進捗状況

2011年11月4日

古材WGより「古材めり込み・仕口接合部公開実験」速報

古材WG担当:棚橋秀光・大岡優(立命館グローバル・イノベーション研究機構)

10月19日午後、立命館大学びわこ・くさつキャンパスのセル実験室にて行われた古材めり込み・仕口接合部の公開実験には7名の方のご参加をいただきました。

この実験は、古材の再利用および現存する古い伝統木造建築物の耐震性能を評価する上で、古材の材料力学的な特性、および古材からなる仕口の復元力特性を調べ、新材との差異を明かにするとともに、古材の設計用データを蓄積することを目的として、10月から2ヶ月かけて行っているところです。対象部材は、川越市の民家(推定築189年)の解体材のスギとケヤキ(当初アカマツより変更)、湖南市の民家(推定築170年)の解体材のアカマツとスギです。

めり込み試験

基本的な材料試験(縦圧縮試験・曲げ試験・せん断試験)に加えて、仕口の復元力特性の最も重要な要素となっているめり込み特性を明らかにするためにめり込み試験を行います。図1の試験要領に示すように、木口の年輪方向別にめり込み試験体Pとその両隣から全面圧縮試験体Sを2個を1セットとして採取し、鋼板で上下から挟んで載荷し、全面圧縮とめり込み(部分圧縮)による剛性・強度・変形性能などを比較します。

図1 めり込み試験要領

当日は、湖南のアカマツの追柾(木口の年輪方向が45度傾斜した断面)のめり込み試験体1セットを用い、万能試験機にて試験体高さが3分の1となるまで、ひずみレベルでは67%の大ひずみまで載荷しました。

図2 めり込み応力度ーひずみ曲線:湘南アカマツ:N1

その結果を図2に示します。赤ラインが全面圧縮S、黒ラインがめり込みPです。PはSより剛性・強度が増加し、いずれもひずみが40%を超えると強度が急増しひずみ硬化がおこる、いわば「ぺしゃんこ」になって「カチカチ」になる現象が明確に現れています。しかも変形性能も新材と比べて劣りません。

仕口にモーメントが作用した場合、仕口のホゾの貫・柱の接触面付近では局部的に、このような圧縮による大ひずみとひずみ硬化が発生します。それが、大変形に至っても仕口の強度が増加する主な要因と考えており、今回の古材でもそのことが確認できました。

写真1 めり込み試験体Pの大変形状況

古材・新材を用いた仕口接合部実験

実際の仕口は目違いや、込栓、楔など複雑な要因が入り込み比較が困難となるため、今回の実験では、最も単純で古材の材料特性が直接発現しやすい通し貫仕口の十字型試験体(表1の新材を含む5種類の組み合わせで図3に示します)としました。古材と新材の材料としての違いが仕口の復原力特性(剛性・強度・変形性能・残留変形など)に及ぼす影響を見るための実験です。写真2に実験のセットアップと載荷状況を示します。

表1 仕口試験体一覧

図3 十字形通し貫仕口試験体 J1-J5

写真2 仕口実験セットアップと載荷状況

載荷レベルは1/240 ,1/120,  1/60,  1/30,  1/20,  1/15,  1/10, 1/5 の8段階正負交番繰返しとし、載荷速度は5mm/min から順次60mm/minまで変化させました。5シリーズの各試験体3体のうち1体は3回正負交番載荷としました。当日は、J3-2の試験体(湖南の柱スギ、貫アカマツ)を1サイクルで載荷し、所要時間は約1時間でした(3サイクルでは約3時間)。

結果をモーメントー回転角で表すと図4のような復元力を示しました。

図4 仕口の復元力特性:湘南柱スギ・貫アカマツJ3-2

1/5の回転角(0.2rad)でも不安定さはなく、復元力は第1象限(柱頭部を左に押す載荷)では1000kNmmで頭打ちのように見えますが、第3象限(右に引く載荷)では1400kNmm以上に増大を続けています。左右で抵抗モーメントが異なる要因は、楔(今回は平行楔で柱面でカット)が貫のめり込み部にはまり込んだ状態で貫について動き、楔の位置によりめり込みの接触長さが変動するためと想定されます。

参考に、時間の関係で見ていただくことができなかった3サイクル載荷のJ2-1の貫の変形状況を写真4に、復原力のグラフを図5に示します。

写真3 J2-1の最大変形0.2radの変形状況

写真4 J2-1の虫食いスギのめり込み変形

図5 仕口の復元力特性:湘南柱スギ貫スギJ2-1

この試験体では、写真4に見られるように貫にかなりの虫食いが見られ、弱そうに見えますが、最大モーメントは900kNmm程度あり、見かけによらず健全な復元力を示し、変形性能は新材に劣らず大きなことが確認できました。

現段階では、古材に関して、新材との差異を結論づけることはまだできませんが、引き続き、めり込み試験・材料試験を行って成果を得たいと考えております。