進捗状況

2012年12月31日

12/26(水) 極端にせいの低い土台仕様土壁試験@鳥取環境大学 事務局レポート

レポート=河原大(伝統的構法の設計法作成および性能検証実験検討委員会事務局)

2012年12月26日鳥取環境大学にて、「せいの低い全面土塗り壁試験体」の公開実験が行われました。

当日はクリスマス寒波まっただ中ということで、鳥取でも雪が降り積もっていました。寒い中バスを待ち、駅より約20分。鳥取環境大学はとても静かな郊外にあり、とても環境の良い場所と感じました。大学敷地内の奥に独立した実験棟があります。

実験棟の中では土壁WG委員である中治先生・中治研究室の学生さんが待っており、ジェットヒーターを付けて実験室を暖めておいてくれていました。暖かい実験室で開始時間まで待っていると、チラホラと一般見学の方が集まってきました。実験途中に来られた方もいらっしゃいましたが、一般の大工の方・設計士さん・大学の先生方など、最終的には15名ほどの見学の方にお集まり頂きました。鈴木委員長・土壁WG担当の福山大学鎌田先生もいらしており、現場の学生さんを含めると20名以上の大人数で実験を見ていたことになります。

これが、今回対象となる試験体です。

この一連の実験では、背の高い全面土壁と低い全面土壁について実験を行い、背の高さが変わった時に復元力特性がどのように変化するのかを確かめる。また、変化した場合の補正方法を検討する。ということを目的としています。鳥取環境大学では土台仕様を、金沢工業大学では足固め仕様の実験を行っています。

早速実験が始まり、小さい変形の時は、自動制御の実験を見学するのみです。次の写真が1/60[rad.]時の様子です。段々と貫に沿ったひびが目立ってきました。

そして、1/45[rad.]時の様子。先ほどまでのひびが進行している以外は、特に目立った損傷はありません。

若干目線が遠いのですが、次が1/30[rad.]時の様子です。ひび割れ部分が浮き上がってきているのがわかります。

続けて2枚、1/20[rad.]、1/15[rad](右)時の様子です。大分浮き上がりが顕著になり、壁が落ちそうな印象を受けますが、経験上このくらいだとまだ土の剥落が無いことを知っていましたので、遠目で試験体を見守っていました。

次が1/10[rad.]時の様子です。さらに壁土の浮き上がりが目立ち、そろそろ落ちるかと思っていましたが、まだ粘っています。

ついに1/7[rad.]まで変形が進みました。加力途中の写真を3枚連続でご覧ください。繰り返しが進むにつれ、壁土も大きく剥がれ落ちました。

この写真だけを見ると完全に壊れているように思えますが、実際に実験中には大きな破壊音はありませんでしたので、軸組は破壊されていなかったようです。実物の建物だった場合、左官工事を再度行うことで、補修可能と思われます。

実験が終わると結果データを前にして、鈴木委員長・中治先生に今回の結果などについて特別授業を行って頂きました。既に行っている背の高い壁の実験結果と比べると、復元力特性・破壊性状にほとんど違いはなく、実務の設計上は補正する必要はないのではないか。ということでした。結果検討の詳細は、中治先生の実験結果速報をご覧ください。

実験終了後は解体です。中治先生自ら、研究室の学生さん達とともに解体作業を行っていました。見事な手際で、小一時間後には、柱梁以外は全てバラして整頓されていました。

今回の公開実験で感じたのは、たくさんの見学者の方がいらしており、皆さん興味がおありだということです。地方でのこういった盛り上がりが、結果的には伝統木造が普及するための礎になるのではないかと思います。

また来たいという思いを胸に鳥取を後にしました。中治先生、ありがとうございました。

2012年12月8日

10/25(木)古材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験@名古屋大学大学院 佐々木先生による速報

速報=佐々木康寿(材料部会 古材WG)

1. 実験概要

材料部会古材WGでは,古建築が持つ接合部の抵抗性能の把握を目的とし,建物の解体時の状態を維持した仕口接合部のモーメント抵抗性能に関する第2回目の公開実験を行いました.開催日時は2012年10月25日(金)14時〜16時,会場は名古屋大学大学院生命農学研究科・A館-145号室(木質構造実験室)です.公開実験の呼び掛けにより,当日は6名の一般参加者がありました.

写真1 解体物件(広島県福山市)

写真2 試験体採取箇所

2. 試験体

今回の接合部試験体は,広島県福山市の古民家(写真1,築後の経過年数は約60年)から解体時に採取した(写真2)もので,柱梁から成るT字型試験体(外形寸法は約1.5m×2.0m,接合部はほぞ差し)です.

写真3 実験室に搬入した試験体

試験体の採取に当たっては,接合部に負荷を与えないよう予め方杖用の板材を釘打ちし,解体,搬出しました(写真3).部材は,柱材がスギで断面寸法が約110×110 mm,梁材はアカマツで断面は円形,その直径は,試験体によって異なりましたが約200〜250 mmでした.建物の状態は,試験体を採取した2階部は良好で,腐朽などの目立った損傷は見受けられませんでした.しかし,1階部は床下部がシロアリの被害を受けているとのことでした.

3.試験方法

柱材上部はアクチュエータとピン結合し,梁材を試験機フレームにアンカーボルトで固定しました.加力は定速変位制御(200mm/min)による正負繰り返し交番載荷で行いました.変位の折り返し点は,柱-梁のせん断変形角が1/450, 1/300, 1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/10 rad.となる9ステップに加えて,最大ストロークである200 mm(約1/5 rad.に相当)としました.各ステップでの繰返し回数は3回で,計30サイクル繰返し加力しました.変位計を図1に示すように6箇所に設置し,柱-梁のせん断変形角,柱の浮き上がり量などを算定しました.

図1 試験体・測定器具の設置

写真4は加力試験の様子,写真5は公開実験時の参加者見学の様子です.

写真4 試験装置に設置した試験体

     

写真5 公開実験解説の様子

4.試験結果

復元力特性として,図2,3に「荷重とせん断変形角の関係」の一例を示しました.また,図4にはこれらから作成した「モーメントとせん断変形角の関係(包絡線)」を示しました.図4より,多くの試験体(7体のうち5体)はほとんど抵抗力を示しませんでした.これは,勘合度が甘かったことによると考えられます.なお,これらのほぞの長さは約70〜80㎜でした.この結果から,これらの試験体は水平加力に対する抵抗要素としては期待ができないと考えられました.一方,一部の試験体(FU3,FU6)は接合部の勘合度が比較的きつく,ほぞの長さは170〜190㎜もある,長いもので,大きな抵抗性能を示しました.これらは,既往のほぞ接合部の力学性能に関する試験結果と比べて,十分に抵抗要素として成り立つと考えられました.なお,これらの試験体はほぞの付け根の折損(写真4)をもって最大荷重を示しましたが,その時の変形角は1/20〜1/13rad程度であり,また,荷重も一気に低下するなど,必ずしも粘りを発揮するようなものではありませんでした.さらに,試験終了後,接合部を分解したところ,長ほぞの付け根に節が存在するなどの様子が見られ,モーメントに抵抗しきれず一気に折損したことがうかがえました.

図2 荷重とせん断変形角の関係(FU3)

図3 荷重とせん断変形角の関係(FU4)

図3 荷重とせん断変形角の関係(FU4)

  

図4 モーメントとせん断変形角(包絡線)

試験終了後,接合部を分解し,長ほぞを観察しました(写真6:FU3,写真7:FU5).これらより,ほぞの形状が接合箇所によって異なることがわかりました.写真4のような長ほぞを持つ接合部は脆性的ではありますが比較的大きな抵抗性能を発揮し,写真5のような少し短かめのほぞを持つ接合部は勘合も甘くほとんど抵抗性能を発揮しませんでした.

写真6 試験後のほぞ(FU3)

    

写真7 試験後のほぞ(FU5)

このようなことから,現代のようなプレカットに依らない古建築の接合部は,建物の接合箇所によって長さや勘合度にバラツキがあり,全ての接合部に抵抗性能が期待できるわけではないことが判明しました.恐らく,要所の接合部ではほぞの長さを長くし勘合もきつめに仕上げ,それ以外の接合部は位置決め程度の扱いであったのかもしれません(図5に推察例を示しました.)

図5 試験結果とほぞの形状からの推察例

2012年12月7日

10/25(木)古材に対応した新材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験@立命館大学 棚橋先生による速報

速報=材料部会古材WG 担当:棚橋・大岡

1.実験概要

材料部会古材WGでは,7月6日と10月25日の2回にわたる古材仕口接合部のモーメント抵抗性能試験を名古屋大学で行いましたが、古材に対応した新材による仕口接合部の公開実験を2012年10月25日午後、立命館大学びわこ・くさつキャンパスのセル実験室にて行いました(外部からの参加者無し)。古材と新材の材料としての違いが仕口の復元力特性に及ぼす影響を見るための実験です。
 
長野古寺院(築後約100年)および福山民家(築後約60年)で得られた部材は、共にアカマツの梁にスギ柱の柱頭のほぞを差したT字型の仕口接合部です。仕口のほぞなどの寸法を確認の上、同じ樹種の新材で極力同じ寸法の仕口を再現するよう加工し、実験を行いました。

2.古材に対応した新材のT字型試験体と実験要領

古材仕口内部では、ほぞの劣化や乾燥収縮により勘合度が緩くなるため、強度が出にくい傾向が見られましたが、新材の加工では勘合度について特別な考慮はせず、一般的な精度で加工しました。

図1 仕口の詳細(単位mm)

仕口の詳細や寸法は、採取した古材仕口形状に合わせたT字型試験体とし、柱は120mm角〜105mm角スギ、梁は幅140〜150mm、高さ190〜200mmのアカマツで、ほぞ長さは短いものから梁を貫通したものまで6体です。次に、仕口寸法の一覧を示します。

表1 仕口寸法一覧表(単位mm)

長野、福山の古材と新材の対応は表1によります。福山の梁は、丸太で柱の取りつき面のみ平面に加工したものでしたが、仕口部の梁の高さを同じとすることで新材では矩形断面材で代用しました。

図2 実験のセットアップ

実験はT字型の試験体を逆さにして測定器をセットアップして行いました。ロードセルで載荷荷重を、6箇所の変位計で載荷点・仕口・支点の変位を測定しました。

載荷レベルは1/240,1/120,1/60,1/30,1/20,1/15,1/10,1/5 の8段階で各レベルで正負交番3回繰返しとし、載荷速度は30mm/min から順次60mm/minまで変化させました。

写真1 載荷状況

写真2 仕口の変形状況

3.実験結果

各試験体の結果を仕口のモーメント(kNm)―回転角(rad)で表すと図3-図5のような復元力を示しました。回転角は仕口変位計の変位差を変位計間隔で除して求めています。図6に全試験体の復元力特性の包絡線を示します。長ほぞのNN4,FN3,FN6では、載荷方向にもよりますが、0.05〜0.1radでほぞが破壊して抵抗力を喪失しましたが、NN2、FN4,FN7の短ほぞでは抵抗モーメントは小さいが、0.2rad程度まで抵抗力を維持し、変形能力が大きいことがわかります。

図3 NN2,NN4の復元力特性

図4 FN3,FN6の復元力特性

図5 FN4,FN7の復元力特性

図6 各試験体の復元力特性の包絡線

参考に、試験後の仕口解体後のほぞの変形状況を写真3に示します。NN2の短ほぞでは仕口の回転による圧縮変形によりほぞが台形に変形していますが、長ほぞの変形は目立たず、変形が進む前にほぞの根元で破壊が起こったと推定されます。
今後、各試験体の材料試験結果をもとに、古材と新材の剛性・強度・変形能力などの差異の比較検討を行う予定です。

写真3 試験後のほぞの変形状況

2012年11月6日

10/27(土) 構法キャラバンツアー講演会 IN 松江

レポート=大江忍(緑の列島ネットワーク事務局)

10月27日(土)の午後13時より、出雲大社を始め、多くの伝統的建築物が残る島根県の島根県職員会館多目的ホールにおいて「構法キャラバンツアー講演会 IN 松江」を開催しました。今回の講演会は、島根県文化財所有者連絡協議会、島根県文化財愛護協会、島根県教育委員会の主催による文化財講座として開催していただいたものです。

会場には、現在、出雲大社の遷宮の工事携わる大工棟梁の方々を含めた81名の参加があり、熱心に講演を聴講いただきました。

以下、全体の進行をご紹介します。まず、当委員会の全体管理者大江忍より、この委員会の経緯、組織について説明をしました。

次に、伝統的構法による木造建築物のこれからの設計法の考え方について設計法部会主査の齋藤幸雄先生より、説明がありました。

後半は、構法歴史部会の麓和善主査より事例調査の概要について、実務者委員の松井郁夫委員や小原公輝委員のレポートを交えながらの詳細な説明がありました。

松井委員は、ホワイトボードに伝統構法の軸組の模式図を描きながら、民家調査から見えた知恵と工夫を分かりやすく解説してくださいました。

地元出身の小原委員は、島根県の桜井家住宅、佐々木家住宅の構造的な特徴について、写真や図面のスライド投影を交じえながらお話くださいました。

最後のまとめとして、麓和善主査から、伝統的構法の定義について、過去の建築学会の資料などの変遷からひもときながら説明がありました。

質疑の時間には、宮大工棟梁から「伝統構法をしたくても、現場がなく、修理が多い」との意見や「伝統構法を支えあう異業種でグループを組んで伝統構法を守っている」という現況の報告がありました。また、一般市民の参加者から「大工さんは、世の中で一番すごい人たち」との発言もいただきました。

当初の予定を20分過ぎて、17時に終了しました。まだまだ、意見をお聞きしたいところでしたが、アンケートにてたくさんの意見をいただきましたので、後日、意見を整理してここに掲載していきたいと思います。

2012年10月21日

9/1(土) 床版実験@福山大学 鎌田先生による速報

速報=福山大学 鎌田 輝男(材料部会)

1公開実験の概要

名称:伝統的構法木造床版の面内せん断耐力実験
日時:平成24年9月1日(土) 13時30分〜17時
場所:福山大学構造・材料開発研究センター(30号館)構造実験室
   福山市学園町一番地三蔵
見学者:16名(8月29日の3名を含む)

2 実験の目的および内容

E-Defenseにおける振動実験において使用される伝統的構法による実大木造住宅実験棟の1階床版の面内せん断耐力特性を明らかにすることが主たる目的であるが、床版を構成するけたとはりおよび小ばりからなる床版軸組に対して、根太および床板の効果を明らかにするために、次の3タイプの床版試験体各1体の面内せん断耐力実験を実施した。

(1)床板なし床版(8月24日)
(2)床板斜め釘打ち床版(8月29日)
(3)床板脳天釘打ち床版(実験棟仕様)(9月1日、公開実験)

各試験体のせん断変形角に対する復元力履歴特性を求めるとともに、最大加力(変形角1/9、けたの相対変位404㎜)にいたるまでの損傷状況を観察することが目的である。

3 試験体

3.1 試験体のサイズ

3.2 各試験体共通仕様

3.3 雇いほぞ入れ仕口の形状

4 加力実験装置

試験体を水平構面試験架台に設置する。試験体けたの一端を、けたを貫通する3本のΦ12寸切りボルトとけた両面にスクリューボルト締めした6個の固定アングルによって固定架台に固定する。もう一端をH形鋼で受け、これをローラーコンベアー上に設置することによってローラー支持とし、これを加力けたとする。

加力側のけたの両端を2枚の加力板ではさみ、両加力板を4本のΦ20ロッド結び、加力板に油圧ジャッキを取り付けることによって加力する。

油圧ジャッキはRIKEN製DR5S-200-800(容量200kN、ストローク800㎜)を使用している。

5 加力実験

5.1 加力スケジュール

油圧ジャッキのシリンダに取り付けた変位計によってシリンダの変位を制御することによって加力した。けたの中心間距離3640㎜を基準長さとして、床版のみかけの変形角を所定の大きさとするようにし、各加力段階において3回の押し引き交番加力をおこなった。

みかけの床版変形角レベルとシリンダ変位は次の通りである。

5.2 計測点

床版軸組の変形および回転と床板の回転およびずれを計測するために、各試験体における変位計測器の配置図を示す。床板なし軸組のみの床版の変位計測点は15点であり、床板をもつ試験体ではさらに床板の軸組に対する相対変位を計測するために、さらに12計測点を追加し、合計27点の変位を計測している。

6 床版の復元力特性

各試験体の復元力履歴特性を示す。床版の変形角は固定けたの回転角を差し引いた真の変形角を表しているが、床板脳天釘打ち床版試験体を除き、見かけの変形角と真の変形角にほとんど差はない。なお、変形角は時計回りを正として表している。

床板なし床版試験体
床板なし床版試験体は、けた、はり、こばり、根太 からなる試験体である。

変形角1/10にいたるまで、床版試験体には大きな損傷はなく、変形角1/30で約2kN、変形角1/10で約4kNの耐力を有する。変形角1/10でも床版軸組は大きく損傷することはない。

斜め釘打ち床版
床板斜め釘打ち床版試験体は、床板側面からN65釘を根太に斜め釘打ちとしたものである。釘は根太にそれぞれ1本打たれただけであるが、床板を取り付けることによって耐力は向上するが、変形角に対して直線的に増加してしている。


また、荷重反転時に復元力は急激に消失し、完全な滑り状態になる。これは、変形の増加時には床板相互の摩擦抵抗力が働くが、減少時には摩擦抵抗力がほとんどないことを示している。
変形角1/10にいたるまで、床版試験体には大きな損傷はなく、変形角1/30で約3kN、変形角1/10で約8kNの耐力を有する。
斜め釘打ち床版では、復元力特性の非対称性が予測されたが、小変形時を除いてほぼ対称であった。

脳天釘打ち床版試験体

脳天釘打ち床版試験体は、床板を根太にN90釘を3本ずつ打ったもので、床版の剛性および耐力を増加させる効果は大きい。

変形角1/30で約7kN、変形角1/10で約14kNの耐力を有し、斜め釘打ち床版に対して約2倍の耐力を有する。変形角1/20を越えると耐力は直線的に増加し、床板の摩擦抵抗が現れてくるものと思われる。なお、変形角1/10においても床版軸組には大きな損傷は見られなかった。

各試験体の耐力特性
各試験体の耐力特性を骨格曲線で比較して示す。根太なし床版なしと半剛床(床板24㎜)で示されるものは、平成18年度に実施した床版試験体の結果である。

床版の軸組は今回の軸組と基本的に同一であり、軸組のみと根太を取り付けた場合の比較から、根太を取り付けることによる効果が示され、さらに、床板を取り付けることによる床版耐力の増加が示されている。

斜め釘打ち床版と脳天釘打ち床版の耐力特性を比較すると、微小変形時にはどちらも同程度の耐力を有するが、それを超えて変形角1/20以内では脳天釘打ち床版の耐力は2倍以上ある。斜め釘打ち床版の耐力は、変形角に対して直線的に増加するのに対して、脳天釘打ち床版の耐力は、変形角1/20以上の領域では直線的に増加しているようにみえる。これらは、床板の摩擦抵抗力によるものと思われる。

平成18年度の床版試験体
今回の試験体との相違点は(1)柱が120㎜角である、(2)はりとけたが同一レベルである、(3)床板は24㎜厚であることであり、基本的には同一仕様とみなすことができる。

床版軸組試験体

半剛床試験体

9/1(土) 床版実験@福山大学 事務局レポート

山陽道・福山東I.C出口近くまで来ると、福山大学は真横に見える。I.Cを降りてから、山道をぐるっと廻り「すぐのはずなのに、道を間違ったかな?」と不安になった頃、山の中に突然大学が現れた。実験が行われるハイテクリサーチセンターは正門からずっと奥に入った場所にあった。ほとんどの大学が環境に恵まれているが、ここも緑豊かな素敵な大学だ。

素晴らしいのは環境だけでなく、会う学生がみな元気がいい。おまけにハキハキとした挨拶をしてくれる。これは他の大学では余り経験がない。気分よく実験棟に入ると、鎌田研究室の学生たちが、これまで会った学生の中でもとびきり元気よく挨拶をしてくれた。これも鎌田先生のご指導の賜物だろうか。

公開実験の見学者は11名、鎌田研究室の学生たち4名が手際良く実験準備をしている。見学者の中には実験検証部会の山田先生、村上先生、瀧野先生や、材料部会の和田委員の顔があった。今回の試験体の隣には、8/29に既に実験を終えた「斜め釘打ち」試験体があった。見学者は興味深そうに「斜め釘打ち」試験体を観察している。

実験準備をしていた学生に質問すると、「斜め釘打ち」試験体は1/9radまで変形をさせた後、元に戻したそうだ。

外から見る限りでは大した損傷はない。板と板の隙間が少しばかり大きい箇所がある位で、
柱にもめりこんだ痕はない。変形が進むにつれ、板に押されて柱角がほんの少し丸みを帯びている程度だった。

予定時刻を過ぎたので、鎌田先生の実験内容の説明が始まった。プロジェクターに実験概要を映して、鎌田先生らしい丁寧な説明だった。

測定変位は「柱からの距離」、変形角は1/450、1/300、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50、1/30、1/20、1/15、1/10、1/9を測定する。

1/100までは加力しているのかどうか、ほとんどわからない。ジャッキを動かすポンプの音しか聞こえない。それでも1/100からは、ポキッという音が稀に聞こえる。やっと木が“鳴き”出したのだろう。
1/75に入って、ようやく時々バキバキという音が聞こえ出した。これからだんだんと騒がしくなるはず、と少しワクワクする。

1/50になると、ひきりなしにおもちゃのドラムのような音がする。タンタカ、タンタカ、タラララララン…。モニターを見ると1/50でmax5kNくらい出ている。

脳天打ちの釘がどういう風に動くか興味があったので、試験体が上から見える場所に移動した。上から見ると加力をしているジャッキや、試験体を抵抗なく滑らせるローラーが良く見えた。

押し・引きとも見事に釘は斜めになっていた。床が壊れる事もなく、柱が酷く損傷する事もなく、淡々と押されても引かれても斜めになるだけだ。

どれくらいの耐力が出たかは鎌田先生の速報で確認して欲しいが、「斜め釘打ち」より「脳天打ち」の方が大きな耐力が出たのは間違いない。

根太の上に直接床仕上材を施工する際、現場では「斜め釘打ち」をする方が多いと思う。床構面の剛性を得るために、設計者や施工者はどうすれば良いのか。床の剛性だけではなく、建物全体の耐力バランスも考慮しなければならないだろう。

こうやって、ひとつひとつの実験を積み重ねて行って、「現場で使える」本当に安全な建物を探っているのだ。この実験も今後の設計法の作成に大きな貢献をしてくれると思う。鎌田先生の速報を期待して待ちたい。

2012年9月15日

試験体No.5 を震動台上に設置

週明けからいよいよ振動台実験が始まります。9/19(水)の公開実験に参加してくださる皆様のおいでをお待ちしています。

2012年9月14日、震動台上に、試験体NO.5を設置しました。


震動台と同じ実験棟内に建てられている試験体を、このような太いワイヤーで吊って、移動させます。

2012年9月3日

8/29 実大震動台実験 試験体5、6の施工状況

9/19に実大震動台実験を行う試験体5、6は、5月半ばにEディフェンスの一角に材料を運び込み、上棟、引き続き3ヶ月間にわたって、土壁塗り、瓦葺き等の工事を行いました。今では、計測機器も取り付けられ、後は震動台に載る日を待つのみです。

試験体が載る鉄骨架台と施工用の足場を北面から見る。試験体5と試験体6が南北に並んで立つ。白く四角く見えるのは、石場建ての柱が立つ礎石。実験に際しては、この鉄骨架台ごと、震動台の上に載せる。

 

試験体6。2階まで突き抜ける通し柱。大黒柱の足元まわりに、地長押をまわすための切り欠きが見えている。

 

試験体6の東から見る。梁、差鴨居、足固めと横架材がまわる。画面手前を横切るのが10番通りの右に見えるのが大黒柱。

 

地長押が交差する試験体6の北東隅。

 

試験体6の北面から見る地長押。雇いほぞ込み栓打。

 

試験体5の東面妻側。2階部分に垂木を架けている。

 

左手前が石場建てに地長押のまわる試験体6、右奥が石場建てのみの試験体5、瓦を葺く野地板を張り終えたところ。

 

割竹同士、割竹と貫を、藁縄で、縫うようにして結い付ける「えつり」の作業。

 

小舞竹の空隙は35~40ミリ程度。

 
荒壁の裏返し塗り。竹小舞の逆側からつけた荒壁の突起同士をつぶさないように塗込み、表裏一体となるようにする。

 
防水シートの上にいぶし瓦を桟葺きにする。ガイドライン工法に従い、すべての瓦を桟に釘打止め。

 

荒壁の乾きを待って、中塗りをする。この上に漆喰を塗って仕上げる。

 

随所に取り付けられた計測機器。ワイヤーは倒壊防止ワイヤー

 

加振時にどれくらい変形したかを計測する変位計。

完成。左手前が石場建てに地長押のまわる試験体6、右奥が石場建てのみの試験体5。

2012年7月27日

7/6(金) 古建築のほぞ接合部のモーメント抵抗性能試験の速報

速報=佐々木康寿(材料部会 古材WG)

1.実験の目的

材料部会古材WGでは,古建築の接合性能を検証するために,建物の解体時に仕口接合部をそのままの状態で採取し,接合部のモーメント抵抗性能に関する公開実験を名古屋大学で行いました.開催日時は2012年7月6日(金)14時〜15時,会場は名古屋大学大学院生命農学研究科・A館-145号室(木質構造実験室)です.当日は雨天でありましたが6名の一般参加者がありました.

2.試験体

今回の接合部試験体は,長野県の古寺院客殿(写真1,明治27年9月2日完成)から解体時に採取したもので,柱と梁の接合部(ほぞ差し)を含むT字型(約1.5m×2.0m)のもの4体です(写真2,3).試験体の採取に当たっては,接合部に負荷を与えないよう予め方杖用の板材を釘打ちし,解体,搬出しました(写真3).樹種はスギ材(柱)とアカマツ材(梁)で,柱材は断面寸法が112×112 mmでした.建物の状態は比較的良好で,腐朽などの目立った損傷は見受けられませんでした(写真4).

写真1 解体物件

写真2 試験体採取部の一例

写真3 最終試験体の搬入

写真4 建物の基礎部分

図1〜4に接合部試験体の形状・寸法を示します.試験体の状態として,No.1ではほぞが梁材を貫通し,ほぞの先端が梁材を突きぬけていました.試験体No.2では梁の柱付近に穴(目的不明)が開いていました.試験体No.3の梁材には仕口付近(約20 cm)に継手(腰掛け鎌継ぎ)がありました.試験体No.4は写真に示すように,梁材の一部に虫害の形跡が見られました.試験体No.1とNo.3は接合部でのあそびが大きく,柱材に軽く力を加えるだけで大きく傾いてしまうような状態でした.このようなことから,試験体No.1とNo.3では特に負荷初期でのモーメント抵抗性能は小さいことが予想されました.また,試験体No.3を除くと,ほぞ長さが今日のプレカット材に比べて長いように思われました.

図1 試験体No. 1

図2 試験体No. 2

図3 試験体No. 3

図4 試験体No. 4

3.試験方法

写真5は加力試験の様子を,写真6には公開実験時の参加者見学の様子を示しました.柱材上部はアクチュエータとピン結合し,梁材を試験機フレームにアンカーボルトで固定しました.加力は定速変位制御(200mm/min)による正負繰り返し交番載荷で行いました.変位の折り返し点は,柱-梁のせん断変形角が1/450, 1/300, 1/200, 1/150, 1/100, 1/75, 1/50, 1/30, 1/10 rad.となる9ステップに加えて,最大ストロークである200 mm(約1/5 rad.に相当)としました.各ステップでの繰返し回数は3回で,計30サイクル繰返し加力しました.変位計を図1に示すように6箇所に設置し,柱-梁のせん断変形角,柱の浮き上がり量などを算定しました.

写真5 加力試験の様子

写真6 公開実験の様子

4.試験結果

 復元力特性として,図5に「荷重とせん断変形角の関係」を示しました.これより,試験体No.1とNo.3については,当初より予想された通り,復元力特性が劣っていることがわかります.例えば,試験体No.1については図1に示すように,ほぞ先端が梁材を貫通していることに加え,篏合度が甘い(あそびが大きい)ことが低性能であった原因と考えられます.図6に各試験体のほぞ・ほぞ穴の形状寸法を載せました.これより試験体No.1の篏合度の甘さがあらためて理解できます.試験体No.3もNo.1と同様に篏合度が甘く,さらに,ほぞ長さが短い(45mm)ことで低性能であったと考えられます.これらのように篏合度が甘くなった理由としては,①加工当初より勘合度が緩かった,②経年による寸法変化(乾燥による収縮),③災害時(例えば1960年代の松代群発地震)の負荷履歴の影響などが可能性として考えられるでしょう.これに対して試験体No.2とNo.4は若干のあそびはあるものの,その影響は少ないようでした.これらの試験体(No.2とNo.4)は,いずれもほぞの元(付け根)の部分で折損を生じた際に最大荷重を示し,以後,耐力を失いました.写真7にほぞの折損の様子を示します.なお,試験体No.2の最大モーメントは2.18 kNmを示していますが,ほぼ同じ仕口寸法のスギ材を使った試験体で力学試験を行った既法の結果と同程度の性能を示しているようです.
 以上のように,解体前の目視観察では材料が良好な状態であっても,仕口接合部のモーメント抵抗性能が期待できない場合のあることがわかりました.

図5 荷重とせん断変形角の関係 (a) 試験体 No.1

図5 荷重とせん断変形角の関係 (b) 試験体 No.2

図5 荷重とせん断変形角の関係 (c) 試験体 No.3

図5 荷重とせん断変形角の関係 (d) 試験体 No.4

図6 仕口接合部の形状・寸法 (a) 試験体 No.1

図6 仕口接合部の形状・寸法 (b) 試験体 No.2

図6 仕口接合部の形状・寸法 (c) 試験体 No.3

図6 仕口接合部の形状・寸法 (d) 試験体 No.4

写真7 ほぞの折損(試験体No.4)

謝辞:試験体の提供,解体・採取・搬出など,この実験に協力された皆様に感謝いたします.また,公開実験では雨天の中を参加された皆様にお礼を申し上げます.

2012年7月26日

7/6(金) 古建築の仕口接合部のモーメント抵抗試験@名古屋大学

2012年7月6日(金)古建築における接合性能を検証するために、古建築の解体時に採取した仕口接合部による接合部のモーメント抵抗試験を行いました。

築100年の古寺院解体時に採取した約1.5m×1.5mの試験体

今回、実験に使用したのは、築後約100年を経過した長野県の古寺院客殿の木材です。解体の段階でホゾの部分が傷むことのないよう丁寧に補強され、輸送時にも、長野から名古屋大学まで、注意深く運ばれてきました。電動工具の無い時代に、ホゾ穴を梁に貫通させるほど長くするのは、大変な手間であったと想像されます。柱が抜けにくくするためだけでなく、ねじれやすい松の梁ということでねじれを抑制し、変形を防御するために抜いたのではないかと思われます。

100年以上たっても、1/15以上の変形にも破損することなくめりこみなどの変形により、十分な強度を保つことがわかりました。以下、写真で当日の様子をご覧ください。

佐々木先生(中央)、右となりに棚橋先生。この日までに行った、3体の試験体の前で結果の説明

実験を終えた試験体の様子です。一番右は短ほぞで、ほとんど強度はありませんでした。

一番状態の良かった、黒光りした杉の試験体です。梁は、地松。試験機の都合で、上下が逆になってます。

佐々木先生から、見学者に本日の実験の概要説明がされました。

実験中、この状態で、大きな音を立てて、ホゾが折れました。ホゾは、梁の上まで、抜いてあり、長いほぞでした。

柱のホゾが折れた断面です。100年経っていても、きれいな状態です。梁の中に、ホゾが残っております。

実験後、見学者と本日の結果についての考察と、古材に対する意見交換がされました

詳細については、佐々木先生の実験速報をお読みください。