進捗状況

2012年12月7日

10/25(木)古材に対応した新材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験@立命館大学 棚橋先生による速報

速報=材料部会古材WG 担当:棚橋・大岡

1.実験概要

材料部会古材WGでは,7月6日と10月25日の2回にわたる古材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験を名古屋大学で行いましたが、古材に対応した新材による仕口接合部の公開実験を2012年10月25日午後、立命館大学びわこ・くさつキャンパスのセル実験室にて行いました(外部からの参加者無し)。古材と新材の材料としての違いが仕口の復元力特性に及ぼす影響を見るための実験です。
 
長野古寺院(築後約100年)および福山民家(築後約60年)で得られた部材は、共にアカマツの梁にスギ柱の柱頭のほぞを差したT字型の仕口接合部です。仕口のほぞなどの寸法を確認の上、同じ樹種の新材で極力同じ寸法の仕口を再現するよう加工し、実験を行いました。

2.古材に対応した新材のT字型試験体と実験要領

古材仕口内部では、ほぞの劣化や乾燥収縮により勘合度が緩くなるため、強度が出にくい傾向が見られましたが、新材の加工では勘合度について特別な考慮はせず、一般的な精度で加工しました。

図1 仕口の詳細(単位mm)

仕口の詳細や寸法は、採取した古材仕口形状に合わせたT字型試験体とし、柱は120mm角〜105mm角スギ、梁は幅140〜150mm、高さ190〜200mmのアカマツで、ほぞ長さは短いものから梁を貫通したものまで6体です。次に、仕口寸法の一覧を示します。

表1 仕口寸法一覧表(単位mm)

長野、福山の古材と新材の対応は表1によります。福山の梁は、丸太で柱の取りつき面のみ平面に加工したものでしたが、仕口部の梁の高さを同じとすることで新材では矩形断面材で代用しました。

図2 実験のセットアップ

実験はT字型の試験体を逆さにして測定器をセットアップして行いました。ロードセルで載荷荷重を、6箇所の変位計で載荷点・仕口・支点の変位を測定しました。

載荷レベルは1/240,1/120,1/60,1/30,1/20,1/15,1/10,1/5 の8段階で各レベルで正負交番3回繰返しとし、載荷速度は30mm/min から順次60mm/minまで変化させました。

写真1 載荷状況

写真2 仕口の変形状況

3.実験結果

各試験体の結果を仕口のモーメント(kNm)―回転角(rad)で表すと図3-図5のような復元力を示しました。回転角は仕口変位計の変位差を変位計間隔で除して求めています。図6に全試験体の復元力特性の包絡線を示します。長ほぞのNN4,FN3,FN6では、載荷方向にもよりますが、0.05〜0.1radでほぞが破壊して抵抗力を喪失しましたが、NN2、FN4,FN7の短ほぞでは抵抗モーメントは小さいが、0.2rad程度まで抵抗力を維持し、変形能力が大きいことがわかります。

図3 NN2,NN4の復元力特性

図4 FN3,FN6の復元力特性

図5 FN4,FN7の復元力特性

図6 各試験体の復元力特性の包絡線

参考に、試験後の仕口解体後のほぞの変形状況を写真3に示します。NN2の短ほぞでは仕口の回転による圧縮変形によりほぞが台形に変形していますが、長ほぞの変形は目立たず、変形が進む前にほぞの根元で破壊が起こったと推定されます。
今後、各試験体の材料試験結果をもとに、古材と新材の剛性・強度・変形能力などの差異の比較検討を行う予定です。

写真3 試験後のほぞの変形状況