進捗状況

2011年8月15日

8/8 通し柱実験@京都大学

レポート=和田洋子(検討委員会 事務局、一級建築士事務所有限会社バジャン)

実験の背景とねらい

これまでに報告されている伝統的木造の建物の地震被害にひとつの典型として、「1階に開口部が多く、2階に少ない」上下階のバランスの悪い建物において、変形のより少ない2階部分が、大きく変形した1階をつぶしてしまうというケースがよくあります。(写真は能登地震の例です)

日当りのよい1階の南面にはどうしても開口部が多く、そして2階には個室をとるために開口部が少ないプランになりがちです。暮らしの必然から現実によく起こりうるこうした1階・2階のアンバランスを、どうしたら克服できるのか? これは伝統的構法の設計法を構築する上での、ひとつの大きな課題です。この課題に対して、1階・2階のバランスが良いとは言えなくても、ある程度以上の径をもつ通し柱が一定本数入っていれば、1階と2階それぞれの層間変位角が平均化されるのではないか?という仮説を立て、実際に振動台の上で試験体を加振して検証してみようというのが、今回の「通し柱の効果の検証実験」のねらいです。

 

6寸角通し柱×4本、1F 2Fのバランスの悪い試験体で公開実験

振動台実験検証WGでは、7月末から、通し柱の効果を検証するための比較検証実験を重ねてきました。これまでに「柱6本(柱=4寸角/6寸角)のバランスが良い試験体/バランスが悪い試験」「柱4本(柱=4寸角/6寸角)のバランスが良い試験体」の実験は終了しており、公開実験となった8/8には「柱4本のバランスが悪い試験体」の実験を行う運びとなりました。

6寸の通し柱が4本入った、1階と2階とのバランスの悪い試験体(2階に壁がより多く入っている)

当日は関係者を含め60名ほどの見学者が来られました。公開実験の開始時刻は午後4時だったにもかかわらず、早くも3時前から数名の見学者が到着し、公開前の加振を興味深く見守っていました。時間になると、まず、それまでに行って来た3パターンの実験での柱の損傷具合などについて、試験体を製作してくださった京都の木村棟梁や鈴木委員長から説明がありました。実験棟に展示されたそれまでの試験体の柱や込み栓などの損傷具合を皆さん間近で観察していました。

7月末から連続して行って来た通し実験の経緯を説明する鈴木祥之委員長

前回までの試験体の柱が解体展示されていた

込み栓や鼻栓の損傷の様子

そしていよいよ、柱=6寸角が4本入った、バランスが悪い試験体」の加振が始まりました。まず、振動台の上に載った試験体を、BCJ-L2波を450galで1回、500galで2回、加振することになっていました。なぜ500galで2回加振するのかをWG主査の山田先生にお聞きしたところ「それ以前の実験で450galで柱の折損が見られたので、詳細に観察をしたいから」とのことでした。

 

600gaで加振しても柱は折れず!

「今日はどこで柱が折れるかなぁ」と言いながら、山田先生は実験を見守ります。公開直前に行われた400gal加振の時ですら、試験体はギシギシと大きな音をたてながら左右に激しく揺れ、荒壁パネルの損傷もかなり進んでいたので「いくら6寸角の檜柱とはいえ、450galでも折れてしまうのでは」と、思わず固唾を呑みます。山田先生から実験の説明がされた後、いよいよ450galの入力となりました。

当然ですが2階はこれまで以上に大きく振られます。例え柱が折れても倒壊はしないと理解しているものの、この状況の中で「あの2階には絶対居たくない!」と思いました。が、450galにも、続く500gal加振にも通し柱は4本とも耐えたので、500galで再加振する予定を急遽変更し、600gal加振に及びました。結局、鼻栓は曲がったものの、最後まで柱が折れることはありませんでした。「柱が折れるのではないか」と予想していた見学者も多かったようで「檜で6寸もあると、なかなか折れないもんだな」という声があちこちで聞かれました。

速報値では600gal加振で1階の変位は236㎜・層間変形角は1/11、2階の変位は112㎜・層間変形角は1/24。すでに100galから600galまで10回の加振を続けていて仕口が緩んでいたこと、荒壁パネルの損傷が進んで耐力が落ちていたことが幸いしたのではないかと思われます。通し柱の効果について、解析の結果を待ちたいと思います。

  
実験に立ち会った方の感想

要素実験の事務局に携わっている金沢工業大学の河原大さんにもコメントをいただきました。


6寸の太い通し柱の効果はかなりあると感じた。4寸試験体と並べて実験していたらもっと感覚的に比較できて、さらによかったのではないかと思う。今後、数値的検討がすすみ、設計や診断における通しの影響の基準が明らかにされていくのを楽しみにしている。

金沢工業大学の学生さんに感想を寄せていただきました。

実大の試験体での振動実験をみるの初めてだったので、迫力がありました。通し柱の断面が大きく、柱の損傷が少ないのがちょっと残念でした。 三浦悠(M2)



通し柱が豪快に折れるのではないかと予想していましたが、折れなかったので、伝統木造の粘り強さを感じることができました。 

塚畑大樹(M2)


学校の勉強では力学モデルから建物が振動時にどのような挙動を示すかと言った理論は学ぶが、実際にこのような大きい試験体での実験を見る機会が無いので良い経験となった。加振後には最大変形および最大層間変形角のアナウンスがあり、6寸の大きな柱を使用した時は500galもの加速度にも耐えることがわかり、実験を見てよかった。 三宅健太郎(M2)

振動台実験検証WG主査の山田耕司先生からの速報も併せてご覧ください!