進捗状況

2012年12月8日

10/25(木)古材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験@名古屋大学大学院 佐々木先生による速報

速報=佐々木康寿(材料部会 古材WG)

1. 実験概要

材料部会古材WGでは,古建築が持つ接合部の抵抗性能の把握を目的とし,建物の解体時の状態を維持した仕口接合部のモーメント抵抗性能に関する第2回目の公開実験を行いました.開催日時は2012年10月25日(金)14時〜16時,会場は名古屋大学大学院生命農学研究科・A館-145号室(木質構造実験室)です.公開実験の呼び掛けにより,当日は6名の一般参加者がありました.

写真1 解体物件(広島県福山市)

写真2 試験体採取箇所

2. 試験体

今回の接合部試験体は,広島県福山市の古民家(写真1,築後の経過年数は約60年)から解体時に採取した(写真2)もので,柱梁から成るT字型試験体(外形寸法は約1.5m×2.0m,接合部はほぞ差し)です.

写真3 実験室に搬入した試験体

試験体の採取に当たっては,接合部に負荷を与えないよう予め方杖用の板材を釘打ちし,解体,搬出しました(写真3).部材は,柱材がスギで断面寸法が約110×110 mm,梁材はアカマツで断面は円形,その直径は,試験体によって異なりましたが約200〜250 mmでした.建物の状態は,試験体を採取した2階部は良好で,腐朽などの目立った損傷は見受けられませんでした.しかし,1階部は床下部がシロアリの被害を受けているとのことでした.

3.試験方法

柱材上部はアクチュエータとピン結合し,梁材を試験機フレームにアンカーボルトで固定しました.加力は定速変位制御(200mm/min)による正負繰り返し交番載荷で行いました.変位の折り返し点は,柱-梁のせん断変形角が1/450, 1/300, 1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/10 rad.となる9ステップに加えて,最大ストロークである200 mm(約1/5 rad.に相当)としました.各ステップでの繰返し回数は3回で,計30サイクル繰返し加力しました.変位計を図1に示すように6箇所に設置し,柱-梁のせん断変形角,柱の浮き上がり量などを算定しました.

図1 試験体・測定器具の設置

写真4は加力試験の様子,写真5は公開実験時の参加者見学の様子です.

写真4 試験装置に設置した試験体

     

写真5 公開実験解説の様子

4.試験結果

復元力特性として,図2,3に「荷重とせん断変形角の関係」の一例を示しました.また,図4にはこれらから作成した「モーメントとせん断変形角の関係(包絡線)」を示しました.図4より,多くの試験体(7体のうち5体)はほとんど抵抗力を示しませんでした.これは,勘合度が甘かったことによると考えられます.なお,これらのほぞの長さは約70〜80㎜でした.この結果から,これらの試験体は水平加力に対する抵抗要素としては期待ができないと考えられました.一方,一部の試験体(FU3,FU6)は接合部の勘合度が比較的きつく,ほぞの長さは170〜190㎜もある,長いもので,大きな抵抗性能を示しました.これらは,既往のほぞ接合部の力学性能に関する試験結果と比べて,十分に抵抗要素として成り立つと考えられました.なお,これらの試験体はほぞの付け根の折損(写真4)をもって最大荷重を示しましたが,その時の変形角は1/20〜1/13rad程度であり,また,荷重も一気に低下するなど,必ずしも粘りを発揮するようなものではありませんでした.さらに,試験終了後,接合部を分解したところ,長ほぞの付け根に節が存在するなどの様子が見られ,モーメントに抵抗しきれず一気に折損したことがうかがえました.

図2 荷重とせん断変形角の関係(FU3)

図3 荷重とせん断変形角の関係(FU4)

図3 荷重とせん断変形角の関係(FU4)

  

図4 モーメントとせん断変形角(包絡線)

試験終了後,接合部を分解し,長ほぞを観察しました(写真6:FU3,写真7:FU5).これらより,ほぞの形状が接合箇所によって異なることがわかりました.写真4のような長ほぞを持つ接合部は脆性的ではありますが比較的大きな抵抗性能を発揮し,写真5のような少し短かめのほぞを持つ接合部は勘合も甘くほとんど抵抗性能を発揮しませんでした.

写真6 試験後のほぞ(FU3)

    

写真7 試験後のほぞ(FU5)

このようなことから,現代のようなプレカットに依らない古建築の接合部は,建物の接合箇所によって長さや勘合度にバラツキがあり,全ての接合部に抵抗性能が期待できるわけではないことが判明しました.恐らく,要所の接合部ではほぞの長さを長くし勘合もきつめに仕上げ,それ以外の接合部は位置決め程度の扱いであったのかもしれません(図5に推察例を示しました.)

図5 試験結果とほぞの形状からの推察例