進捗状況

2012年10月21日

9/1(土) 床版実験@福山大学 鎌田先生による速報

速報=福山大学 鎌田 輝男(材料部会)

1公開実験の概要

名称:伝統的構法木造床版の面内せん断耐力実験
日時:平成24年9月1日(土) 13時30分〜17時
場所:福山大学構造・材料開発研究センター(30号館)構造実験室
   福山市学園町一番地三蔵
見学者:16名(8月29日の3名を含む)

2 実験の目的および内容

E-Defenseにおける振動実験において使用される伝統的構法による実大木造住宅実験棟の1階床版の面内せん断耐力特性を明らかにすることが主たる目的であるが、床版を構成するけたとはりおよび小ばりからなる床版軸組に対して、根太および床板の効果を明らかにするために、次の3タイプの床版試験体各1体の面内せん断耐力実験を実施した。

(1)床板なし床版(8月24日)
(2)床板斜め釘打ち床版(8月29日)
(3)床板脳天釘打ち床版(実験棟仕様)(9月1日、公開実験)

各試験体のせん断変形角に対する復元力履歴特性を求めるとともに、最大加力(変形角1/9、けたの相対変位404㎜)にいたるまでの損傷状況を観察することが目的である。

3 試験体

3.1 試験体のサイズ

3.2 各試験体共通仕様

3.3 雇いほぞ入れ仕口の形状

4 加力実験装置

試験体を水平構面試験架台に設置する。試験体けたの一端を、けたを貫通する3本のΦ12寸切りボルトとけた両面にスクリューボルト締めした6個の固定アングルによって固定架台に固定する。もう一端をH形鋼で受け、これをローラーコンベアー上に設置することによってローラー支持とし、これを加力けたとする。

加力側のけたの両端を2枚の加力板ではさみ、両加力板を4本のΦ20ロッド結び、加力板に油圧ジャッキを取り付けることによって加力する。

油圧ジャッキはRIKEN製DR5S-200-800(容量200kN、ストローク800㎜)を使用している。

5 加力実験

5.1 加力スケジュール

油圧ジャッキのシリンダに取り付けた変位計によってシリンダの変位を制御することによって加力した。けたの中心間距離3640㎜を基準長さとして、床版のみかけの変形角を所定の大きさとするようにし、各加力段階において3回の押し引き交番加力をおこなった。

みかけの床版変形角レベルとシリンダ変位は次の通りである。

5.2 計測点

床版軸組の変形および回転と床板の回転およびずれを計測するために、各試験体における変位計測器の配置図を示す。床板なし軸組のみの床版の変位計測点は15点であり、床板をもつ試験体ではさらに床板の軸組に対する相対変位を計測するために、さらに12計測点を追加し、合計27点の変位を計測している。

6 床版の復元力特性

各試験体の復元力履歴特性を示す。床版の変形角は固定けたの回転角を差し引いた真の変形角を表しているが、床板脳天釘打ち床版試験体を除き、見かけの変形角と真の変形角にほとんど差はない。なお、変形角は時計回りを正として表している。

床板なし床版試験体
床板なし床版試験体は、けた、はり、こばり、根太 からなる試験体である。

変形角1/10にいたるまで、床版試験体には大きな損傷はなく、変形角1/30で約2kN、変形角1/10で約4kNの耐力を有する。変形角1/10でも床版軸組は大きく損傷することはない。

斜め釘打ち床版
床板斜め釘打ち床版試験体は、床板側面からN65釘を根太に斜め釘打ちとしたものである。釘は根太にそれぞれ1本打たれただけであるが、床板を取り付けることによって耐力は向上するが、変形角に対して直線的に増加してしている。


また、荷重反転時に復元力は急激に消失し、完全な滑り状態になる。これは、変形の増加時には床板相互の摩擦抵抗力が働くが、減少時には摩擦抵抗力がほとんどないことを示している。
変形角1/10にいたるまで、床版試験体には大きな損傷はなく、変形角1/30で約3kN、変形角1/10で約8kNの耐力を有する。
斜め釘打ち床版では、復元力特性の非対称性が予測されたが、小変形時を除いてほぼ対称であった。

脳天釘打ち床版試験体

脳天釘打ち床版試験体は、床板を根太にN90釘を3本ずつ打ったもので、床版の剛性および耐力を増加させる効果は大きい。

変形角1/30で約7kN、変形角1/10で約14kNの耐力を有し、斜め釘打ち床版に対して約2倍の耐力を有する。変形角1/20を越えると耐力は直線的に増加し、床板の摩擦抵抗が現れてくるものと思われる。なお、変形角1/10においても床版軸組には大きな損傷は見られなかった。

各試験体の耐力特性
各試験体の耐力特性を骨格曲線で比較して示す。根太なし床版なしと半剛床(床板24㎜)で示されるものは、平成18年度に実施した床版試験体の結果である。

床版の軸組は今回の軸組と基本的に同一であり、軸組のみと根太を取り付けた場合の比較から、根太を取り付けることによる効果が示され、さらに、床板を取り付けることによる床版耐力の増加が示されている。

斜め釘打ち床版と脳天釘打ち床版の耐力特性を比較すると、微小変形時にはどちらも同程度の耐力を有するが、それを超えて変形角1/20以内では脳天釘打ち床版の耐力は2倍以上ある。斜め釘打ち床版の耐力は、変形角に対して直線的に増加するのに対して、脳天釘打ち床版の耐力は、変形角1/20以上の領域では直線的に増加しているようにみえる。これらは、床板の摩擦抵抗力によるものと思われる。

平成18年度の床版試験体
今回の試験体との相違点は(1)柱が120㎜角である、(2)はりとけたが同一レベルである、(3)床板は24㎜厚であることであり、基本的には同一仕様とみなすことができる。

床版軸組試験体

半剛床試験体