ばにEディフェンスの一角に材料を運び込み、上棟、引き続き3ヶ月間にわたって、土壁塗り、瓦葺き等の工事を行いました。今では、計測機器も取り付けられ、後は震動台に載る日を待つのみです。

試験体が載る鉄骨架台と施工用の足場を北面から見る。試験体5と試験体6が南北に並んで立つ。白く四角く見えるのは、石場建ての柱が立つ礎石。実験に際しては、この鉄骨架台ごと、震動台の上に載せる。

 

試験体6。2階まで突き抜ける通し柱。大黒柱の足元まわりに、地長押をまわすための切り欠きが見えている。

 

試験体6の東から見る。梁、差鴨居、足固めと横架材がまわる。画面手前を横切るのが10番通りの右に見えるのが大黒柱。

 

地長押が交差する試験体6の北東隅。

 

試験体6の北面から見る地長押。雇いほぞ込み栓打。

 

試験体5の東面妻側。2階部分に垂木を架けている。

 

左手前が石場建てに地長押のまわる試験体6、右奥が石場建てのみの試験体5、瓦を葺く野地板を張り終えたところ。

 

割竹同士、割竹と貫を、藁縄で、縫うようにして結い付ける「えつり」の作業。

 

小舞竹の空隙は35~40ミリ程度。

 
荒壁の裏返し塗り。竹小舞の逆側からつけた荒壁の突起同士をつぶさないように塗込み、表裏一体となるようにする。

 
防水シートの上にいぶし瓦を桟葺きにする。ガイドライン工法に従い、すべての瓦を桟に釘打止め。

 

荒壁の乾きを待って、中塗りをする。この上に漆喰を塗って仕上げる。

 

随所に取り付けられた計測機器。ワイヤーは倒壊防止ワイヤー

 

加振時にどれくらい変形したかを計測する変位計。

完成。左手前が石場建てに地長押のまわる試験体6、右奥が石場建てのみの試験体5。

2012年7月27日

7/6(金) 古建築のほぞ接合部のモーメント抵抗性能試験の速報

速報=佐々木康寿(材料部会 古材WG)

1.実験の目的

材料部会古材WGでは,古建築の接合性能を検証するために,建物の解体時に仕口接合部をそのままの状態で採取し,接合部のモーメント抵抗性能に関する公開実験を名古屋大学で行いました.開催日時は2012年7月6日(金)14時〜15時,会場は名古屋大学大学院生命農学研究科・A館-145号室(木質構造実験室)です.当日は雨天でありましたが6名の一般参加者がありました.

2.試験体

今回の接合部試験体は,長野県の古寺院客殿(写真1,明治27年9月2日完成)から解体時に採取したもので,柱と梁の接合部(ほぞ差し)を含むT字型(約1.5m×2.0m)のもの4体です(写真2,3).試験体の採取に当たっては,接合部に負荷を与えないよう予め方杖用の板材を釘打ちし,解体,搬出しました(写真3).樹種はスギ材(柱)とアカマツ材(梁)で,柱材は断面寸法が112×112 mmでした.建物の状態は比較的良好で,腐朽などの目立った損傷は見受けられませんでした(写真4).

写真1 解体物件

写真2 試験体採取部の一例

写真3 最終試験体の搬入

写真4 建物の基礎部分

図1〜4に接合部試験体の形状・寸法を示します.試験体の状態として,No.1ではほぞが梁材を貫通し,ほぞの先端が梁材を突きぬけていました.試験体No.2では梁の柱付近に穴(目的不明)が開いていました.試験体No.3の梁材には仕口付近(約20 cm)に継手(腰掛け鎌継ぎ)がありました.試験体No.4は写真に示すように,梁材の一部に虫害の形跡が見られました.試験体No.1とNo.3は接合部でのあそびが大きく,柱材に軽く力を加えるだけで大きく傾いてしまうような状態でした.このようなことから,試験体No.1とNo.3では特に負荷初期でのモーメント抵抗性能は小さいことが予想されました.また,試験体No.3を除くと,ほぞ長さが今日のプレカット材に比べて長いように思われました.

図1 試験体No. 1

図2 試験体No. 2

図3 試験体No. 3

図4 試験体No. 4

3.試験方法

写真5は加力試験の様子を,写真6には公開実験時の参加者見学の様子を示しました.柱材上部はアクチュエータとピン結合し,梁材を試験機フレームにアンカーボルトで固定しました.加力は定速変位制御(200mm/min)による正負繰り返し交番載荷で行いました.変位の折り返し点は,柱-梁のせん断変形角が1/450, 1/300, 1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/10 rad.となる9ステップに加えて,最大ストロークである200 mm(約1/5 rad.に相当)としました.各ステップでの繰返し回数は3回で,計30サイクル繰返し加力しました.変位計を図1に示すように6箇所に設置し,柱-梁のせん断変形角,柱の浮き上がり量などを算定しました.

写真5 加力試験の様子

写真6 公開実験の様子

4.試験結果

 復元力特性として,図5に「荷重とせん断変形角の関係」を示しました.これより,試験体No.1とNo.3については,当初より予想された通り,復元力特性が劣っていることがわかります.例えば,試験体No.1については図1に示すように,ほぞ先端が梁材を貫通していることに加え,篏合度が甘い(あそびが大きい)ことが低性能であった原因と考えられます.図6に各試験体のほぞ・ほぞ穴の形状寸法を載せました.これより試験体No.1の篏合度の甘さがあらためて理解できます.試験体No.3もNo.1と同様に篏合度が甘く,さらに,ほぞ長さが短い(45mm)ことで低性能であったと考えられます.これらのように篏合度が甘くなった理由としては,①加工当初より勘合度が緩かった,②経年による寸法変化(乾燥による収縮),③災害時(例えば1960年代の松代群発地震)の負荷履歴の影響などが可能性として考えられるでしょう.これに対して試験体No.2とNo.4は若干のあそびはあるものの,その影響は少ないようでした.これらの試験体(No.2とNo.4)は,いずれもほぞの元(付け根)の部分で折損を生じた際に最大荷重を示し,以後,耐力を失いました.写真7にほぞの折損の様子を示します.なお,試験体No.2の最大モーメントは2.18 kNmを示していますが,ほぼ同じ仕口寸法のスギ材を使った試験体で力学試験を行った既法の結果と同程度の性能を示しているようです.
 以上のように,解体前の目視観察では材料が良好な状態であっても,仕口接合部のモーメント抵抗性能が期待できない場合のあることがわかりました.

図5 荷重とせん断変形角の関係 (a) 試験体 No.1

図5 荷重とせん断変形角の関係 (b) 試験体 No.2

図5 荷重とせん断変形角の関係 (c) 試験体 No.3

図5 荷重とせん断変形角の関係 (d) 試験体 No.4

図6 仕口接合部の形状・寸法 (a) 試験体 No.1

図6 仕口接合部の形状・寸法 (b) 試験体 No.2

図6 仕口接合部の形状・寸法 (c) 試験体 No.3

図6 仕口接合部の形状・寸法 (d) 試験体 No.4

写真7 ほぞの折損(試験体No.4)

謝辞:試験体の提供,解体・採取・搬出など,この実験に協力された皆様に感謝いたします.また,公開実験では雨天の中を参加された皆様にお礼を申し上げます.

2012年7月26日

7/6(金) 古建築の仕口接合部のモーメント抵抗試験@名古屋大学

2012年7月6日(金)古建築における接合性能を検証するために、古建築の解体時に採取した仕口接合部による接合部のモーメント抵抗試験を行いました。

築100年の古寺院解体時に採取した約1.5m×1.5mの試験体

今回、実験に使用したのは、築後約100年を経過した長野県の古寺院客殿の木材です。解体の段階でホゾの部分が傷むことのないよう丁寧に補強され、輸送時にも、長野から名古屋大学まで、注意深く運ばれてきました。電動工具の無い時代に、ホゾ穴を梁に貫通させるほど長くするのは、大変な手間であったと想像されます。柱が抜けにくくするためだけでなく、ねじれやすい松の梁ということでねじれを抑制し、変形を防御するために抜いたのではないかと思われます。

100年以上たっても、1/15以上の変形にも破損することなくめりこみなどの変形により、十分な強度を保つことがわかりました。以下、写真で当日の様子をご覧ください。

佐々木先生(中央)、右となりに棚橋先生。この日までに行った、3体の試験体の前で結果の説明

実験を終えた試験体の様子です。一番右は短ほぞで、ほとんど強度はありませんでした。

一番状態の良かった、黒光りした杉の試験体です。梁は、地松。試験機の都合で、上下が逆になってます。

佐々木先生から、見学者に本日の実験の概要説明がされました。

実験中、この状態で、大きな音を立てて、ホゾが折れました。ホゾは、梁の上まで、抜いてあり、長いほぞでした。

柱のホゾが折れた断面です。100年経っていても、きれいな状態です。梁の中に、ホゾが残っております。

実験後、見学者と本日の結果についての考察と、古材に対する意見交換がされました

詳細については、佐々木先生の実験速報をお読みください。

2012年7月17日

6/30(土) 今年度の全体会議が行われました。

全体会議の冒頭で挨拶をする鈴木祥之委員長

2012年6月30日、立命館大学 びわこ・くさつキャンパス コアステーションにて、「伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会」の全体会議を行いました。会議は、まず「平成 24 年度検討委員会の目的と事業概要」から始まり、今年度の各部会の事業計画を発表した後、部会ごとに別れて部会会議を実施しました。本記事では全体会議の概略をお伝えします。

会場となった立命館大学 びわこ・くさつキャンパス コアステーション

設計法部会には、設計法作成WGと課題検討WGを設置

昨年度までは、標準設計法、詳細設計法、汎用設計法の各設計法ごとにWorking Group(以下WG)を設置し検討を行なってきました。今年度はこれまでの成果を共有するため、設計法部会の組織を改変し、設計法作成WGと課題検討WGの二つのWGに集約することにしました。

今年度の設計法部会の体制

9月に行われる実大震動台実験までに設計法試案をつくり、実験でそれを検証したいと考えています。最も一般的に使われることになるであろう標準設計法は、柱脚と地盤との結合条件の違いによって、
 標準設計法A:水平方向上下方向とも拘束する
 標準設計法B:水平方向のみ拘束する
 標準設計法C:水平方向も拘束しない
の3種類を作成中です。全体会議では、柱脚の構造や地震の際の挙動に関する検討課題の解説をしました。

柱脚の設計

実験検証部会:実大震動台実験 試験体No.5、No.6

この9月には実大震動台実験を行います。試験体は No.5 と No.6 の2体で、No.5 はいわゆる「石場建て」で、 1 階柱脚を礎石の上に直接設置しています。No.6 は、No.5 の1階柱脚に『地長押』を設置し柱脚間を接合したものです。No.5 と No.6 の違いは地長押の有無のみで、軸組・壁等は同じものです。主要な耐震要素は土壁と柱梁接合部のめり込み抵抗で、筋かいや接合金物は用いていません。

9月に行う実大震動台実験の試験体No.5、No.6

構法歴史部会:今年度は各地で伝統的構法普及活動を行うキャラバンを

構法歴史部会は、今年度も昨年度と同じ体制で、伝統的構法のまとめと広報活動をしていきます。昨年度までの事例調査WGおよび文献調査WGの成果をまとめ、伝統的構法を一般の実務者に広報するための伝統的構法普及活動(構法キャラバン)を、各地の建築士会、伝統構法に関心のある建築関係団体の協力を得ながら、全国6地域以上において実施していく予定です。

活動の成果の一つ:下屋の分類

材料部会:

今年度の材料部会では、天然乾燥された無垢材の適正な評価に資する科学的データを取りまとめること、多くの伝統的木造建築物の劣化調査結果の取りまとめと耐久性調査のマニュアルを完成させること、そして伝統的構法の建物の設計・施工にあたり、実務者が必要に応じて古材を安心して再利用できる道筋を拓くためデータを取りまとめること、等をしていきます。

全体会議の様子

2012年3月31日

3/7(水) 渡り顎仕口の十字型曲げ試験@金沢工業大学

レポート&速報=事務局 河原大

当日の様子

2012年3月7日金沢工業大学にて、「渡り顎仕口の十字型曲げ試験」の公開実験を行いました。当日は天気も良く、4名の方が実験見学に、中には愛媛からいらっしゃった方もおられました。遠方よりわざわざ、ありがとうございました。

まず、実験検証部会後藤主査より、今回の継手・仕口試験の全体像についての話がありました。今回の接合部の試験体は全国各大学で約800体の試験体について実験しており、この結果を全てとりまとめて評価式を作成することで、実務の方々が自由な寸法関係と種類を選んで、接合部を設計できるようにするという内容で、これについては急務として取り組んでいるとのことです。

当日居合わせた金沢や京都の左官さんから土壁の実態を聞く機会がもてたりと、公開実験参加者同士の意見交換もさかんで、意図していた以上の交流を深められたようです。このように伝統構法建築に関わる人同士が、委員会を通して交流関係を築いていくことについて、うれしく感じています。

試験体

今回は仕口・継ぎ手実験のうち、G2「渡りあご」試験体について、仕口接合部の曲げ(回転)モーメントに対する抵抗性能と、限界変形性能を評価することを目的とし、十字曲げ試験を実施しました。
 

渡り腮の形状


 
試験体G2の試験体概要は次のとおりで、いくつかの寸法のパターンについて実施しました。今回、公開実験として行ったのは、表のうち、G2-4試験体です。
 

渡り腮の図面。変数がW1、W2、h、gで示されている(図をクリックすると拡大します)


 

表のように寸法を変化させた試験体を用意。この日は4の試験体を実施


 
 
加力方法
加力方法は、試験体柱頂部で変位制御水平繰り返し加力を行い、ロードセルを用いて頂部水平力を計測しました。なお、繰り返しスケジュールにおける目標変形角は設置した変位計の計測値を用い、1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/20,1/15,1/10,1/7rad の正負交番各1回繰り返しの静的加力を行いました。加力速度は各変形角によって適宜調整しています。
 

実験の経過
1/10rad、1/7rad、解体後の試験体の様子を、写真でご覧ください。
 

面外方向の曲げ(+1/10rad.)


 

上木側面のめり込み(+1/7rad.)


 

解体後


 
 
実験結果
G2-1.1,G2-3.1との比較における、G2-4.1の履歴ループと特性値を示します。
 
復元力特性のグラフ

復元力特性のグラフ


 

完全弾塑性モデルの特性値


 
やや、±時での耐力に偏りが見られることがあるが、おおむね左右対称といえるようです。また、荷重は今回行ったG2-4は、G2-1よりも接触面が大きく、G2-3よりも小さいためそれら中間となりました。しかし、δy、δuはほぼ変わらないことが分かります。

2/26(日)通し柱の欠点が構造性能に及ぼす影響検証実験@つくば建築研究所

レポート=事務局 河原 大

金沢から東京を経て、つくばの建築研究所まで片道5時間の旅です。つくばは晴れていましたが、金沢では雪が降っているとのことでした。

どこの研究機関も同じかもしれませんが、やはり構造実験室は寒く寒く、業務用ヒーターも1台ではほとんど役に立ちません。悴む手を我慢しながら、たまにヒーターに助けてもらいながら、11時から約3時間、実験を見学しました。

実験棟

実験の目的:
接合部付近の節と耐力との関係の検証

今回の実験は、材料部会の材料品質・接合WGの実験として行われました。主な目的は、「通し柱の横架材-柱仕口接合部の付近に、一般に欠点と言われる節があった場合、無い場合と比べてどの程度耐力低下に違いがあるのか」を検証することです。

これまでの結果説明
初めに、材料品質・接合WGの綾部委員にこれまでの試験体を見ながら、実験結果について、解説をいただきました。
 

これまで実施した要素実験の結果を解説する綾部委員


 
一般に欠点とされている「節」は、「目切れ」の状態であり、接合部付近の応力の集中がある箇所に「目切れ」があると、無い場合に比べて比較的早く、目切れ部分から、割れが発生します。割れが発生すると耐力低下を起こします。
 
ですが、綾部委員によると、生き節である目切れ部分で割れを起こした方が繊維が破断した場合より粘り強く変形に耐えられるかもしれないので、今回の実験ではこのような側面からも耐力低下の割合ということに着目する、ということでした。
 
接合部付近、特に横架材の下端のレベルで柱に節を有しているものは、予想の通り目切れに沿って割れていました。
 

節の目切れに沿って割れが見られる


 
ところで、実務では赤丸の部分を少し空かして作るそうです。これは、長年住んだときにこの部分を空かしていないと逆に乾燥収縮によって、梁の下端が持ち上がって意匠的に良くないからだそうです。またこれまでの3体の試験体でもこの部分の摩擦が大きくなり、鼻栓と相まって、横架材が柱を引張り、その結果として柱に損傷を生じさせたのではないか、ということでした。
 

実務上の工夫

今回の試験体と実験方法
さて本題の実験です。通し柱の実験ということで、2階建ての1つの構面を対象に、胴差し部分に曲げ応力が集中することを想定した、2階部分のみ壁ありというものです。
2階梁のレベルで、オイルジャッキにより、正負交番3回繰り返し加力、1/30rad以降は、引ききりという実験です。
 

試験体となる2階建の1構面


 
 
実験の経過
小さな変形角では目立った損傷は生じませんでしたが、1/100rad辺りから壁の部分からキシキシと音が鳴り始めます。1/30radに至ると、接合部付近からパキッパキッという音が聞こえ始めました。次の写真は1/30radです。
 

1/30radで、接合部付近から音


 
いよいよ引ききりの段階となり、1/20radで損傷観察が入ります。ずっと見ていると気付かないものですが、写真をみるとかなり柱が曲がっています。また、この辺りで、予想していた部分である目切れに沿って少しひびが入っているとのことでした。
 

1/20radで損傷観察が入る


 

目切れに沿ってひびが入り始めている


 
さらに加力を続けていくと、1/14radでバキッと先ほどの部分で割れが進行し、写真のように柱の折損という状況になりました。
 

1/14radで柱の折損


 
その後、1/12radで、反対側の柱に、かなりびっくりするほど大きな音とともに内側部分から割れが生じました。これも節の部分からということでしたが、うまく観察できませんでした。初めに割れの入った部分の割れはさらに進行し、不安定構造となっているような状況にありました。
 

1/12radの様子(1)


 

1/12radの様子(2)

2/23(木) 全面土壁土台仕様静的加力試験@鳥取環境大学

速報=実験検証部会・土壁WG委員:中治弘行
 
2/23に、全面土壁土台仕様静的加力試験の公開実験を行った。土壁の復元力特性では、特に最大耐力経験後の耐力低下において、荒壁の表裏が一体となったまま剥がれにくいことが大きく影響しているようである。本実験の目的は、裏返しまでの荒壁乾燥期間が荒壁の一体性を高めるかどうか、ひいては最大耐力経験後の耐力低下の改善に影響を与えるかどうかを確かめようとするものである。
 
 
試験体概要
試験体の概要を図に示す。
 

全面土壁土台仕様の試験体


 
昨年度に実施したMWD-2と同様の軸組、竹小舞配置である。竹小舞の内法間隔は45mm程度とした。この試験体では、荒壁の裏返しを2週間後に行った。
 
 
計測概要と実験方法
青と赤の矢印は変位計測、青の長方形はひずみ計測である。
 

計測器の取り付け位置


 
これまでの実験と同様、桁から総重量19.24kNの鋼製おもりをぶら下げる載荷式で、変形制御の正負繰り返し加力とした。折り返し変形は、見かけの変形角が1/480、1/240、1/120、1/90、…、1/10、1/7radとなるようにした。
 
 
荷重変形関係
おもりによるPΔ効果を除去した荷重変形関係を図に示す。1/7rad変形での耐力は最大耐力から80%近く低下している。
 

荷重変形関係


 
 
最大変形時の損傷状況
 1/7rad変形時の損傷状況を写真に示す。1/10radより大きい変形でも壁土の大きな剥落は見られなかったが、耐力低下は依然として大きい。
 

1/7rad変形時の損傷状況


 
 
まとめ
壁土の損傷による土壁の耐力低下に荒壁の一体性が影響している可能性を考え、裏返し時期を違えた試験体を作製し、実験を行っている。次回は、裏返しを1週間後に行った試験体の実験を3月7日(水)午前10時頃から実施予定。他の試験体の実験結果も比較した上で、裏返し時期が土壁の復元力特性に何らかの影響を与えるのか、検討を進める。

2012年2月22日

2/17(金) 実大2階建て通し柱試験体振動台実験(事務局レポート)

2/17通し柱効果に関する検証実験レポート@京都大学防災研究所
レポート=和田洋子

平成24年2月17日、小雪が舞う京都大学防災研究所で夏に行われた通し柱効果の検証実験の続きが公開されました。実験に参加下さったのは30名です。参加者の多くは建築士や施工者、材木関係者で、遠くは佐賀、愛媛、徳島、広島から駆け付けてくれました。

試験体の柱脚は
石造ダボ付き礎石の石場建て

今回行われた実験の試験体は「石造ダボ付き礎石+石場建て」仕様です。昨年7月から8月にかけて土台仕様で行なった通し柱効果検証実験の石場建てバージョンです。礎石には石造ダボを設置し、水平方向に緩い拘束を設けているのが特徴です。

石ダボの設置状況。石ダボの高さは、タバコの箱より少し低いぐらい。

BCJL2波加振の様子

山田先生が資料に基づいて、今回の実験の目的、前回の実験結果等、事前説明を行ないました。山田先生らしい、丁寧でわかりやすく愉しい解説でした。

事前説明を行う山田先生(振動台実験検証WG主査)

いよいよ最初の加振(BCJL2波/X方向100gal)です。ギシギシ揺れるものの、1方向なので単純な揺れ方です。全く不安感はありません。その後200gal、300galと順次入力波の大きさを上げて加振しました。

200galでは柱脚が動く気配は全くありませんでしたが、300gal加振前には、山田先生から「端の柱が僅かに浮くと思うので、ドライアイになるかもしれませんが、瞬きをしないで見て下さい」と説明がありました。思わず身を乗り出して見ていると、右左交互にドンドンと四股を踏むように柱がわずかに浮きました。加振終了後に山田先生からは「交互に上がるような動きが見えたと思います。端の2本が浮いている瞬間も他の4本は接しているので、浮いたと言ってもそんなに滑らない」とお話がありました。

350galでは横綱級の四股でした。建物重量がそのまま音になったような重い音がしました。
横に移動してダボに当たっているのではないかと、参加者も興味津々です。残留変形はそれほどなさそうだけれど、念のために大工さん達に仕口などのチェックをしてもらい、先生方で実験が続けられるかどうか協議をしました。

協議をする山田先生、鈴木委員長、齋藤設計法部会主査

試験体の状態をチェックした結果、400galを入力する事になりました。総重量約13tの試験体が飛び跳ねるように動きました。加振終了後に大工さんが試験体を入念にチェックしてくれた結果、胴差を留めている雇いの鼻栓が折れたようです。鈴木委員長も柱脚元を入念に確認していました。

試験体の状態を観察する鈴木委員長と鎌田委員

公開終了後、JMAkobe波を加振

ここで、参加者の安全を考え公開実験は終了させてもらいました。しかし、まだ試験体は栓以外は健全な状態なので、実験担当者の山田先生、須田先生、向坊先生が「さて、どうするか。ここで止めるか、もっと大きな加振をするか」を相談していました。

実験継続の可否を相談する(左より)須田先生、向坊先生、山田先生

相談の結果、JMAkobe波(2軸)を入力しようということで、大工さんが鼻栓の交換をし、鳶達によって上部の鉄骨が撤去(試験体が当たるため)されました。

鼻栓を交換する大工さん

鉄骨を撤去する鳶さん

いよいよJMAkobe波(2軸)加振です。振動台がせり上がってきました。私は正面に座っていたので、ちょうど礎石の高さが目線と同じくらいになりました。

JMAkobe加振に向けて、せりあがった振動台にもちあげられた試験体

遂にJMAkobe波(X:400gal、Z162gal)です。神戸波独特の最初の激しい一撃でかなり大きな音がして試験体はかなり動きましたが、礎石から落ちる程ではなく、もちろん倒壊もせず終了しました。

その後、最大600galまで入力しました。一部柱脚元が破損しましたが、試験体自体は倒壊しませんでした。

礎石ギリギリのところで割れた柱脚

結果としては、石場建てでも通し柱効果が見られたのではないかと思います。工学的に詳しい分析は山田先生の速報をご覧下さい。

地長押付き仕様

実験棟には8日に行なった地長押付き石場建て実験のための柱脚元固定用冶具が置いてありました。柱を両サイドから2本の地長押ではさみこむのですが、これは柱同士を固定するものであって、礎石と柱とを拘束するわけではありません。柱を両側からはさむ2本の地長押を固定する為に樫の雇貫を通し栓で留めたそうです。当初はボルトを使う予定でしたが、鈴木委員長から「ボルトを使ってはいかん」とダメだしがあり、向坊先生のアイディアでこの冶具が作られたそうです。

地長押付き石場仕様用冶具(真ん中の穴の部分で柱を挟み、樫の貫と栓で留める)

冶具の継手

地長押付き石場建て、石場建ての結果のグラフも山田先生の速報に掲載しましたので、どうぞご覧ください。