進捗状況

2011年8月31日

古材WGより「古材強度試験」の速報

レポート= 佐々木康寿(古材WG主査、名古屋大学大学院 生命農学研究科 教授)

我が国には古来より現在に至るまで木材を構造材料として利用してきた長い歴史があります.寺院建築をはじめとして古民家などを含む多くの木造建築には,台風・地震など幾多の災害を乗り越えて現代までその姿を残しているものが多くあります.これらでは,断面寸法の大きい豪壮長大な材料が使用されているため,その視覚的な迫力や質感,使用感,そして長年月にわたる使用が環境保全の観点から好ましいことなどが現代人の関心を呼び,近年,古材を再使用する場合が見受けられるようになってきました.このような再使用の際には,古材の強度性能を適切に判断する必要があるでしょう.

今回の実験は,古材を再利用することを視野に入れ,強度性能を把握することが一番の目的です.8月11日午後に長野県林業総合センター(塩尻市)で行なわれた公開実験には24名の方にご参加いただきました.材料は,長野県の古寺院(築後経過年数:約110年)および滋賀県の古民家(築後経過年数:約170年)で使われていたもの(直径約25~40 cm, 長さ約5~6.5 m,17本)で,樹種はアカマツです.実験の載荷方法はスパン5.8 m(材背の14~18倍)の3等分点4点負荷法による単調増加方式で行ない,荷重と中央たわみを測定しました.なお,公開実験前に試験体の損傷・欠損状況等を観察記録し,予備実験を行いました.その結果,載荷開始から破壊に至るまでに要する時間が5~10分程度となるよう,また,応力増分が一定となるよう,当日は載荷速度(たわみ速度)を20mm/minに設定して実験を行ないました.

曲げ試験の様子を写真で示します.

曲げ試験時の荷重と中央たわみの関係を示すグラフです.破壊荷重は10トンを超えるものもあります.

破壊した時の様子です.これは想像ですが,恐らく解体前の載荷重かと思われる負荷を上回ったあたりからピシッ,ピシッと音をたて,大きく湾曲変形するまで粘りを見せた後,欠損部が原因となる曲げとせん断の複合と考えられる破壊を起こしました.

古材を再使用して建物を修復・設計する際には,弾性係数(ヤング係数)や破壊強度が重要になります.両者の間には緩やかな比例関係があると考えられています.破壊強度を知るためには,今回の公開実験のような材料の破壊試験をする必要がありますが,弾性係数は壊さなくても知ることができます.そこで,弾性係数を何らかの方法で正確かつ簡便に知ることができれば,破壊強度を非破壊的に推定することができそうです.そのためには,今回のような強度実験から得られる弾性係数と破壊強度のデータを多く蓄積すること,非破壊的に破壊強度を推定する方法を開発することなどが重要になります.

学生の感想

●古材は生物材料の新たな利用資源として、とても重要なものだと思います。古材を有効に利用するためにも、古材の特性を知ることは不可欠であり、今回のような貴重な試験に携わることができたことを嬉しく思いました。古材の特性が明らかにされ、私たちの生活に活用されるようになることを楽しみにし、また自身でも目指したいと思いました。

●貴重な古材の実大材の実験に参加させていただき光栄に思います.学生のうちにこのような経験ができてうれしく思います.それと同時に実験を行う難しさも経験でき、それを生かすと同時に今回の貴重なデータから、古材の正しい評価と古材の可能性を研究できればと思います.

事務局による当日のレポートもご覧ください