進捗状況

2011年12月25日

12/21 建築学会シンポジウム「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望 」

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

キャラバン最終日から中2日。建築学会の中で組織されている 都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会主催「建築・社会システムに関する連続シンポジウム」の第14回として「伝統構法木造建築物における諸問題と今後の展望」が建築会館ホールで開催されました。伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会も、共催として名を連ねています。

まず、主催の「都市・建築にかかわる社会システムの戦略検討特別調査委員会」の南一誠委員長から、委員会の概要についてのご説明がありました。次に鈴木委員長がシンポジウムの主旨説明を行い、その後、「伝統構法木造建築の課題」として、5つの講演が続けて行われました。

伝統構法木造建築の5つの課題

1. 伝統構法木造建築の法的な課題について

「法的な課題」は構造面以外で伝統構法の障害になっている事柄について、主に改正省エネ法をめぐって、すまい塾古川設計室の古川保さんが話されました。


伝統的構法の普及を遮る法的な課題として既に挙げられている排煙窓、シックハウス法、そこへ持ってきて更に追討ちをかける形で住宅版改正省エネ法が検討されているそうです。設計法ができて構造的な問題がクリアになったとしても、現在検討されている「住宅版改正省エネ法」(住宅全戸に適用)が成立してしまうと、断熱・気密だけで住宅の環境性能が評価されてしまい、伝統的構法の家を建てる事は至難の技になってしまうと言う訳です。

古川さんは「法律になってからでは遅い。伝統的構法が建て続けられるようになるためには、ひとりひとりが住宅版改正省エネ法の行方を見定めて、声を挙げて欲しい」と締めくくりました。

2.伝統構法木造建築物の歴史と構法について 

歴史構法部会の麓和善先生が、伝統的構法の変遷について、構法・歴史部会の調査や多くの写真・図を交えてわかりやすく講演をしてくれました。現在作成している設計法が、歴史的検証に基づいた設計法であると締めくくりました。

3. 検討委員会より3つの報告

・伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験の取り組みについて
・伝統的木造建築の現行の設計法の設計法の運用について
・伝統構法木造建築のこれからの設計法の考え方について

それぞれ、鈴木祥之委員長、齋藤幸雄主査、奥田辰雄主査が話されました。

鈴木委員長は講演の最後を「伝統構法は構造力学的には難しいがひとつずつ解明していくと最先端の技術となると信じている」と結びました。運用マニュアルや設計法についての完成スケジュールに対する質問があり、実務者の運用マニュアルや設計法に対する期待の大きさが感じられました。

パネルディスカッション〜翻弄され続ける伝統的工法の行方は?

後半のパネルディスカッションでは、江原幸壱さんと、渡邊隆さんから2つの問題提起がなされました。

江原さんから提起されたテーマは「伝統構法木造を阻む要因について」。議論の開始に先立ち、「本当に地球温暖化はCO2が原因なのか?」を検証してもらいたいという事を「The road to hell is paved with good intentions(地獄への道は善意で敷き詰められている)」という諺を用いて訴えました。

渡邊さんからのテーマは「施工における人材育成の問題点について」大工の技能をどのように担保するのかという問題について、渡邊さん自身が現在行っている研修についての報告を含めて、問題提起をしました。

パネルディスカッションでは、自分達で自らの首を締めてきたのではないかという反省や、伝統構法に適した耐震改修については啓蒙が進んできているという報告もありました。後半は主に改正省エネ法や長期優良住宅について議論があり、会場からは「伝統構法で建てられないのは憲法違反ではないかとも思う」という意見や、「構造について“やっとここまで来た”と思っている矢先に改正省エネの追討ちをかけられている」という意見が聞かれました。

会場からは、東日本大震災の被災状況に対する質問、法律に翻弄され続けている状況を「国はどこまで丁寧に面倒を見てくれるのか」という皮肉を込めた意見、伝統的構法を阻む法律が出来るのは教育が問題なのではないかという意見、住宅版改正省エネ法には今のうちに対応していく必要があるという意見などがあがりました。

伝統的構法の危機的状況を打開するために

また、余りにも世間が木造住宅や伝統構法を知らないのは、一般に発信してこなかった事に責任があるという反省や、伝統構法の普及を考えると、林業、地域の活動、ライフスタイルも大切であるという意見が出て、鈴木委員長から「情報発信は重要である。来年以降から伝統構法に関するPRを行う」という発表がありました。最後は、検討委員会の当初からの目的である「伝統的構法の危機的状況を打開したい」という決意で締めくくられました。